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「みんなが相田さんは凄いって話してて、友達になりたいなってずっと思ってたの」
「私なんて……凄くないよ」
本来なら嫌味に聞こえそうな言葉も、なぜか安藤からはそう聞こえなかった。
あれだけ怨んでいた相手なのに、そのまっすぐな表情が好美にそう感じさせなかった。
そして安藤はゆっくり自分の事を話し始める。
病院の母の存在。
父親が死に、この町に引っ越してきた事。
学費を稼ぐためにバイトをしている事。
好美とはまったく違う生活だった。
「私ね、相田さんがうらやましかったんだ。私はお金もないし、必死に勉強して奨学金でやっと高校に行けたんだもん」
安藤から出た言葉は、好美の予想とは違っていた。
自分にはないものを全てもっているような安藤からそんな言葉が出るとは思いもしなかった。
「安藤さんが、なんで?」
好美は思わずそう返した。
「相田さんはみんなに憧れられてて、しかもお金持ちのお嬢様なのにすっごく努力してるのが分かるから。私だったらきっとダラダラ過ごしちゃうと思うな」
好美にはとても不思議だった。
自分には何もないと思っていたのに、そう思われていた事。
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