色街アゲハ

手袋という言葉から、あれこれと連想ゲームの様に広がって行く作者様の世界観が仄見えて、読んでいてとても心地良く浸る事が出来ました。 こう云う自在さ、自由な広がりを感じられるのが、俳句…続きを読む

何処か現実離れした夕暮れの時間に、見知った二人の偶然の出会い。 そこから始まる会話の中で夕暮れの魅力がたっぷりと綴られて行きます。 此処ではない、遠い処に憧れを感じる男の子と、…続きを読む

タイトルの通り、一話当たり僅か３００文字の小品集。 なのに、フワッと後を引く読後感が心地良く、癖になります。 日常の中に紛れた、ちょっとした不思議。 そんな物語の数々に、触れて…続きを読む

とにかく目に入る物全てが新鮮で、輝いていた頃の記憶も既に遠く、大人になってから全てが色褪せて輝きを失ってしまった世界。 それが、自分の子供の目を通して、再びその世界が目の前に現れ…続きを読む

実際に読者が数ある選択肢の中から一つ選び、その後繰り出される設問を経て、見事正解に辿り着く過程は、実にスリリングで面白く、実際にマジックショーの場に居る様な臨場感を味わえます。 …続きを読む

慎ましい生活を送る、真面目でけなげな印象の語り手の独白が進むにつれ、アレアレと云う間にその印象が裏返って行き……。 最後に、ドカン、とかましてくれます。 ”いってはいけない” …続きを読む

　千文字ちょっとで語られる、日本の何処でも見られる夏のほんの一コマの情景。特に目立った事件が起こるでもない、けれども、まるで読んでる側までその情景の中に居るかのような心地良さに、気…続きを読む

誰にでもある、エッセイ風な語り口で綴られる日常の連続の中に、不意に差し込まれる何とも説明の付かない違和感。 何で、どうして、と考える間もなく、再び何事もなかった様に何時もの日常が…続きを読む

短歌という短い形態の中に、突如として現れる身を切る様な鋭い表現にただただ感嘆の溜息が出ます。 自分も戯れに短歌を詠むからこそ分かる、この圧倒的な言葉のセンスに、ジタバタと身悶えす…続きを読む

時代掛かった武骨で不器用な語り口で展開される、迫力ある表現に圧倒されっぱなしでした。 共に由緒ある花火職人の家の出である、考え方も感覚も正反対の二人が、花火を描いた絵を巡って、反…続きを読む

　長閑な雰囲気の句と、そこに至る迄のままならない現実を描写する小説との対比が面白く感じました。
　有りそうでなかった手法に、目から鱗です。

本来レビューで書く事では無いのですが、思わず、オッとなる様なものもあれば、正直微妙かな、と感じるものもあって（ゴメンナサイ）、でもそれが却って手探りで創作している感が伝わって来て、…続きを読む

　何処か遠い夏の情景の中に、コロンと氷の鳴る音と共に戻って来た意識の中に、滑り込んで来る思い人の言葉、仕草。 　心の中の夏の風景に刻み込まれた、決して消える事の無い思いの丈。 …続きを読む

　魔法が浸透した現代風世界で、レポートの提出を課せられた語り手の取った手段は、魔法のペンを使った口述筆記。ところが無意識に要らぬことを口走ったばかりに、大変な騒動に……。 　これ…続きを読む

独自の視点がとても味わい深い短歌集です。

　原作は中国でも屈指の抒情的作品「紅楼夢」。その中の登場人物、黛玉に転生した主人公が、定められた運命に抗うべく奮闘する様が痛快で、読んでいる内にこちらまで明るく前向きな気持ちになっ…続きを読む

　まず主人公に十四歳の何の力も持たない女の子を据えた所に、作者様の慧眼が光ります。同じ年代の読者を対象にした作品である、とここで宣言している訳です。無類の力を持つ聖女である母親に対…続きを読む

