二十二、彼の終焉

「五家が揃ったところで、この男、、、龍の家当主たるカイヤの処罰について決めたく存じます」


ルドが会場全体を見回して言った。


「まず、この男の罪状を。ミーシェ」

「はい。まず、瑞の家当主のレビリオ様の弟の殺害、炎の家当主ユージオ様の妻の殺害、陽の家先代当主及び先々代当主の殺害が挙げられております」


ミーシェが淡々とカイヤの罪の告発をする。その様子を見てアーグラが慌て出した。


「ミーシェ!何を言っている!カイヤ様はそんなことをなさっていない。罪の告発をするならばそれ相応の証拠をだしなさい!」


ミーシェは冷たい目でアーグラを一瞥するとすぐに目線を戻した。


「父上。証拠になりうる品の管理は厳重になさった方が良いですよ?」

「なっ、、、」

「こちら、影の家の蔵から出てきた物です。影の家に代々伝わる毒は致死率が高い代わりに対象の身体の一部を必要とします。おそらくですが、彼らの髪か爪でも入っているのでしょう。それから当主アーグラの手記。当主の正妻の手記。こちらをご覧ください」


そういうとミーシェはそれぞれの名前が書かれている紙の包と、手記を二冊出した。手記にはきちんと彼らの罪について書かれている。ペイナも確認済みだ。


「そんなもの、証拠になるのか!」

「普通はならないでしょうね。しかし父上。ここはベルア族の族内会議。王国の議会ではありません。その場の過半数の取れればいいのです。陽に当主もいますしね」

「私を裏切るのか、ミーシェ!」

「裏切ってなどおりません。もともと私は父上の味方ではございませんから」


悪びれもせず言うミーシェにアーグラは戦慄いている。


「さあ。そこまでにして。続いての罪状を、、、殿下お願い致します」


ルドがそう言うと会場の戸が勢いよく開き、リーヤアイナが入って来た。


「皆の衆初めまして。妾はリーヤアイナ・デーナ・クリーグ。この者の断罪をしようじゃないか」


ベルア族の面々は突然のリーヤアイナの登場に驚いているが、全く気にせずにリーヤアイナは続けた。


「こやつ、、、龍の家当主カイヤは王家に対する反逆罪がかけられておる。我が大叔母上を手籠めにするとなると、、、罪は重いな。証拠は陽の家の書庫にあった、この系図だな。それからルドに王家の試金石をつければ明らかになるだろう」


リーヤアイナは陽の家の書庫から取ってきた系図を開いて周りに見せつける。


「皆様。ルドの断罪にご反対は?」


アーグラでさえ、声を出せなかった。しかし、


「ルド、、、こんなことをして許されると思うな。俺は族長だ。誰も俺を害せないんだからな」


カイヤはルドを睨みつけながら言った。ルドはそんなカイヤを心底哀れんだような目で見た。


「父上。もう既に族長はこの私です。昨夜、陽の家の当主から額飾りを賜りましたから」

「は、、、?」

「ご確認したらどうですか?」


その言葉にカイヤは立ち上がり、半ば錯乱しながら部屋を出ていった。ペイナ達はそれについて行く。カイヤはそのまま走って自分の寝室へ入り、額飾りがないことに気づく。今回の計画の中で一番難しかったのは族長の交替であった。額飾りを何とか探し出し、昨晩ペイナからルドへ額飾りを渡したのだ。


「うあああああああああああああぁぁぁ!お前!お前!」

「父上、いえ。カイヤ。お前はもう族長でもなんでもない。断罪を執行する」


発狂したカイヤは部屋から出ていこうと立ち上がり、また走り出す。


「ええい!どけ!」


カイヤは入口付近にいたリーヤアイナを突き飛ばし逃げ出したが、廊下にいたラゼンにすぐに拘束された。


「離せ!くそ!俺は族長だぞ!特別なんだ!こんなことをしていいと思うな!」


見苦しく喚くカイヤをルドは見下ろした。そして。


「さようなら。父上」



静まり返った廊下にはものを言わない亡骸が残った。

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