「相田さん、大丈夫?」




通りかかった曽根が、好美を支えた。




「曽根先生、すみません」




「大丈夫?相田さん、少し保健室で休みなさい」




曽根に付き添われ、好美は保健室へと案内された。


授業のチャイムを、好美は始めて保健室で聞いた。




保健室の静けさが、好美の悔しさを増大させていった。


自分の全てが失われたような絶望感。




しかし睡眠をとっていなかった好美は、いつしか保健室のベッドで寝てしまった。


気がつくと、昼休みになっていた。




ベッドから校庭を見ると、何人かの生徒達が見えた。


静かな時間、好美はただ校庭を眺めていた。




その時だった、校庭の片隅でよく見慣れた人影を発見した。


それは、好美が密かに思いを寄せる紺野だった。




誰かと話している様子。


木の影であまり良くは見えなかった。




好美はじっと紺野のほうを見つめていた。


そして、紺野に頭を下げる人影。




校舎のほうに向かってきた人影を見て、好美は衝撃を覚える。


その姿を間違えるはずは無い。

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