星の守り人 23話 第2戦開始

 

「_もうすぐ追いつくよ!準備して!_」


 リオからの通信が入り、折原に緊張が走る。


「了解、行くよケント君」

「はい!」

「「アームズ!」」


 サテラにより完璧に整備されたそれぞれのアームズが装着される。折原とオルカの姿は一瞬で無くなり、そこには美しい白い体に青く光るラインが走った2機の人型ロボットが現れた。


「_サテラ、格納庫のハッチオープン!_」

「[了解しました]」


 格納庫後方のハッチが開き宇宙空間が広がる。


「_カウント行くよ!5…4…3…2…1…_」


 折原とオルカのアームズのメインスラスターが点火され、青い光が格納庫内で乱反射する。


「_GO!!_」


 リオの合図で2機のアームズが飛び出す。既にリオがキャリアーの向きを反転させコロナイザーがいる方に向けてくれていたので、キャリアーのハッチからそのまま後方へ飛び立ち、少し離れたところでメインスラスターの出力を一気に上げ、コロナイザーに向かい加速する。

 とてつもない加速により、通常の人間の体では耐えられないほどのGがかかる。これはいくら体を鍛えていても耐えられるものではないため、アームズには加速時のGや攻撃を受けた際の衝撃から搭乗者を守るための耐衝撃用のエネルギーフィールドが折原を包み衝撃から保護している。だがそれでもある程度のGは受けてしまうため、人体に危険が及ぶ加速をしないようにサテラが制御をする。

 折原はコロナイザーをレーダーに捉えつつ、ヘッドアップディスプレイに映る現在の速度を見る。そこには「10km/s」と表示されている、宇宙空間には建造物や地面といった比較対象が無いためわからなかったが、既に秒速10kmという超高速で飛行しているようだ。


(この速度で離されるのかよ…!)


 同時に出撃したはずなのに、オルカは既に肉眼ではスラスターの光が微かに見える程度の距離まで離れていた。途中までは同じ速度で加速していたが、折原が秒速10kmまで加速したところでサテラの制御によりそれ以上加速できなくなってしまった。しかし、オルカはその後も止まらず加速していく。

 肉体の強度が違う。そりゃそうだ、数か月前まではまともに運動もしたことの無い俺と、長年星守として戦ってきたオルカさんとじゃ比較になるはずがない、訓練を経て少しは強くはなったと思っていたけど、こうして比べてしまうとまだまだだ。


「_接敵するぞ。生体反応なし、破壊して構わないぞ_」

「_了解です!_」


 数十km先にいるオルカから通信が入り、コロナイザーが無人機であることが告げられる、元々コロナイザーは無人機であるが、それでも生体反応が検出される場合がある。折原もよく知る、誰かが攫われている時だ。オルカからの通信を聞き少しホッとする、誰かが中に閉じ込められているだけで難易度は格段に上がるし、何よりあんな怖い思いを自分以外にして欲しくなかった。


「_こちらも接敵します!_」


 オルカから少し遅れて折原もコロナイザーに追いつく、速度をコロナイザーと同じになるように落とし、500m程離れた位置を取る。折原はレーダー表示から望遠カメラの映像に切り替え、敵の形状を確認する。事前情報で確認はしていたが間違いない、よく知っている偵察機型のコロナイザーだ。折原は戦闘に向けて息を整える…


(これは…想定外だな)


 一足先にコロナイザーに追いついていたオルカがあることに気づく。以前戦った時より格段に速い、以前は中に折原が閉じ込められていたため全速力は出ていなかった。しかし今回は空っぽ、身軽だし中身を保護する必要もない。これでは追尾プログラムを実行しようにも、旋回時のGに折原の体が耐えられない。


「_ケント君聞こえるかい?コロナイザーの飛行速度が速い、必中距離まで近づいて一撃、というわけにはいかないだろう。今までの追尾プログラムだけでは駄目だ、射撃による誘導をやってみてくれ!_」

「_誘導ですか?…っやってみます_」


 オルカからの指示を受け、コモンシューターを構えながらコロナイザーに接近していく、450…400…350…今のコロナイザーが全速力であると仮定するならアームズの速度の方が速い、あとは旋回性能にどれ程の差があるか…


「サテラ!追尾プログラムを更新する、射撃による誘導も計算に入れてくれ!」

「[了解しました。射撃に対する行動パターンの収集を行ってください]」

「よし…行くぞ」


 コロナイザーまで300m、コモンシューターにチャージを開始しようとしたその時


「っ!消えた!?」


 望遠カメラで捉えていたコロナイザーが急旋回したと思った次の瞬間、視界から消えてしまった。慌てて減速、レーダーで位置を確認する。遥か後方で旋回を済ませたコロナイザーが、折原との距離をさらに広げるために加速を始めていた。


「もうあんなに…!」


 空気抵抗のない宇宙空間では地上とは比べ物にならない速度で飛行する。それは一瞬判断が遅れるだけで致命的に距離が空いてしまうということだ。


「もう一回!」


 数km彼方にいるコロナイザーをレーダーに捉え、再加速する。徐々に距離を詰めていき、また400mまで接近した。


「よし…」


 コモンシューターにチャージをしながら距離を詰めていく…しかし


「あぁ!また!」


 300mまで近づいたところでコロナイザーが急旋回、またも視界から消えてしまった。慌てて射撃を試みるも、エネルギー弾は何もない虚空を通り抜ける。


(まともに近づく前に逃げられる…どうすれば…)


 戦闘開始から5分、未だ接近すら許されていない…

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