【選考委員コメント集】カクヨム公式自主企画「百合小説」

※なお、選考委員の両名には、それぞれに候補作品としてお送りした作品全てに対してコメントをいただいております。

◆文芸百合部門

若干エピソード同士の繋がりが悪く、ぶつ切りのような印象を受けました。アーネの生態自体は面白く、もっと読みたいと思ったので、たとえばアーネの「アーネといると人間のストレスが解消される」という事実が明らかになったきっかけや、それによって人間とアーネの関係が大きく変わったり、ツムギのように大きく動揺する人間が大勢出てきたかと思うのですが、そこを書き、その他大勢の事例と二人の事例を対比させることによってツムギとシャナの個人的な関係によりフォーカス出来るのではないかと思いました。
(斜線堂有紀)


学生百合。いわゆる湿度高めの、仮面陽キャと陰キャの百合ですね。どこか乾いている一人称と、適度な距離感で綴られる物語は、いかにも20年代の百合という雰囲気を醸し出していて、心地よく胸に落ちてきます。
(みかみてれん)


設定自体は面白いのですが、これだけ大掛かりなことをしている割にかなり必然性が薄いので、本間先輩の異常性をもっと強調する(しかし、これは文字数的に厳しいかもしれません)か、もしくは別の必然的な理由がほしいところです。
(斜線堂有紀)


文章が上手く、題材も相まって泣けました。最初から最後まで端正に作られた作品だと思います。ゲームキャラクターである推し、その推しが暮らす世界のサービス終了と、答えを出すのが難しい『弔い』を扱った作品であり、そこに生みの親であるイラストレーターを噛ませることで、心の整理をつけるという展開は、同じ痛みを持つ人達に寄り添う物語だと思います。アズリ、よかったねえと素直に思うことが出来ました。最後は少し寂しさもありますが、新たな一歩を踏み出すための爽やかなステップが読者にいい余韻を与えてくれました。
(斜線堂有紀)


世界観が作られてはいるものの、プロローグもしくはエピローグだけが語られているようでなかなか入りづらかったです。これが導入であり、お姉さんの内面を深く探っていく物語であれば歪みを描いた百合として成立したのではないかと思います。
(斜線堂有紀)


危うさすら感じさせるほどに姉を愛する義妹と、その義妹に複雑な感情を抱く姉の関係から秘められた女の過去を明らかにするという構成や、タイトルの意味が最後に明かされるところなど、端正な作品です。それ故に本来ならもっと長い分量語られるべき物語であるという印象も抱いて少し勿体ないような気がしています。雰囲気のある典雅な文章は読みやすいだけでなく作品の世界観作りに貢献しており素晴らしいです。固定の読者を作るのに有用な武器だと思います。
(斜線堂有紀)


義理の姉妹百合(?)。わ~~~なるほど、こういうお話! 鈴なりの感情が群をなしていて、後ろから押し出されるようにキャラクターの心情が明らかになってゆく。世代を超えた百合と、その願い。実に鮮やかなお手並みでした!
(みかみてれん)


主人従者百合。短いながらまとまった舞台設定の中で、登場人物を精一杯魅力的に描こうという意気込みが伝わってきます。そして登場人物が魅力的だからこそ、その一挙一動が気になり、引き込まれます。とてもお上手でした!
(みかみてれん)


突然親友に絶交を切り出す冒頭から、親友がイマジナリーフレンドであると明らかにするまでの流れは面白いと思いましたが、カクヨムの仕様上サブタイトルの「彼女の中にいる私」で、二重人格/イマジナリーフレンドの可能性が読者にあらかじめ示唆されてしまっているのが勿体ないです。ラストは爽やかですが、何かもう少しカタルシスがほしい気もします。
(斜線堂有紀)


吸血鬼百合。統計では、百合好きのうち100割が吸血鬼百合が好きだと言われていますね(過言)。嗜虐的で艶麗な物語は、頭がくらくらするような酩酊感を伴っていて、息をするのも忘れたように一気に読み切ってしまいました。うーん、好き。
(みかみてれん)


身分差百合。ひとりの人間の一生涯! こういう人生を描いた短編を読むと、うおー! って気持ちになりますね。シーンのチョイスが無駄なく面白くて、技術力を感じるお話でした。読後感もよく、面白かったです!
(みかみてれん)


婚約破棄百合。展開が、詰め込まれている……! いいですね、ワクワクします。肝心な場面で毅然とした行動を起こすことができるジョセフィーヌ様の株が上がりっぱなしで、ラストシーンは思わず絵が見えるような華やかさでした!
(みかみてれん)


