12
そんな風に思っていた安藤の話を聞いて、好美はますます自分の小さな自分が情けなくなっていた。
「安藤さん、私ね……私ね……」
なぜか好美は涙が溢れてきていた。
勝手に怨みをぶつけていた事を、隠していられなくなっていた。
「私ね…これであなたを地獄に流そうとしていたの……ごめんなさい。ごめんなさい」
好美は溢れる感情を抑えられなかった。
そんな好美の手を、安藤は優しく握った。
「ごねんね相田さん。私がそんなにあなたを追い詰めてしまったなんて。ごめんね」
しばらくの間、二人は泣き続けていた。
落ち着いてきた頃、安藤がすっと立ち上がった。
「相田さん、私を地獄に流さなくて良かったね」
「え…?」
安藤は、ゆっくり自分の過去を話し始めた。
小さい頃、激しい父親の虐待に耐えていたこと。
仕事もせずにふらふらしては、酒に酔って母親を殴り飛ばしていた事。
そして、耐え切れなくなった安藤は、父親を地獄に流した事を。
「相田さん、私はもう地獄に行く事が決まっているの。でもね、私は必死に勉強して、お母さんの病気を治したいの、だからそれまでは地獄に行けない。それに、地獄に行くのが決まっている私を地獄に流して、相田さんが地獄に行く必要は無いわ」
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