終、ペイナとラゼン

稀代の預言使、サ・グラジュルの訃報は瞬く間に全世界へと広まった。その死因について様々な憶測が飛び交ったが誰も正解を知らなかった。



あの後。ペイナたちは王城に身を寄せていた。ベルア族の五家は悪しき風神によってめちゃくちゃにされた里の復興を待たなくてはいけなかったし、アーグラとレビリオの処遇を決めなくてはいけなかったからだ。一応関係者としてペイナもラゼンも王城に留まっている。そんなある日。


「ペイナ!」

「ミュリラ。どうしたの?」


ベルア族の薬草畑から少し離れたところでぼんやりしているとミュリラに声をかけられた。


「ペイナ聞いて!ボルックが瑞の当主になったの!」

「ボルックが?ならお祝いしないといけないわね」


ボルックが当主になる。それはレビリオが当主の座から落とされたということだが、彼はそれほどまでのことをしでかした。なのでペイナは言わずにいることにした。

数日後。アーグラが殺人罪で投獄されたと聞き、この騒動は幕を閉じたのだった。




「ペイナ、ほんとに里に来ないの?」


ベルア族が里に帰る日。ミュリラはペイナの手をぎゅうっと握りながら尋ねてきた。


「うん。育ててくれた家族に会いたくて」

「たまには里に遊びに来てね」

「きっと行くわ。手紙も書くね」

「うぅぅ、ペイナぁ」


感極まったのかペイナに抱きついて泣き出したミュリラの頭をペイナはそっと撫でた。


「里で何かあったら来てね。家出先にくらいなるからね」

「ペイナもだよ?絶対だよ」


そう言って離れなくなったミュリラをどうしようかと見ているとボルックがこちらに駆け寄ってきた。


「ミュリラ。そろそろ離れなよ。ペイナも困ってるだろ?」

「だってぇ」

「、、、ペイナ。いつでも里に来てくれ。みんな歓迎するよ。それと、ありがとう。ペイナがいなきゃベルア族は変われなかった。寿命のことも、、、本当にありがとう」

「私、そんなすごいことは、」

「感謝は素直に受け取っておきな」


背後から聞こえた声にペイナは振り向く。


「ルドさん!」


振り向くとミーシェ、オベリアを引き連れたルドが立っていた。


「世話になったな。ペイナ。ボルックの言う通りペイナがいなきゃこんな最高の未来はなかった。ありがとう」

「私たちの寿命が正常になったのも、オベリアちゃんが助かったのもペイナさんのお陰ですからねー」

「ペイナさん。本当にありがとう。それに、ペリア姉さんのことも、当主のことも」


いつの間にかペイナの周りにはこれまでに関わったベルア族の人々が集まり、口々に感謝を伝えていた。


「私だって。皆さんと会わなかったらペリア母さんのこともサ・グラジュル様のこともずっと知らないままだったし、、、。一気に身内ができたみたいで、すごく嬉しかったです。ありがとうございました」


そうして。ベルア族は和やかな雰囲気のまま、王城を去って行った。


「、、、ラゼン。みんなに何も言わずに良かったの?」


ペイナはペイナの背後でずっと黙って立っていたラゼンに声をかける。


「俺はなんもしてないだろ」


ラゼンはどこか呆れたように言う。


「そんなことないよ。一緒にあの日を乗り越えたってだけで。みんな仲間だよ」

「その通りだぞ」

「リーヤアイナ殿下!」


いつの間にかそばにいたリーヤアイナにペイナは思わず飛び上がった。


「一緒にあの日を乗り越えた妾も仲間だからの」

「、、、もちろんです。殿下」


そのラゼンの言葉にペイナもリーヤアイナもにんまりと笑った。


「それから、ラゼン。お主はこれからどうするつもりだ?」

「決まってませんが、、、。サ・グラジュル様の遺言のとおり、ペイナを守れる場所にいようかと」

「ペイナはどうする気だ?」

「育った村に戻ろうかと思っています」

「ふーん。ペイナの故郷は王都からだいぶ遠いな?」

「はい。クリーグ国の端の方ですから」

「ラゼンは王都に留まれんなあ?」


リーヤアイナはどこか含み気味に言った。ペイナは数秒考え込み。


「あ!ラゼン、私の家に来る?」

「はあ!?」

「空き部屋だってあるし、母さんも父さんもきっと許してくれるよ。きっとお兄ちゃんも!それに、村に男衆はいくらいてもいいんだから!」


その言葉にラゼンは驚いて固まり、リーヤアイナは大爆笑している。


「ははは。いいのではないか?ふふ。ペイナの家に行ったら。はははは。いやあ。お主らは面白いのう」

「え、いや、ええ」


ラゼンは。きらきらした目でこちらを見るペイナと、ニヤニヤするばかりのリーヤアイナを見て。諦めたかのようにため息をついた。


「行くよ。ペイナの家。きっとさ。サ・グラジュル様に言われた通り、ペイナのこと守れるし、幸せになれるだろ?」

「もちろんよ!」


そのまるでプロポーズのような言葉が本当になる日もきっとそう遠くない。


                                                 




たかが一高校生が趣味で書いた拙作をお読み頂きありがとうございます。ここまで読んでくださった皆々様に最大限の感謝を

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