星の守り人 22話 友人の不安
12月中旬、本格的な冬が始まり1年の終わりも見え始めてきたこの頃、外に出るのも億劫になる寒さの中、山内達は家の中で休日を過ごしていた。
「っだぁ!また負けたよ!坂井、そいつ使うのやめてくんね?」
「やなこった!確実に勝てる手を使うのが俺のモットーさ!」
山内達は週末の休みを使って坂井の家に集まってゲーム大会をしている。自称ゲーマーの坂井の家には最新のゲーム機やソフトが山のようにあるのでみんなでゲームをするときは決まって坂井の家に集まる。今日は山内と坂井を含めた4人で先週発売された新しいゲームで対戦している。
発売前から一部のゲーム業界で話題になっていたロボットによる対戦型のゲーム、通常の対戦ゲームと異なり人類を攻撃する攻撃側と人類を守る防衛側に別れ、攻撃側は複数の機体を使い配置や指示をするといった戦略を立るストラテジーゲーム、防衛側は1つの機体を操作して防衛拠点を守るアクションゲーム。といった風にどちら側になるかで操作方法が違うというのが注目ポイントとなっている。一足先にやりこんでいた坂井が他のメンツをボコボコにしていると、坂井の部屋の扉が開き坂井母が入ってきた。
「まったくあんたは、平日も休日もゲーム三昧で…たまには外で運動でもしてきなさいよ」
「うるさいなぁ、良いんだよ俺はゲーマーとして生きていくんだから!」
「あ!坂井のお母さん、お邪魔してまーす!」
「あら、いらっしゃい。どうせこの子が持っていても宝の持ち腐れだから、いっぱい遊んでいってね」
「まったくですね!では、お言葉に甘えて遊び尽くします!」
ゲームをするときは決まって坂井の家に来るので坂井母とも顔なじみ、専業主婦で家にいることが多いので良く話すし、時々お昼をご馳走になることもあるくらいの仲で坂井母も個々の名前や顔を覚えている。坂井母は部屋を見渡した後、最近顔を見ない一人の青年の名前を出す。
「そういえば最近、折原君?だっけ?は来ていないのね」
「あいつ最近付き合いわりぃんだよね、バイトでも始めたのかな?聞いても教えてくれないんだよねー」
夏の終わりくらいからだろうか?よく一緒に遊んでいた折原が急に来なくなってしまったのは。放課後も土日も「用事がある」といって誘いを断ってくるので最近はあまり誘う事すらなくなった。別に大学にいる時は普通に話すから仲が悪くなったというわけではないのだけれど、毎回断られると誘いづらくなってしまう。だが山内だけは未だ性懲りもなく毎回誘っている。
「山内も毎回毎回断られるのによく誘いにいけるよな、メンタル鋼か?」
「いやいや、俺はガラスのハートよ?…でもさ、なんか断られてもいいから何かで繋ぎ止めておかないと、どっか行っちまいそうなんだよな、あいつ」
「…何そのアニメみたいなセリフ、きもっ」
「うるせっ、そんなこと言ってる間に防衛拠点撃破っと!よっしゃ、俺の勝ちだぁ!」
「うわっ、ずりぃぞ!今のはノーカウントだからな!」
「ほーう言い訳か?これが現実だったらお前の故郷は滅んでるぜ?」
「ぐぬぬ…」
「まぁ、これが現実で起きたらたまったもんじゃないよな…」
ゲーム画面には攻撃側が勝利した時の勝利ムービーが流れ、防衛側の人類が住む街を破壊尽くす映像が映っている。ゲームの中だから笑い話に出来るし勝って喜ぶことも出来るが、現実でこんなことがもし起きたとしたら自分だったらどうするだろうか?ムービー上でボロボロになっている人類側のロボットを眺めながら、あれに乗って戦う奴はどんな奴なんだろうと考える。
一瞬、折原の顔が脳裏に浮かぶ
(ん?なんであいつを思い出したんだ?さっき話題に出たからかな…?)
