星の守り人 36話 時間稼ぎ
国連機議長のジェームズ・ロアとの交渉から1日経ち翌日、キャリアーでレイラからの報告をオルカ、リオ、折原の3人が聞いている。
「え!地球側に戦わせるってことですか?」
「えぇ、実は途中からその作戦で行こうって決めてたの」
「そうだったんですね…」
ちょっと複雑な気持ちになった、どこかで自分一人犠牲になればいいという感覚があったが、結局他の人も巻き込む結果となってしまったのか…
「それで、何機くらいのアームズを手配してるんですか?」
「19機手配してますわ」
「19?足りるんですか?」
「もちろん戦力としては足りませんわ、でも19機が精一杯でしたの、何とかこれで時間を稼ぐしかないわ」
「時間を稼ぐ?」
「えぇ、本番はコロナイザーの侵攻が始まってからよ。ケントさん達が応戦して時間を稼いでる間に何とか全世界を説得してみせますわ」
レイラの説明によると、今回の地球人にアームズを貸すという作戦が可能になった条件は2つ。まず、折原がアームズを扱うことで、地球人がアームズを使うことが出来るとわかった点。2つ目は、地球側に防衛部隊組織を依頼出来た点。
「推定では1年数ヶ月後にコロナイザーの侵攻が始まり、徐々に激化していくはず、敵の主戦力が到着して地球が滅ぶ前に星守部隊の要請が間に合うかどうかが勝負ね」
「どれだけ時間が稼げるかは俺達にかかっているってわけですね…」
自分が乗っているのを含めるとちょうど20人、たったそれだけでは正直厳しい戦いは避けられない、しかも全員地球人となればもっとだ。それでも戦う戦力を確保出来ただけ良しとするしかないか…
「今のところ決まっている内容だと、世界各国に3人ずつのチームを6つ、総勢18名の地球部隊を作ることになったわ。もちろんケントさんもその一員よ」
「え、20人じゃないんですか?」
アームズが19機、自分のを含めると20機あるのだから20人フルで戦力を確保したほうがいいように思える、これでは2機も余ってしまう。
「3人1組が星守の基本なんです。1機はケントさん、あなた専用の予備機よ」
「俺専用?」
「ケントさんはこの戦いの要となりますので、予備機も専用で用意させていただきます」
「そうですか…」
用心深すぎる気もするけど、レイラが下した判断なのであればきっと意味があるのだろう。
「そして最後の1機、これはリオ、あなたのよ」
「え、僕の?」
「そうよ、あなたも戦うの」
リオは一度戦うのを諦めた、折原というカードを手に入れるため、自分の戦う力を犠牲にした。折原をストライカーにすることを自分の戦いとしよう…そう自分に言い聞かせて。元々戦闘はそこまで得意では無い、でももう一度力が手に入るならそれを無視するほど無責任でも無い。
「…しょーがない。僕の力、見せてあげますか!」
「ふふ、期待していますわ」
こうして折原含めた地球人18名に加え、オルカ、リオの総勢20名でコロナイザーに立ち向かうことが決定した。
*
時は少し戻り前日、交渉後、今後の方針を決める話し合いが終わった後、レイラが1人廊下を歩いていたところをジェームズが呼び止める。
「レイラ」
「あ、ジェームズさん…」
「ジェームズで良い。宇宙人に地球の上下関係など意味ないだろう」
「そうですか、ではジェームズ、どうしました?」
「話し合いの場で不確実な事は言えないだろうから黙っていたが…正直に聞きたい。この作戦で地球は守り切れるのか?」
今日の話し合いで決まった事は、あくまで現状で最も良い選択であって、それが地球を救えるかどうかという事には一切ふれていない。
「…厳しい戦いになるとは思います。戦力20人なんて最低限の数にも満たない、純粋に数が足りませんので、救い切れない部分は出でくるかと」
「どのくらい出ると思う?」
「流石にそこまでは言えませんわ。でも、どれだけ減らせるかはジェームズ、あなたにかかっていますわ。戦況が激化する前に星守の防衛部隊が間に合わなければ、どちらにせよ勝ち目はありません」
「うむ…」
出来るとは断言できない、実際にコロナイザーとの戦いが始まってみないと世間はその驚異を正しく認識できないだろう。果たしてそこからで間に合うのだろうか…
「遠い未来を憂いていても仕方ありませんわ。今はまず地球部隊の組織をお願いいたしますね」
「あぁ、それは任せてくれ」
地球部隊の結成にはジェームズが直々に動くことになった。議長が自ら動くのは異例な話だが、地球の危機を前に人任せになどジェームズには出来なかった。
そこからのジェームズの行動は迅速そのもの。流石は実力で国連機議長に上り詰めた男、すぐに国連機加盟国への通達、地球部隊組織の為の人員選定等を進める。そしてメディアを通じてロングアイランド基地で起きた真実を世界に伝えた。1週間の内に様々な憶測が飛び交っていたが、国連機技術開発局の公式回答として報道されることで、考察合戦に終止符が打たれた。黒い未確認飛行物体の正体は敵意を持った宇宙からの来訪者、白き英雄はそれを止めるために同じ宇宙から来た者、そして国連機は白き英雄の一団に接触し、共に問題解決にあたると発表した。
「やっぱり白き英雄は味方だったんだ!」
「ついに宇宙人来た!宇宙時代始まっちゃう?」
そこまでは、まるで映画の世界が現実になったと興奮するものもいたが、その後に告げられた黒い侵略者がまた来る可能性がある、という報道に世間はざわついた。しかし軍隊が太刀打ち出来ないコロナイザーに対して何か出来るはずもなく、今後どうするべきかを様々な専門家が連日ワイドショーで語る日々が続いた。
そして1ヶ月後、地球防衛部隊の結成が発表されることとなる。
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