二十四、家の不始末

吹き飛ばされて来た人々の反応は様々だった。咄嗟にエヴシーテを庇う者、訳が分からず混乱するもの、慌てて逃げようとする者、、、。

その中にボルックとミュリラ、そしてサ・グラジュルを見つけペイナは目を瞬かせた。


「ねえ、ラゼン、あの二人、」

「それにサ・グラジュル様も、、、」

「どうしよう。巻き込むつもりなんてなかったのに」


こちらに気がついたボルック達がこちらに駆け寄ってきた。


「ペイナっ!大丈夫だった?嫌なことされてない?」

「ミュリラ。大丈夫よ」


ペイナは飛びついてきたミュリラを受け止めながら答えた。


「ペイナ、ラゼン。無事で何より。、、、それであの風は?」


ボルックは冷静にこちらに尋ねてくる。


「銀の風神様、、、悪しき風神様が」

「悪しき風神?そんなのどうやって呼んだんだ?」

「それは、、、」


ボルックに、これはボルックの父がやったことだと言っていいのだろうか。自分の父親がこんな大事を起こしたなんて知っても大丈夫なのだろうか。ペイナが悩んで口を噤んでいると、ラゼンが口を開いた。


「ボルック。原因はお前の父親だ。レビリオが悪しき風神を呼び出して陽の家の当主代理を器にしたんだ」


ボルックは一瞬大きく目を見開き、すぐに元の表情に戻った。


「、、、正直いつか何かしらはやると思ってたけどここまでとは、、、」


その言葉にペイナに抱きついたままのペイナは首を傾げる。


「確かに少し冷たい人だったけど、、、レビリオさんってそんな人だっけ?」

「外面がいいだけだよ。父は陽の家、、、というより銀の風神様に傾倒している。ベルア族を治めるのは銀の風神様の血を引く陽の家しか許されないって日々言ってるよ。でも召喚まで手を出すなんて、、、」


ボルックはどこか悔しそうに言う。もしかしたら止められたかもしれないというふうに考えているのだろうか。


「父は僕がどうにかします」


呆然として座り込むレビリオを見てボルックが言った。


「どうにかして父にこの事態を収束させます。召喚がわかるなら帰す方法だって」


そう言ってレビリオに向かって歩き出したボルックを見てミュリラが言う。


「私、ボルックと行く。私のお父さんだって、レビリオさんを止められたかもしれないもの。家の不始末は家の中でやる」


そう言ってミュリラはボルックに駆け寄って行った。

二人を見送った後。


「レビリオさんが風神様を帰す術を知らなかったらどうしよう、、、」

「え?」

「呼び出すのができたとしても、帰すことができるなんて、限らないじゃない」


そのペイナの言葉にラゼンは表情を固くした。

その時。


「ははは。帰るものか。愚か者め。久方ぶりに降りられたのじゃ。誰がなんと言っても帰らんぞ」


オベリアの口から吐き出される悪しき風神のその言葉にペイナの目の前は真っ暗になった。


「はははははははははははははははは」


悪しき風神の高笑いに呼応するように周りに吹く風が強くなっていく。目も開けられないほどに風が吹いたその瞬間。


『僕の片割れはまたまた阿呆なことをして』

「っ!」


どこからか声が聞こえてきてペイナは目を開き、辺りを見回した。しかし周りには誰もいない。そもそも風が強すぎてペイナはすぐ横にいるラゼンの声を聞きとるので精一杯な程なのだ。


「ペイナ、どうした?」


急に身動ぎしたペイナの気配にラゼンも目を開けて尋ねてきた。


「誰かの声が聞こえた気がして」

「誰もいないぞ」

「でも!」

『聞こえてるの。丁度いいね。陽の娘。少しばかりお借りするよ』

「え?」

「ペイナ?」


次の瞬間。眩い銀の光が辺りを照らした。

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