生成AIを作って愛しく思っている相手の絵を再現する、という今盛り上がっている題材を使った物語ですが、全体的に全てがさらっと流れていき感情やエピソードの書き込みがやや足りない印象です。今回は制限字数の縛りが厳しいのですが、文字数いっぱい書き込んだ方が「死」という題材を扱う時には読み流されないのではないかと思います。題材の着眼点が好きです。
(斜線堂有紀)


故人百合。いやー執着と狂気に彩られた見事な百合でした。破滅に向かって進んでいるのが妙に気持ちよくて、締めの鋭い切れ味には思わず背筋がぞわっとしました。あと、こういう女がサワーオニオン味食べるのめちゃくちゃわかります(偏見)。
(みかみてれん)


元恋人が自分の弟と結婚するという衝撃的な経験を経て、今まさに流れた子供を海へと流しに行こうという二人の物語です。須磨という場所立てから悲恋なのでしょうが、二人で結ばれることが叶わなくとも須磨と『家族』になることを選んだ藤花や、今も須磨の中にある藤花への思いが一概にこの恋を悲恋とも思わせないところが好きです。
(斜線堂有紀)


視点変更が頻繁に起こるのですが、あまり意図がわからなく読みづらさが先立ちました。一種の叙述トリックが用いられているので、それを隠す意図なのかもしれませんが、だったらむしろ棗の視点で統一した方が良かったような気がします。途中、狂気と表される行動も狂気というよりは心に傷を負った人間の当然の反応という印象で、本来はそれを理解すべき更生施設の人間が適切なケアを与えていないように読めてしまいました。
(斜線堂有紀)


冒頭の掴みがいいです。この作品を読んでみたいなと思わせる力があり、作品の雰囲気もしっかり伝わってきます。ゾンビネタは王道ですが、一番最初に噛んでくれると言っていた女が自分だけは噛んでくれない……という不可解な状況に独自性があり、噛まれようと試行する月子は擬似告白のようでよかったです。この文字数の中で噛まれることが愛/噛まれないことが愛の対比に集中するというのは構成のうまさを感じさせました。
(斜線堂有紀)


展開にサプライズがあり、タイトルの裏切り方も意表をつかれたのですが、序盤から中盤の悪い意味での穏やかさからこのラストだと気持ちの置きどころがわからなくなってしまいました。二人がもっと共依存的であったり、千晶がもっと厭世的であったりしたらもっとラストに感情移入出来たような気がします。
(斜線堂有紀)


感情とエピソードラインが釣り合っている作品が好きなのですが、これも見事にそれを体現しています。朱音という人間を何故好きになるかがよくわかります。最初と最後で反転を起こすのは劇的な話作りで用いられる手法ですが、これがばちっとハマっていてよかったです。
(斜線堂有紀)

※12/26追記 上記コメントにつきまして、斜線堂有紀によるコメントのところ、誤記によりみかみてれんと記載しておりましたため修正いたしました。失礼いたしました。

悪役令嬢百合。滅びゆくものの美学、悪としての矜持、そして叶わなかった淡い恋心。そういったものは、百合とも非常に相性がいいとされています。強く賢く聡明だった彼女を救うために……。誰かのために身を捧げるお話は、とてもよいものです……。
(みかみてれん)


学生百合。すべてに意味を求める女の子と、不思議な感性をもつ女の子のお話。西塔がいいキャラしてますね。バルキッシュジンジーグラウド。音で聞きたくなって、何度かひとりでつぶやいてました。
(みかみてれん)
雰囲気は良いものの全体的に平坦で、療養をしに来たお嬢様との交流というシチュエーションも相まって、他の作品との差別化が出来ていなかった印象でした。二人の間にある特別なものやエピソードがもう一押しあると読み手として嬉しいです。
(斜線堂有紀)


一人称の語りと内容、語り手の性格がマッチしていて読んでいるだけで楽しかったです。カジュアルに遺伝子組み換えが行われるようになってしまった世界とこの語り口が組み合わさることで「この世界で生まれた子ってこんな風に物事を捉えるんだな」とすんなり入ってきました。ラストの特有の仄暗さ、ちぃちゃんが忌むべき鱗を取っておいていることに多面的な解釈が出来ることなどもすごく面白いです。一方で、主人公の患う不安型突発遺伝変異症の症状が作中で言及されているようにかなり軽微であることがノイズにもなってしまっています。「鱗」「油の浮いたようなにじいろ」であれば、恐らくほぼ気づかれないだろうと想像できてしまうからこそ、読者の感覚との乖離が生まれるのだと思います。冒頭に引用・解釈された「にじいろのさかな」論が面白いので難しいところですが、主人公の苦悩が読者にも感情移入出来るようなラインを考え出してほしかったところです。
(斜線堂有紀)


