File.22 予期せぬ発覚

「ハイドさん! 何を言っているんですか!?」

 ハイドの絶叫に騎士テイラーは困惑している。

 無理もない。

 まさか、殺戮者に関する事情聴取をしたら、その事情聴取をした相手が殺戮者だったなんて、滅多に起こることではない。

 そもそも、元殺戮者がよく今まで隠れていられたものだ。

 もしかして、ハイドという名前は偽名なのではないだろうか?

 名前の意味的に、その説は有りうる。

「さっき、殺戮者と聞いて驚いたのは、それが理由か……」

 父親の言ったことは、確かにと思える。

 ハイドは、先程の事情聴取の時に殺戮者と聞いて、大声を上げた。

 それは、ハイド自身が元々殺戮者だったからなのならば、不思議はない。

 それにしても父親は、妙に精神がタフだな……

「お、お前らあああああああ、こ、これ以上近寄るなあああああああああ!!!!」

 ハイドは、おそらくパニックでも起こしているのだろう。

 自分の素性がばれることを恐れるあまり本性を現してしまったに違いない。

 フィーンドよりは、暴れる理由としては分かる。

 でも、それでも、それだけでハイドは暴れているのだろうか?

 今までずっと、殺戮者だったことを隠し続けてきた男が、騎士や警察が来ただけでビビって正体を晒す等という行為をするとはとても思えない。

 やはり、先程の銀髪の男が何かしたのだろう。

 そうでなければ、近場で2人も殺戮者が、しかも全く別々の理由で暴れ出すなんて考えられない。

 あの銀髪の男が、この事件の鍵を握っている。

 きっと、そうに違いない。

ズダダダダダダダダダダダダダッ!!!

 ハイドがずっと放ち続けている衝撃波と、父親が撃ち続けている銃弾がぶつかっている。

「相殺しにくいな……」

 元殺戮者なだけあって、ハイドの方がフィーンドよりも強いようだ。

 まあ、サブマシンガンで『秘力』に対抗できている父親の方が凄いんだけど……

ズダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!

 銃弾と衝撃波がぶつかり合う下で、騎士テイラーは確実に前進し続けていた。

 この2人の戦法は、余程のことがない限り破られることはないだろう。

「死ねえええ!! 死ねええええええ!!! 俺の平穏を邪魔するなああああああ!!!!!」

 ハイドは血眼になって『秘力』を放ち続けている。

 やはり、普通の精神状態ではない。

 凄まじいまでの殺気を放っている。

 だが、その殺気を恐れずに、父親と騎士テイラーはハイドに近付き続けた。

 後、もう少しでハイドは取り押さえられることになるだろう。

 予期せぬ2人目の殺戮者の出現だったが、これで一件落着だ。

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