受け継がれるもの、明日へ紡ぐもの。

 若い人は若い人、お年を召した人は召した人、と、別々に描かれる場合が殆どですが、この物語ではそれが分かちがたい地続きの関係で描かれています。

 当たり前と言えば当たり前の事。でも、とかく皆自分の周りの事だけに目を向けがちで、そこに繋がりが有る事に中々気付けない。気付いたとしても、だから何? 自分達は自分達、他の人の事なんて知った事じゃない、寧ろ邪魔、とばかりに目を逸らしてしまう。

 この物語では、いま正に世界に向けて飛び出そうと、今ある世界を生きる主人公達が、先を生きる人達の歩いた道のりをしっかりと受け継いだ上で、それに新たな命を吹き込んで、自分達の向かう明日へと紡いで行こうとする様が生き生きと描かれています。

 二つを繋ぐものとして据え置かれた”忘れ物屋さん”で起きる様々な出来事。

 それぞれの想いが交叉するエピソードに、筆者様の小さな、けれども限りなく優しい視線が、この物語に注がれているのが感じられて、読む側にほんのり温かな気持ちを届けてくれます。


 もっと多くの人達の目に触れて欲しい、と願わずにいられない、優しさに満ちたお話です。
 

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