間章七、彼が望むもの

「入れ。何の用だ」


部屋の戸が叩かれた音にリーヤアイナは答えた。入って来たのは預言使、サ・グラジュルの護衛であるラゼンだった。


「なんだ。お主か。ペイナだったら良かったものを」

「ペイナのことを気に入ってらっしゃるのですね」

「私は使えそうな人間が好きだ。ペイナは色々な要素を鑑みて、、、とても有用だ」

「それには風の力も?」

「そうだな。無いとは言えん。、、、それで何用だ?私に言いたいことがあるんだろう?」

「、、、もしカイヤを討った際に貢献が認められれば褒美は出るでしょうか」


リーヤアイナは目を細めて目の前の少年を見る。じっとこちらを見る少年は眩しいほどに真っ直ぐな目をしている。


「何を望む?」

「彼女を守れる力を」

「私のような為政者からか?」

「それもありますが、とりあえずはベルアとクリグム、それから今代陛下から守れればいいでしょう」

「結構難しいぞ。それに私が叔母上についたらどうする気だ」

「あなたは彼女を気に入っていらっしゃる。無下にはしないでしょう」

「なるほどなぁ」


リーヤアイナは王女で次代の女王だ。国の駒になるほかない。それが嫌で叔母は独身を選んだ。しかしリーヤアイナには独身を選び、それに文句を言わせないほどの力はない。リーヤアイナが結ばれる相手はおそらく国を愛してくれる人間であってリーヤアイナを愛してくれる人間ではないであろう。

だからこそリーヤアイナは彼らが酷く眩く尊いものに見える。彼らのことは無性に守りたくなるのだ。


「いいだろう。具体的には何を望む」

「それは、、、」


ラゼンの言葉にリーヤアイナはにっこりと笑う。無欲で善良な彼らに幸多からんことを。

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