13

夏休みまでの数日。


好美は誰とも口を利かず、休み時間もすべて勉強に没頭していた。




その鬼気迫る様子は、今まで以上に他人を近づけないものだった。


そんな好美の変貌を、誰よりも心配そうに見つめていたのは安藤だった。




「相田さ……」




好美は露骨に安藤の呼びかけを無視していた。


しかし、その次の言葉がどうしても出なかった。




いつの間にか、好美に教えてと来る生徒もいなくなっていた。


その代わり、好美のすぐ前で安藤の周りには常に人が集まっていた。




その中には、あれだけ好美を慕っていた佐藤の姿もあった。




明るく容姿も派手な安藤は、完全に特進の中心になっていた。


5点の差が、二人の立場を逆転以上の差をつける結果になった。




好美は悔しさと憎しみを入り混じらせながら、その怒りを勉強にぶつけた。


病的な執念のまま、好美は夏休みを過ごす事になる。

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