そんなことを考えている間にムービーは終わり次の対戦の選択画面が表示されていた、後ろで見ていた残り2人の友人が催促してきたので、コントローラーを手渡す。
(まぁ、いっか)
山内は出そうにない疑問の答えを諦め、友人とのゲーム大会へと戻っていった。
*
「そういえばケント君、放課後も休日も訓練ばかりだが、いいのかい?俺が言うのもなんだが…友達と遊んだりするような時間がほとんど無いんじゃないのか?」
「大丈夫です。この前久々に遊べましたし、今は訓練している方が落ち着くんです。ただ…」
「ただ?」
「もうずっと誘いを断り続けているんですけど、未だに毎回誘ってくれる友人がいて、少し申し訳ないといいますか…」
「なるほどね…良い友達じゃないか」
「はい…入学してすぐ仲良くなったやつで、大切な友人です」
山内は入学して初めて仲良くなった友達で、アニメ好きという共通の趣味もあったためすぐ仲良くなった。あまり人と仲良くなるのが得意ではない折原とは対照的に山内は誰とでもすぐ仲良くなれるタイプで、折原と仲良くなった後も次々友達を作りその輪の中に折原を連れて行ってくれた。思えば山内と友達になったおかげで、想像してたよりは楽しい大学生活遅れてるな…
だからこそ守らないと…
「_オルカ!ケント!緊急事態!すぐデッキに来て!_」
オルカと折原が少ししんみりしていたところに突然大音量の通信が響き渡る。リオの声の大きさからしてその内容は一つしかない、オルカと折原は急いでデッキへと向かう。
「見つけたのか!」
「うん!しかもこれ見て、2機同時だよ」
「これは…地球から離れて行ってるのか?」
「わかんない、けど宇宙にいるならこっちのもんだよ!」
「そうだな、リオ、近くまで接近してくれ!ケント君、出撃準備だ!」
「了解です!」
「まかせて!」
リオはデッキ中央の操縦席に座ると、キャリアーを2機のコロナイザーがいる方へと発進させた。その間にオルカと折原は格納庫で出撃の準備を始める。
「サテラ!アームズの武装を変更してくれ、ケント君のは変わらずでいい、俺の武装をエクステンドレンジシューターに変更してくれ」
「[了解しました]」
オルカが指示を出すと格納庫の壁面が開き中からアームが飛び出し、オルカのアームズに装備されているライフルを取り外し壁の中へ戻っていき、身の丈程はある大きなスナイパーライフルのようなものをもって再び現れた。
射程拡張ライフル型両手銃、通称エクステンドレンジシューター。有効射程距離を延長させるため、長い銃身と大容量のエネルギーチャージ能力を生かし、汎用型のコモンシューターの倍以上の弾速で射撃することができる。代わりにサイズが大きく取り扱いが難しい、また弾速を上げるためにチャージ時間が長くなってしまいる。サテラに指示を出し、武装の入れ替えが問題無く行われたのを確認した後、オルカは折原に向かい話し始める。
「さてケント君、今回は俺と2人で出撃だ。前回の戦闘とは異なるところは2つ、1つは敵が2機いること、そしてもう1つは宇宙空間での戦闘であるというところだ」
「ですね、1機ずつ集中して撃破するべきでしょうか?それとも1人1機で別々に撃破するべきでしょうか?」
「今回は敵が地球を脱出して逃げていると仮定して対応した方がいいだろう、1機目を追っている間にもう1機に逃げられるのは避けたい、1人1機で行こう。出来るか?」
「出来ます」
「よし、俺の方が先に撃破できればサポートに回るから、出来る限りやってみてくれ」
「了解です!」
2回目の実戦。しかもオルカさんとの共闘だ、訓練で模擬戦をしたことは何度もあるけど実戦でのオルカさんは初めて見る。本当なら間近で見てみたいけど、そうも言っていられないな…
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