世界が海の中に沈んでいるという幻覚を見る少女と海に焦がれる女の百合ですが、まずこの幻覚の内容に引き込まれました。疎外感に苛まれる少女が自らを陸に居場所がないと称することからわかるように、置かれた状況と幻覚の内容がしっかりリンクしているので、彼女の気持ちが理解しやすくなっています。終始ドライな語りとラストのオープンエンドも、もっと書き込んでほしいと思うより、これがこの物語には相応しいのだと思わせるものでした。
(斜線堂有紀)


幼馴染百合。片思いの女の子の恋が実るまでのその一瞬を、瑞々しく切り取った短編。好きなシーンだけにフォーカスを当てて描写を尽くすのは、書いててとても楽しいですよね。幸せなお話でした!
(みかみてれん)


推しとしての枠に入れていたはずの女が特別の枠に入ってしまった女の悲哀を描いた物語ですが、だからこそ花耶には彩都以外の別の女がいるということが明らかになるのは人伝いに聞くのではなくもっと劇的に演出すべきだったのではないかと思います。
(斜線堂有紀)


文章が大変上手く、この選考で読んだ中でも一、二を争うくらいすんなり読めました。それだけじゃなく、文章の独特な軽やかさと雰囲気が個性を感じさせます。もたらされた不在によって『かつてあったもの』や『自分の中の感情』を探り直す物語が好きなのですが、これはとても高い水準でそれが達成されています。エピソードを重ねてその人のことを語ることは、エピソード自体に力が無いとなかなか小説として面白くならないのですが、その点この小説のそうめんのエピソードの寂しさとおかしさの力がすごく良いです。筆力のある書き手だと思うので、こういった外連味のある愛をもっと書いて頂きたいです。
(斜線堂有紀)


ダメなお姉さんとそれをなんやかんや言いながら慕う少女の組み合わせが好きなので個人的に嬉しかったです。終始優しい物語で終わり方も爽やかなのですが、書けない作家を支える為に関連職に就く物語には先行作が沢山あるので、あまり印象に残らないものになってしまったのも否めません。
(斜線堂有紀)


繊細な語りと抒情的な雰囲気によって読ませはするのですが、これ一個の作品として成立させるには難しいものがあります。長編の中の一パートなら完成度が高いです。
(斜線堂有紀)


要介護者の娘を持つ弓子と要介護者向け性風俗従事者である島野の物語です。第三者を介した複雑な関係性の百合だからこそ、細かな読みづらさが引っ掛かりました。シェルクラフトという性風俗サービスの名前が出てくるのですが、この単語と内容の説明が離れているので若干意味が取れないまま話が続いてしまいます。これだと間の十数行は基本印象に残りません。また、娘さんの性についての問題をいきなりここで提起してくるのも、何か読み飛ばしたかな? と思わせてしまいます。これであれば冒頭にそういった描写を入れ、その解決を求めていることを示す→問題は解決したが恋愛の成就はしないという新たな問題が発生、の構成に整理した方がいいかと思います。また、最後の島野への視点変更が唐突で飲み込みづらかったので、視点変更前に記号か何かを打つといいと思います。
(斜線堂有紀)


どんな姿になってもあなたが好き、あなただから好き、をマジックリアリズム展開にて表す物語です。冒頭の掴みや子供らしい語りなどは面白かったのですが、工夫を凝らしたのにもかかわらず終わり方があっさりし過ぎていることや、変身というモチーフから結論が予想出来てしまうことが難点です。
(斜線堂有紀)



◆ライトノベル百合部門

先輩後輩百合。現代転生の百合で、いかにもミステリーの導入と思いきや、プールデートでひたすらイチャイチャしてて、そうなんだ! ってなった。第二の人生を潔く歩む先輩がいいキャラで、そりゃモテるはず。これもヒキが強く、続きが読みたい作品ですね。
(みかみてれん)


お金で相手の時間を買う系百合。開幕の掛け合いにパンチが効きすぎて、一瞬で引き込まれました。台詞がつええ! 七緒さんも英美さんもイイ性格してて、お似合いのふたりだと思いました。小声で釘刺してくるの笑っちゃう。
(みかみてれん)


幼馴染百合。えっちなことをしたくなったら負けのゲームに巻き込まれるつばめちゃん。なんでディープキスはいいんだ……?と一生混乱していました。すでに負けなんじゃないか? 謎は深まるばかり……。ワンアイデアの強度が高い短編でしたね。
(みかみてれん)


