File.35 父親の正体
何というか、凄くカッコイイと思った。
鮮血にまみれた父親の背中には、確かな決意が宿っていた。
「俺は……ブレイブラッド帝国の工作員だった……」
突然、父親が衝撃の一言を呟いた。
俺の父親がブレイブレッド帝国の元工作員!?
そんな馬鹿な!!
じゃあ、父親が持っていたマシンガンがブレイブレッド帝国製なのは、父親がブレイブラッド帝国出身だからなのか!?
嘘だろ……
でも、この3本のビデオテープ中でも、父親はしょっちゅうおかしな行動を取っていた。
例えば、騎士テイラーに何故か敬礼をした。
何故か、ライティーン王国の常識を知らなかった。
そして、何故か『古代獣』のことを知っていた。
それらの行動から導き出される結論は……
父親がライティーン王国の住人じゃない。
このビデオテープそのものが物語っていたんだ。
父親の正体を……
「だが、母さんに出会って、俺の気持ちは変わった」
何処か清々しいようなそんな声で、父親は誰かに向かって喋っている。
おそらく、『刃の獣』に身体をズタズタにされたせいで、周りが見えていないのだろう。
「俺は初めて、人を守りたいという気持ちを知った!」
父親と母さんの馴れ初めを、俺は知らない。
だが、父親の口ぶりからすると、母さんの危機を父親が救ったようだ。
いったい、何があったのやら……
「俺は帝国のために生きているんじゃない! 自分のために生きているんだと、はっきり分かった!!」
どうやら、父親は若い頃、ブレイブラッド帝国に忠誠を誓っていたようだ。
工作員になるくらいだから、余程の忠誠の誓い方をしたのだろう。
「俺の人生はもう長くはない。だから、これから生きる者達のために、この身を捧げよう! 未来を生きる者たちのために、全てを捧げよう!」
誰に向かって話しているわけでもないのに、大声でずっと言い続けている。
「俺は子供たちを! 息子たちや今この場にいる子供たちを守って見せる!!! 覚悟しろ、『刃の獣』!!!!!」
父親は、ボロボロの身体でマシンガンを『刃の獣』に向けた。
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