大きなものに圧倒され、自分がちっぽけと思うようなあの感覚。幻想的で、神秘的な描写に没入しました。「まあこういう事情があるんだろうなー」という客観的な視点も入っているのですが、だからこそ「ここには『いる』んだろうな」と思わせる、素晴らしいエッセイでした。これで「ほとんど覚えていない」ってどういうことなんだ。
特筆すべきは、その圧倒的に風情を感じさせる文章です。 品があって、所々に俗語を織り交ぜながら、サッと一筆書きで書いた様な自由自在な文章で綴られる紀行文。 まるで、一緒にその場にいる様な臨場感と、香り立つような詩情に、一気に読み終えてしましました。 昨今の日本語の劣化が叫ばれる中で、こんなにも素敵な文章に出会えたことに、ただただ驚くより他ありません。 兎にも角にも、一度目を通してみて下さい。 久しく覚えなかった、豊かな文学体験が貴方を待っています。