世間から見れば裕福な家庭。


しかしその中には、家庭と呼べる物は存在していなかった。




大きな家に吹き抜ける冷たい風。


それが好美の日常だった。




テストまで数日。


好美ほどではないにしても、ほとんどの生徒がテストへの緊張を高めていく。




しかし、たった一人そんな事を気にもしていない様子の生徒がいた。


授業中、堂々とした居眠り。




大きなあくびや、ノートも取らずぼうっとしている姿。


転校生の安藤だった。




前評判とはまったくの別人のようだった。


何かの間違いだったのかもしれない。




そんな噂が広がっていた。


しかし、安藤は孤立するわけではなく、持ち前の明るさで、クラスに不思議と溶け込んでいた。




誰とでも気さくに話す安藤は、特進でも自分の居場所を見つけていた。


勉強が基本だったクラスに、少しだけ変化が起きていた。




その和気あいあいとした雰囲気を、好美はどこかうざったく感じていた。


好美には浮かれている余裕は無い。

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