Story.14 事件の謎

「さて、今これを見ている君たちは、何故この事件が『イレイズド・ファイル』になったのか気になっていることだろう」

 俺の疑問を予知したかのように、騎士テイラーが言った。

 この事件は、表向きにはほとんど解決している。

 謎がいくつか残っているものの、それらを全て解決させなければならないわけではない。

 発端は、フィーンドの暴走だったが、それも『刃の獣』の乱入があったとは言え、収束を迎えている。

 ならば、何故『イレイズド・ファイル』になってしまったのか……

「問題となったのは、『刃の獣』についてだ……」

 『刃の獣』が?

 いったい、何があったんだよ。

 父親が倒したじゃないか!!

「実はあの後、俺と警察で付近を調べたのだが、『刃の獣』の痕跡が全く見つからなかったんだ」

 『刃の獣』の痕跡が見つからなかった?

 それは、いったいどういうことだ?

「ケインは確かに『刃の獣』を倒した。それは、俺も確認した。だが、『刃の獣』の死骸が何処にも見つからなかった。かと言って、逃げた痕跡も見つからなかった。まるで、『刃の獣』なんて初めからいなかったみたいにな……」

 『刃の獣』がいなかったみたい?

 じゃあ、『刃の獣』は何だったんだよ……

 父親を殺した『刃の獣』は、いったい何だったんだよ!!

「もちろん、『刃の獣』がフィーンド氏やケインを殺したのは確認した。間違いなく『刃の獣』はいたのだが、まるで何者かが隠滅したかのように、消え去っていたんだ」

 騎士テイラーは悔しそうに言った。

 仕事を共にした人間を殺した犯人が、雲隠れしたことが辛いのだろう。

「が、それはまあ、表向きの話だ」

 突然、騎士テイラーがあっけらかんとした口調になった。

 表向きの話?

 騎士テイラーは、何か真意を隠しているのか?

「実際のところ、俺はケインを庇うためにこの『血塗れ悪鬼事件』を『イレイズド・ファイル』にしたんだ」

 父親を庇うため?

「ケインが、ブレイブラッド帝国の元工作員だということには驚いた。俺も確認しなければ分からなかった。だが、それがもし他の人に知られると、ケインの家族の将来に関わるかもしれなかった」

 そんなことを考えていたのか……

「そう考えた俺は、騎士団長に事情を話した上で、この『血塗れ悪鬼事件』を『イレイズド・ファイル』にした。もし、ケインの息子たちが『血塗れ悪鬼事件』を探していたら渡すように王族に頼んでもおいた」

 それで今、俺たちの手元にこの『血塗れ悪鬼事件』があるのか……

 騎士テイラー、ありがとうございます。

 俺たちにこのビデオテープを残してくれて……

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