星の守り人 24話 リオ塾長
漆黒の宇宙に青い流星が4つ。その流星は時に向きを変え、時に加速と原則を繰り返す。奇しくも似た色の光を放ち飛行する4つの流星、内2つは星を侵略する黒い機体、もう2つは星を守る白い機体。眼下に輝く星を巡り争う4つの流星。その内1つにはその星で生まれ育った少年が乗っていた。
(近づけない…!)
宇宙空間の超高速飛行に翻弄され、未だ敵を捕らえられていない折原。ただ時間と体力だけが削られていく。
「うーん、苦戦してるねー」
キャリアーのデッキで戦況を観察していたリオがつぶやく。リオはキャリアーで折原達を追いかけながら邪魔せず、いつでもサポートできる位置をキープしながら付いてきていた。
「しかたない!アドバイスしてあげるか!」
既に戦闘開始から10分が経過しており、逃げるコロナイザーを追いかける形でかなり地球から離れてしまっていた。そろそろ決着をつけなければいけないので折原に通信を繋げる。
「_ケント!ちょっと地球から離れすぎちゃってるから、ここいらでガツンと決めちゃおっか!_」
「_リオさん!すみません…でも全然近づけなくて…_」
「_うーん、ちょっと敵が速すぎるよねぇ。ちなみにどうやって倒そうとしてた?_」
「_え?、えっと、ある程度まで近づいてから、射撃に対する行動パターンを収集しようと…_」
「_甘い!それでは勝てないぞ!ケント塾生!_」
いつから塾生になったんだろうか?というか何でこの状況でこのテンションで喋ってくるんだろう?
実際、コロナイザーは誰かを拉致しているわけでもないし、逃げているだけなので危機的状況ではないのだが、こう状況に慣れすぎて緊張感が無いのかな…?
「_遠くから撃っても意味ないからね、近くに行きたい気持ちはよーーく分かる!_」
「_はい…ただ近づく前に急旋回されてしまって、この前のように近づくことすらできなくて…_」
「_そりゃそうさ、敵も学習しているからね。前にケントが戦った時のデータを共有されているだろうからね、ケントが急成長でもしてない限り勝てないよー_」
「_そんな…じゃあ一体どうすれば…_」
「_焦りは禁物!いきなり勝つための追尾プログラムを作ろうとしないで。まずは近づくためにどうすればいいかを考えるんだよ_」
「_!…なるほど!了解です!_」
実戦という緊張感と追いつけないという焦りから、思考をめぐらす余裕が無かったが、リオとの通信で少しだけ心に余裕が出てきた折原はリオのアドバイスの意図を汲み取る。
「サテラ!行動パターン収集にはどこまで近づく必要がある?」
「[200m以内で射撃に対する回避パターンが必要です]」
「よし…まずは200mまで近づくための追尾プログラムを作成してくれ」
「[了解しました……作成完了]」
「追尾プログラム実行!常に200mの位置を維持してくれ!」
「[了解しました]」
アームズが折原の制御を離れ自動飛行モードに移行し加速を始め、一気に300mの距離まで詰める。
(また急旋回が来る…!)
分かっていても反応しきれない急旋回、コロナイザーはいつも通りまた突き放してやると言わんばかりに急旋回を行う。その瞬間、急旋回とほぼ同時のタイミングでアームズの小型スラスターにより機体を回転、コロナイザーの急旋回先を向くと同時にメインスラスターの出力を上げる。
「ぐっ…!!」
急旋回による強烈なGが折原を襲う、自動制御により折原が耐えられるギリギリのGで旋回したアームズはコロナイザーを猛追する。
(尋常じゃないGだ…!でも…近づいてる!)
コロナイザーとの距離を確認すると280m、少しづつ近づいている。その後もコロナイザーは距離をとるために急旋回を繰り替えすが、急旋回を繰り返すごとに徐々に失速していく。そして…
「200m!射撃開始!」
チャージ済みのコモンシューターを構える。飛行は自動制御に任せて射撃にだけ集中する。1発、2発と照準を定め撃っていく。
(当たる必要は無い、可能な限り敵の進路を塞ぐように撃っていくんだ…!)
「[追尾プログラム…70%完成]」
(もう少し…!)
「[完成しました。追尾プログラムを更新します]」
準備完了。既に戦闘開始から15分が経過している、決着をつける時が来た。
「行くぞ。サテラ!追尾プログラム実行!」
飛行、射撃、全ての制御をサテラに渡す。
「[了解しました。エネルギー弾出力を30%に変更します]」
コロナイザーの装甲の強度データから有効な攻撃となるギリギリの出力まで威力を下げ、その分連射性能を引き上げる。追尾プログラムを再実行した僅かな隙で、またコロナイザーとの距離が400m程になる。距離が空いたことでコロナイザーが急旋回で逃げ回る動きから、一直線に逃げる動きに変わった。失速して速度の落ちた状態から、また超高速鬼ごっこが始まる。メインスラスターの出力を一気に上げコロナイザーとの距離を詰める。加速性能はアームズの方が圧倒的に高いようで一瞬で差を詰めていく。
「くっ…速い…!」
急加速のGに折原が唸る。だがそのおかげでもう300mまで近づけていた、また急旋回による追いかけっこが始まる。コロナイザーが旋回の体制に移ろうとした瞬間ー
「[射撃誘導開始します]」
自動制御でコモンシューターを構え、コロナイザーが旋回しようとした方向にエネルギー弾を放つ。攻撃を感知したコロナイザーは旋回姿勢を無理やりキャンセルして直進の動きに戻す。その僅かなタイムラグに一切減速していないアームズは距離を詰める。2度、3度と旋回を試みるコロナイザーに対して、完璧なタイミングで射撃をすることで妨害、強制的に直進しか出来ない状況を作る。直進ではアームズの方が速く、旋回を妨害されるたびにさらに差を詰められてしまい、4度目の旋回を妨害した時には80mの距離まで近づいていた。
(あともう少し!)
しかしコロナイザーも素直に負けを認めるわけがない、こちらが射程距離に近づくという事は相手も射程距離に近づいているという事、不気味な黒い翼を広げレーザーを放つ。
「[回避します]」
放射状に放たれたレーザーの隙間を正確にバレルロールしながら回避していく。回避しながらも、その隙に旋回しようとするコロナイザーにエネルギー弾を放つ、回避をキャンセルしたが間に合わず、広げた翼に着弾、超高振動で翼を破壊する。破壊された衝撃でさらに失速したコロナイザーに、バレルロールを終わらせたアームズがメインスラスターの出力を上げ加速
「距離50!」
必中距離に入ったことを確認し、最後の一撃を放つ、最後だけは自動制御による射撃では無く折原自身の手で、コロナイザーの中心にある動力機関めがけて。
音のない宇宙のはずなのに、金属がバラバラに砕けた音が聞こえた気がした…装甲を貫き、動力機関だけを破壊されたコロナイザーは動力を失い、勢いのまま宇宙の彼方へと飛んで行った。
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