銀色の旋風

旅籠はな

序、十三年前


「ごめんね。ごめんね、ペイナ」


 腕に抱き締めた幼子に女性は謝りながら泣いた。子どもは安らかな顔をして眠っている。女性は我が子に降りかかる困難を予想していた。


「ペイナ。どうか幸せであって。どうか生きて」


女性は泣きながら子供をある家の前に寝かせた。未だ眠り続ける幼子はまだ自分の名前すらも知らない。自分がたどるであろう数奇な運命も。

母親は我が子の幸せをただ祈るしかなかった。

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