Story.4 ビデオテープ

「ふぅ~……。やっと終わった……」

 俺は達成感に浸りながら、溜め息をつく。

 レフシィに声をかけられてから、かれこれ30分も経ってから、ようやく仕事に片が付いた。

「かかったねえ……」

「うるさい。これでも早い方だ」

 レフシィが俺を茶化してきたが、俺としては自分の処理スピードが上がったことを自分で褒めたいくらいだ。

 さて、仕事も終わったことだし、レフシィの相手でもしようか。

「ところで、こんな時間にどうした?」

 俺が質問すると、レフシィは驚いたような顔をした。

「え?」

 何だ?

 まるで、「兄さんに話すことを忘れてしまった」と言ったような顔だぞ……

「何か、俺に用があるんじゃないのか?」

「ああ!」

 俺が更に訊くと、レフシィは思い出したかのように、手をポンと叩いた。

 本当に忘れていたな……

「兄さん、遂に見つけたんだ!」

 レフシィはそう言って、隣のデスクに置いてあった袋を取った。

 仕事に集中していて全く気付かなかったが、いつの間にか袋を持ってきていたらしい。

「何を?」

 俺は、仕事で疲れた目をゴシゴシして、肩を回しながら訊いた。

「分からない?」

 レフシィは、袋を持ちながら俺に訊き返してきた。

 いや、焦らさないでくれよ……

「ああ、全く分からん……」

 まあ、どうせ俺を気遣って何か買ってきたとか、そんなところだろう。

 こういうのは、気付かないフリをした方がいいだろう。

 実際には、本当に分からないんだけど……

「実はね……」

 レフシィはそう言いながら、袋の中身を取り出した。

 何だ何だ?

 と、期待していると袋の中から出てきたのは、ビデオテープだった。

「ビデオテープ……?」

 ビデオテープとは、またとんでもなく古臭いものを出してきたな。

 それがいったい、何だって言うんだ?

「いやあ、苦労したよ……。まさか、あんなところにあるとは……」

 レフシィは、わざとっぽく言った。

 苦労した?

 いったい、こいつは何を言ってるんだ?

「兄さん、ひょっとして……」

 俺がビデオテープの正体に気付いていないことにようやく気付いたのか、レフシィが俺を怪訝そうな目で見てきた。

「このビデオテープの正体が分からない……?」

「ああ。全然分からない」

 レフシィの質問に、俺はきっぱりと答えた。

「兄さん……兄さんは、何で時々抜けるんだ……」

 それを見たレフシィは凄く呆れたようで、溜め息混じりに俺に文句を言ってきた。

 え?

 俺が悪いのか?

「これは、僕たちの父さんが最後に関わった事件の記録だよ」

「何!?」

 レフシィの発言に俺は驚いた。

 そういうことは、もっと早く言え!!!!

 文句を言うために、俺は立ち上がろうとした。

ガスンッ!!!!!

 部屋中に鈍い音が響いた。

 痛い……

 うっかり、目の前のデスクのことを忘れていた……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る