流れ者の”マオ”が、物語の舞台である街に着く所からこのお話は始まります。 迷子になりながら、マオが街のあちこちを歩き廻る描写がとても丁寧で、まるで一緒になって見知らぬ街を散策して…続きを読む

或る住宅街の一家庭で起こる不可解な出来事。 最近亡くなった祖母の声が、夜毎家人の口を借りて語り掛けて来る。 一体祖母は何を伝えようとしているのか。 ジワジワと迫る緊張感の下、語…続きを読む

現実の世界に、何の前触れも無く現れる不思議な描写が、何とも惚けた感じを醸し出していて、そこから現実の重苦しい空気がヒューヒュー抜けて行く様な。 そんな可笑しみにあふれた小話集です…続きを読む

ぼんやりと浮かび上がる桜並木のトンネルの中で、此処に居るのに此処に居ない、そんな不思議な感覚に捉われながら、何処か懐かしい風景の中を歩く。 斯くも不思議な感覚を描いた珠玉の詩です…続きを読む

　難しい言葉遣いは一切なしに、しっとりと心の内を語る。

　かけがえのない日々の営み。

　それは雨の様に夕陽の様に、心の中に沁み込んできます。

　愛すべき珠玉の詩集です。

　とても落ち着いた語り口で、題名の通りスポンジに水が沁み込む様に文章が沁みて来ます。 　決して展開を急ぐことなく、静かに静かに物語は進んで行く。それが何とも心地好くて、読むのが苦…続きを読む

批評というのは、作品に対してその魅力となる点や、又は改善点となる箇所を洗い出す行為であると同時に、どうしても一個人の視点で語るという危険性も秘めており、だからこそそれを巡って様々な…続きを読む

　自分ににとって本物の詩とは何か。奇をてらった表現、それが詩なのか、自身の内に淀む思いを切々と言葉にすればそうなのか。 　長年に渡っての疑問がこの作品群に触れるに折、氷解した様な…続きを読む

　怖い、実に怖い。ネタバレになるので詳しく言えませんが、この作品、恐怖の二段重ねになっていまして、語り手の少女の、学校の怪談を巡る物語を終えて、謎が全て解き明かされ、これで全て解決…続きを読む

　それらはほんの微かな、次の瞬間にも消えてしまい、そのまま忘れ去られてしまいそうな、そんな消息を、丁寧で繊細な文体で綴った、一つ一つが味わい深くも愛らしい掌編集です。 　各話毎に…続きを読む

　短いながらしっかりと怖く、それに加えてラストに向けて巧妙に張られた伏線と、その回収が実に鮮やかな好編です。 　こんな風にホラーに独特のルールと云うか、理屈を持ち込んで、それの処…続きを読む

　一話目で引いてしまって読むのを止めてしまう人もいるでしょうから、言っておきます。取り敢えず読み進めてみて、と。一見ふざけた語り口調ですが、まあ実際ふざけてるんですが、実はこの語り…続きを読む

　若い人は若い人、お年を召した人は召した人、と、別々に描かれる場合が殆どですが、この物語ではそれが分かちがたい地続きの関係で描かれています。 　当たり前と言えば当たり前の事。でも…続きを読む

　主人公が少し完璧過ぎる気がしないでもないですが（嫉妬）、ピアノと云う楽器を通して交流を深めていく二人の会話が、背景の静けさと相俟って、とても親密な感じで、読む側まで暖かい心持にな…続きを読む

　当初、題名から重苦しく救いの無い内容を想像して、恐る恐る、と云った感じで読み始めたのですが、意に反して、ともすればそのまま深く落ち込んで行く様な状況に、その都度、都度に現われるユ…続きを読む

　特筆すべきは、その圧倒的に風情を感じさせる文章です。 　品があって、所々に俗語を織り交ぜながら、サッと一筆書きで書いた様な自由自在な文章で綴られる紀行文。 　まるで、一緒にそ…続きを読む