観測者百合。途中まで穏やかな気持ちで読んでいたら、急に話のテンション変わっちゃった。一人称の心の声がヒドい。どこまで話が進むんだろうってワクワクしてたら、桃井先生のお断りの台詞でさすがに笑いました。なんだァ、コイツ……!
(みかみてれん)


寝取られ百合だー!! 文章めちゃくちゃ軽妙で好き。フォワグラはさすがに美味しいし、笑っちゃった。鈴香ちゃん自身の趣味が反映されている三人称単元視点がうますぎる。舞台設定説明と鈴香ちゃんのキャラ紹介を同時並行していることから、短編の技量が高いですね。
(みかみてれん)


軽妙な語り口でグイグイと読ませる様は、まさに百合講談師の如し。こういった語りで魅せるタイプの文体はリズムとワードセンスが無いとなかなか読者が置いてけぼりになってしまうものですが、こちらの作品は見事にこちらを引き込んできます。キャラクター面でいえば、私は飄々としていて特別感があり、なのにやたらチョロいお姉様が大好きなのだ。憧憬の崩壊という世界の終わりから新たな世界の創造までを色で締めているのも素敵ですね。一方で、ラストに意外性がないのだけが難点で、当て馬の女子が当て馬だろうと早々に予想できてしまうのが難しいところです。
(斜線堂有紀)


社会人百合。貨物船で働いている女性と、その同僚の物語。心地いい人情ドラマが、短編によくまとまっていて、温かな海風が胸に流れ込んでくるような読了感がありました。あえて語りすぎない筆致がお話に深い幅を与えていて、いいですね。
(みかみてれん)


他にない個性的な設定で冒頭から引き込まれました。しかし、彼女らのバックボーンが見えてこないため、シリーズものを途中から読み始めた故のある種のとっつきにくさがあり、魅力的な彼女たちのことをもっと知りたい! と意気込んでいる読者の期待からはややズレたところに物語の主軸が置かれてしまった印象でした。しかしこれはコンクールにおいての評価ですので、物語の完成度というより戦略の立て方の違いだとも思います。結索標本というモチーフは目新しく、標本そのものの出来上がりの美しさと共同作業および愛情の確認作業を行えることが利点ですが、そこから一歩踏み込んで結索標本でなければいけない理由にもっと説得力があれば短篇としての満足感が増すかと思います。海難事故で亡くなった父親というカードは結索標本という強いモチーフに対してはやや弱いです。
(斜線堂有紀)


三角関係百合(なのか?)。暴力の花が咲き乱れています。いいですよね暴力。衝撃的な閃きからの急展開で、一気にギアがあがった印象。序盤の展開をさらに圧縮できれば、より美味しいところを読者さんにお届けできたかもしれませんね!
(みかみてれん)


これ……なに? 百合。カクヨム公式さんよぉ、変なお話を選考しやがって! めっちゃ面白かったよ! 胸がじんわりしました! SS形式で進むお話なんだけど、物語に必要不可欠な『驚き』が何重にも詰まってて、ずっと楽しく読めました! ありがとう!
(みかみてれん)


入ると記憶を失う部屋というソリッドなアイデアと、意表を突く結末の二点が面白く、会話劇としての面白さに満ちています。一方で伏線やミスリードがかなりアンフェアな作品でもあり、作中でも言及された後付け設定によりラストの感動が薄れてしまっています。何かしら読者が「これは真実である」として道標にできるような発言を増やせば更に素晴らしいものになるかと。また、少女Aと少女Bの表記をなくして境目を薄くするか、あるいは性格や口調などの書き分けをしっかり行って二人のキャラを立たせた方が物語の目的には沿っているのではないでしょうか。知らない子が愛を伝えてくるというエモーショナルな結末を生かす時に「知らない」が際立ちます。
(斜線堂有紀)


逃避行、幼馴染百合。旅モノの醍醐味のひとつとして、その過程で親しくなったり、かつての親しさを取り戻したりする展開がしっかりと描かれていて、噛むほどに味のするお話でした。SFも含めて、すべての要素がテーマの下に一本化されていて、え? 短編巧すぎない? お見事。
(みかみてれん)


異世界転移百合。ええええ、ちゆりちゃんがヒロインじゃないの!? なんかものすごい方向転換してきてビビる! 主人公が急に異物感を出してくるお話、とてもいいよね。風音ちゃん好きです。ここから先も面白くなりそうだなあ!
(みかみてれん)


