夏休みの間、誰よりも思い浮かべた相手。


安藤サオリだった。




自分の立場ばかりか、憧れの人まで奪おうとしている安藤。


好美の憎悪は限界を超えていた。




-ユルサナイ-




好美は静かな怒りを抱きながら保健室を後にした。




そのまま早退した好美は、遅くまで町をさまよった。


家に帰れば父親に罵倒される。




行くあてがないまま、ただ町を歩き続けていた。


時間をつぶすため、公園のブランコに座った好美。




その時だった。


ベンチに座る高校生カップルの話が聞こえてきた。




「地獄通信って知ってる?」




彼氏がそんな事を話していた。


憎い相手を地獄に流せる地獄通信。




子供達の間で流行る都市伝説のような話を、カップルは、面白おかしく話していた。




しかし、この時の好美は、その話に真剣に聞き入った。


パソコンでアクセスできる事。




深夜12時にだけそのサイトは開く事。


好美はそっと時計を確認した。




11時20分。




好美は急いで家に帰った。


玄関に仁王立ちしている父親。




「こんな時間まで何をやっていたんだ。学校の勉強もろくにしないで、何を……」




好美は初めて父親に反抗した。


掴みかかる父親の腕を振り払い、そのまま部屋に入り、カギをかけた。

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