12

その時だった、好美の部屋のドアが開き、父親が入ってきた。




「起きなさい、好美」




いつになく厳しい声の父親。


好美はおそるおそるベッドから体を起こした。




バシッ。




一瞬の事だった。


好美の右頬に、痛みが走った。




「だらけおって。落ちこぼれは家にいらん」




父親は、それだけを言い放ち部屋を出て行った。


実際は好美の成績は大きく下がってはいない。




わずかだが、安藤がその上を行ったのだ。


しかし、好美の父親には関係ない。




成績よりも順位が大切なのだ。


好美の心はさらに深く落ちていった。




好美にとっては、全てが終わってしまったように感じた。


なんとかしなくては、そんな思いが好美の中にこみ上げてきた。




そう思うと、勉強を開始せずにはいられなかった。


夏休みが明けてすぐにテストがある。




そこで挽回しなくてはもう後は無い。


誰もが楽しみにしている夏休みが、好美にとっては悪夢の1ヶ月になった。

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