セダス・サーガ外伝 血塗れ悪鬼事件

斜志野九星

Opening Story

バレットとレフシィ、そして父ケイン

Story.1 父親について

「父のことをどう思っている?」

 これは、俺が初対面の人にする質問だ。

 誰でも1度は、考えたことがあるだろう。

 自分の父親について……

 ちなみに、俺の親友はこの質問に対して、

「うーん、分かんないけど、きっと凄い人だったんだろうな」

 と言って目を輝かせていた。

 また、とあるイケメンにこの質問をしたところ、

「イケメンだったに違いないさ。僕みたいなね」

 ……非常にウザかった。

 更に、やんちゃ盛りの青年に質問したところ、

「無敵の猛者だったに違いないぜ!!」

 と大声で答えられた。

 そして、大天才に質問したところ、

「きっと、頭の良い人だったのではないでしょうか。でも、話したことがないので本当のことは分からないですよ」

 と丁寧に答えてくれた。

 最後に、引っ込み思案な男に質問したところ、

「……え? あの、何かありましたか?」

 ……俺はその男が引っ込み思案である理由を知っているので、それ以上の質問はしなかった。

 ちなみに、今挙げた5人は兄弟だ。

 そして、彼ら兄弟の父親は、彼らが幼い時に失踪している。

 そのせいで、5人兄弟の中での父親像は、全員バラバラだ。

 無理もないだろう。

 何せ、俺の親友の長男が3歳の時に、彼の両親は失踪してしまっているのだから……

 ところで、この質問の後には、決まってこんな質問をされる。

「お前は、自分の父のことをどう思っているんだ?」

 俺はその質問をされると、黙ることしかできなくなってしまう。

 それは、俺が「父のことをどう思っている?」という質問をする理由にも繋がっている。

 俺は自分の父親に対してどう思っているのか「分からない」。

 何故分からないのかと訊かれると、俺はこう答えるしかない。

「俺が5歳の時に、死んだから」

 5人兄弟の父親と違って、俺の父親は明確に死んでいる。

 しかも、中途半端な時期にいなくなったせいで、俺はいくらか父親との思い出を持っている。

 だが、その記憶があまりにも曖昧で、自分の中の父親像にうまく投影できない。

 内心、父親のことが全然分からなくてもイメージできる5人兄弟のことが羨ましい。

 母さんによると、俺の父親はとある事件の捜査中に殺戮者と相討ちしたという。

 母さんが教えてくれたことから推測するに、父親は警察だったようだ。

 そうでなければ、事件の捜査なんてことはしないはずだ。

 きっと、警察になれるほど誠実な人だったんだろう……

 と、思えれば良かったのだが、残念なことに俺はそう思えなかった。

 何故なら、母さんが教えてくれたことが、それだけだったからだ。

 ひょっとして、父親には何か秘密があったのではないだろうか?

 という疑念が生まれてしまったため、俺は父親のことをどう思っているのかが分からなくなってしまった。

 俺は父親と同じ人生を歩むことで、父親のことが分かるのではないかと思った。

 そこで、俺は警察を目指した。

 警察になれば、父親が関わった事件を調べられ、より父親のことを知ることができるのではと考えたからというのもあったが……

 そして俺は命の危機に瀕したこともあったが、何とか警察になれた。

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