間章二、全てを見通す人は

「こんばんは。サ・グラジュル様」


同晩。サ・グラジュルの部屋に一人の男がおとずれた。


「なんだ、小童か」

「私のことを小童というのはあなたくらいですよ」


静かに笑う男の見た目は三十代半ばを少し超えたくらい。見た目のみで言えばサ・グラジュルと同年代だ。


「しかし何用だ?前に会ったのは随分前だろう」

「あなたの大切な者たちをお借りしますので一声かけようかと」

「そうか、ようやく終わるのか」


サ・グラジュルが何かをこらえるかのように言った。


「ええ。うまくいけばですが」


男の顔は柔らかな笑みを浮かべている。


「しかしわしが全ての原因であると言うのに、自分の手で解決できないのが何よりも歯がゆい」

「あなたが関わるとろくなことがありません。大人しくしていてください」

「手厳しいのう。でも面倒臭いのはクリグムじゃろう?あやつらは運命を不変のものだと思っとる。運命とはそんな簡単なものでは無いのになぁ」

「おっしゃる通りですよ。本当に」

「しかし全てをあの子らに押し付けるのは不甲斐ない。わしにできることがあれば、すぐに言うのじゃぞ。ルド」

「ええ。わかりました。では、サ・グラジュル様。またお会いしましょう」


そういうと男、、、ルドが去っていった。ひとりきりになった部屋でサ・グラジュルはぽつりとつぶやく。


「ようやく、終わるのだな、イーリャ、、、」


イーリャ。サ・グラジュルが唯一愛した女性の名前である。

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