13
そして、安藤は胸に刻まれた刻印を見せて、そっと好美の手を取った。
「これが私が地獄に行く証。相田さんはこんな事をしちゃだめだよ」
好美は安藤の全てを知った。
大変な日々を送りながらも、強く生きている安藤。
その覚悟の強さを好美は知った。
ただ勉強をしていただけの自分が勝てなかった理由が分かった気がした。
勉強を楽しいと思った事も、何のために勉強をしていたかも忘れてしまっていた。
強い意志を持って勉強している安藤。
その強さを知った好美は、地獄に流さなくて良かったと安心した。
「こんなもの、もういらないね」
好美は、バッグから藁人形を取り出し、屋上から投げ捨てた。
藁人形はひらりと舞いながら、すうっと消えていった。
「私も安藤さんに負けないように目標を見つける。一緒に頑張ろう」
好美は、初めて友達を感じた。
誰かに憧れた事も初めてだった。
振り返った安藤が、そっと好美に手を差し出す。
安藤と重なった日の光が、好美には希望の光に見えていた。
安藤がした事は、確かに罪なのかもしれない。
しかし、そうせざるをえなかった気持ちは、好美には理解できた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます