それだけ聞くと、父親は好美の部屋を出て行ってしまう。


もう何年もこんな関係が続いている。




よく言えば教育熱心。


しかし、その実情は結果だけを求める放任主義。




母親も、家では家政婦のような存在だった。


広いリビングも、そこで家族で食事をする事は無い。




部屋の前に食事が置かれ、用意が出来ると母親が部屋をノックする。


その合図だけ。




好美の家での生活は、ほとんど勉強机の上で進んでいく。


今では、好美も疑問さえ抱かなくなっていた。




昔は、褒めてもらいたくて頑張った勉強。


良い成績を取ったときは自分の事のように喜んでくれた父親。




その顔を見たくて頑張ってきた好美。


しかし、最近では良い成績が当たり前になり、父親が褒める事はなくなっていた。




いつしか、好美も本来の気持ちを押さえ込んでいた。


なぜ勉強をするのか、そんな疑問も抱く事をやめた。




自分にはこれしかない。


勉強が出来ればいつか褒めてもらえる。


そう自分に言い聞かせて日々勉強に打ち込んでいる。

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