Story.15 ヴィールのその後

「それと、ケインが心配していたヴィールのことだが……」

 突然、騎士テイラーが話題を切り替えた。

 そういえば、父親はヴィールのことを心配していたな……

 何で、そんなことを今、口にするんだ?

「俺の養子にすることにした」

 な、何だってー!!

 騎士テイラーは、あっさりと言っているが、凄く意外なことだ。

 まさか、騎士テイラーがヴィールを養子にするとは……

 てっきり、施設に預けるものかと思っていた。

「俺は既に結婚しているし、妻も了解してくれた」

 ……お、おう。

 何だか、よく分からないが、これでヴィールも安心だな。

「それに、ヴィールは騎士に憧れているみたいだった。騎士である俺が育てて何も問題はないだろう」

 確かに、ヴィールは騎士に憧れていた。

 だからって、養子にしなくても……

「ケインの頼みだったからな……」

 付け加えて、騎士テイラーが呟いた。

 そこまで、父親のことを思っていてくれたのか……

 本人ではないが、嬉しい。

「以上が俺から報告できる全てだ。ケインの息子たち、ケインの分まで強く生きてくれ」

 騎士テイラーがそういうと、画面が真っ黒になった。

 これで、このビデオテープは終了か。

 隣に座っていたレフシィが立ち上がり、部屋の明かりをつける。

「これで終わりだね」

「ああ、そうだな……」

 何というか、凄く疲れた。

 驚きの展開の連続だった。

 ただの殺戮者事件だと思っていたこの『血塗れ悪鬼事件』は、相当に複雑な事件だった。

 武装集団が関わっていたり、事情聴取をした相手が殺戮者になったり、謎の怪物が現れたり……

 そして、最後に待っていたのは、父親の正体。

 まさか、ブレイブラッド帝国の元工作員だったとは……

 予想もしていなかったものだった。

 その後に見せられた、父親の生き様。

 これから生きる者達のために、自身の身を捧げる。

 いったい、どれほどの意志が父親にはあったのだろう?

「ヴィールって、今どうしているんだろうね?」

 レフシィが、唐突に訊いてきた。

 そんなの知るかよ……

「さあな……」

「騎士になっていると良いよね……」

 まあ、それは確かに……

「そうだな……」

 さて、ビデオテープも見終わったことだし、そろそろここを撤収しよう。

「ふわああああああああああああああああああああ」

 大きな欠伸をしてしまった。

 疲れたなあ……

「兄さん、手で抑えなよ」

「分かってるよ」

 レフシィに注意されてしまった。

 今くらい、許してくれよ……

 座りっぱなしで疲れたんだ。

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