大学生百合。かわいいに全振りした女の子の描写がとにかくかわいくて、クールな薫先輩がずっとかっこよくて、ただデートしてるだけなのにずっと面白かった……。というかここで終わりかよぉ! あと2シーンは読みたかったよぉ!
(みかみてれん)


これ……なに? 百合その2。最初から最後まで、怒涛の言葉遊び。物語というよりは詩と呼ぶ方が相応しい気もするけれど、読み終わるとなぜかいい短編を読んだような気分にさせられる! 悪戯の片棒を担がされたような、そんな不思議なお話でした。
(みかみてれん)


学生百合。もう序文から美撫海ちゃん好き。友人にも嫌われるわけにはいかないという行動が、一本筋が通っていていいですね。うまくいってほしいと応援できるペアを描くことは、恋愛モノにおいて非常に大事な要素です。花丸!
(みかみてれん)


お菓子化百合。ケーキバーストとも違う、お菓子化の百合だ……。さすが短編コンテスト、いろんな作品がありますね! 限界OLと、彼女を救う大学生の女性のやり取りは暖かくて切なくて、どこかほの甘くて。いいお話でしたね……。
(みかみてれん)


飢饉の時に増えるという、人が甘味になる奇病。この設定自体が面白かったので、むしろ『愛しい相手に食べられたい』という歪な愛を描く上でノイズになっているのが惜しいです。いわばこの物語は叙述トリックが用いられているわけですが、奇病の設定・二人の関係の明示・叙述トリックを用いてキャラクターの希死念慮を拭う、と、物語上でやらなくてはいけないことを増やしているので、今回のような文字数の制限が厳しいコンクールでは要素を絞った方が内容が濃くなるかと思います。このタイトルであればいっそ奇病にかかった女と主治医くらい要素を削いだ方が選考においては有利です。
(斜線堂有紀)


傍観者百合。幽霊を交えての部活ワチャワチャモノ。登場人物の出会いだけで終わってしまったのが惜しいですね。ここからがいちばん面白くなりそうなのに! 短編のペース配分は難しいところですが、1万字に4人というのが特に難しポイントですね。漢字の変換にも気を配っている文章は、おおっ、となりました。
(みかみてれん)


学生百合。やべえ主人公だよ、坂田先輩。お話に倫理観がない。あんなに飼いたがっていた猫が、秒速でただの招き猫と化している……。そして肝心なところで淑女ぶりやがって、なんでだよ!!! 内容は面白かったです!
(みかみてれん)


中学生百合。な、なんて優しいお話なんだ……ドキドキしちゃった……。女の子が女の子を文字通り猫かわいがりする。かわいいとかわいいが合わさって、超かわいいになる、というとにかく幸せな短編でした。よかった!
(みかみてれん)


生徒教師百合。接点のなさそうな人物と共通点を見つけてグッと距離が縮むのは、百合の王道ですね! 知らない名前の絵具を~の言い回しがきれいでした。丁寧だけどテンポのいいお話づくりが、お上手!
(みかみてれん)


幼馴染百合。10才のシーンが本当に楽しそうでいいですね。花梨ちゃん、なんて厄介な女になっちまったんだ……。そしてこの情念の女に、独り暮らしのカノジョができちゃったら、もうどうなっちゃうんだ……!!
(みかみてれん)


幼い頃は輝いていた君が再会したら変わってしまっていた……という物語が好きなので、かなり個人的なツボでした。幼い頃のサイコバニーも優李もかわいさ自体は衰えておらず、キャラクターの魅力が変わらない「変身」だったのも好感触でした。小悪魔的な少女がこちらを振り回し掻き乱す話運びも、まんまと振り回される花梨も百合物語として面白いです。ただ、物語のカタルシスをどこに置くかについては疑問でした。確信が持てなかった→確信が持てたから明かした、だとサイコバニーの格が下がってしまうので、別の理由を設定してワイダニットの物語で締めた方が一貫性があったかと思います。サイコバニーが結局小悪魔な普通の少女だった(でも花梨は好き。自分のことを覚えていてくれたことだけで充分報われる)という方向性でまとめても通る物語なので、ここは好みですね。最後の会話の外連味が愛おしいので、やはりサイコバニーの格は落とさない方向で読みたいです。
(斜線堂有紀)


生徒教師百合。読んでみて、不真面目なお姉さんが真面目な子にワルの楽しみを教えてゆく話って、百合とメッチャ相性いいな~って思わされました! 最初の場面ですみれさんがあおい先生に好き好きオーラを放っているのも、特に嬉しい要素で◎。
(みかみてれん)