　都会から遠く離れた小さな島。 　静かな淡い色調で描かれる情景の中で、小さな二人の男女の織りなす素朴で、でもそれだけに隠すところの無い真剣な恋心が切々と描かれています。 　何時…続きを読む

　世相の厳しさから、どうかすると世の中を斜めから眺めがちな自分ではありますが、この作品に触れて、暫しそんな自分を忘れて、作中の登場人物たちと一緒に幸せな気分に浸る事が出来ました。 …続きを読む

これは、今までに無いタイプの作品ですね。 読み始める前にどんなに気難しい顔をしていても、読み終わる頃には思わず笑ってしまう仕掛けが施されています。 そして、勢いのままに、気付い…続きを読む

いや、完璧に騙されました。 最後まで読んで、一瞬意味が分からず、読み返した時のゾクゾク感と云ったら！ 匠に手に依る、不自然な所の一切無い完璧な描写に唸らせられる事請け合いの一品…続きを読む

僅か千文字足らずの小品。 なのに、読み終えた後、まるで一編の映像作品を見た様な深い読後感を読者は味わう事でしょう。 日常の中に孤独を感じている人にお勧めします。 読んでみて下…続きを読む

実は、この小編の語り手である芸人、普通だったら決して許されない禁じ手を使ってます。 それなのに、何故か笑って許してしまう、何とも憎めないキャラクター。 もしかしたら、これこそが…続きを読む

とあるバーの日常風景。 何処かハードボイルドな雰囲気を醸し出す描写。 しかし、真実が開かされた時、読者は思わず頬を緩ませずにはいられないでしょう。 愛くるしさ満載。乾いた日常…続きを読む

読んでみて驚いたのが、そのまるで野武士の様なざっくりとした簡潔で、素っ気なさすら感じさせる文章。 それでいて中身は超王道とも言える冒険活劇で、そのギャップがとても新鮮です。 か…続きを読む

主役は御存知あの名探偵の代名詞シャーロックホームズ！　 現役時代には理路整然とした極めて現実に則した世界に生きていたホームズが、引退した途端、それ迄排斥していたファンタジー要素に…続きを読む

まあ、その、良くある設定で……、そう云った意味で身構えながら読み始めたわけですが。 あっという間に作中の二人の醸し出すほのぼの空間に脳を融かされてしまい、一気に最後まで読んでしま…続きを読む

　作者様には大変申し訳ない話なのですが、最初タイトルを見た時には「釣りかな？」と邪推してしまったものです。余りにあからさまで素っ気ない感じでしたので。 　 　しかし、第一話を読んで…続きを読む

例え誰に知られずとも、 例え誰に理解されずとも、 男には成し遂げなければならない事が有る。 己の限界の、更なるその先を目指して。 ……落ちが最高！ 最後の一文に、貴方は天…続きを読む

ミステリーは他のジャンルに比べて不利な所があって、まず最後まで読まないと作品としての評価がし辛く、連載中だとどうしても低空飛行になりがちなのがまず一点。次に読者の注意が謎解きに向き…続きを読む

　主にミステリーを中心に執筆されている著者による、異色の近未来ファンタジー小説。 　特筆すべきは、ある種極まったキャラクター造形。 　各々の登場キャラクターに付された、特異「過ぎ…続きを読む

　思っているのに届かない。どうしても自分の中から抜け出せない。だから、これは必然的な別れ。それでもどこか繋がりを持ちたくて。だからこれは、そんな「僕」のせめてもの自分に対するささや…続きを読む

　箱と見れば開けずにいられない少女‘こばと‘と、何やら訳ありな箱屋の店長の周囲には、何時だって曰くありげな箱で一杯。各話に登場する奇妙な箱の中身に翻弄されつつも、是非ラストまで読み…続きを読む

　流石中国史でも名高い唐の時代、教科書でも見たビッグネームが次々と登場するのは読んでて圧巻。そこで繰り広げられる要人暗殺未遂事件に巻き込まれた遣唐使達の苦難の行く末は？　重厚な構成…続きを読む