星の守り人 25話 評価反省

 

「…ト君…ケント君!」

「あ、はい!オルカさん!こっちは終わりました!」


 無事撃墜したことに安堵してぼーっとしていたところにオルカから通信が入る。


「そのようだね、お疲れ様。先にキャリアーに戻っていてくれ」

「はい、…オルカさんは?」

「ちょっと偵察機の残骸を調べたら戻るよ」


 既に自分が追いかけていたコロナイザーを撃墜していたオルカは、破壊した残骸を調べているようだった。


「わかりました。お先失礼します」


 心も体もくたくただった折原はお言葉に甘えてキャリアーに帰還することにした。


「さてと…随分遠くまで行ったみたいだな」


 オルカは折原が撃墜したコロナイザーの方へ飛んでいく。


「お、これはかなり良い状態だな。出力を落としたのが功を奏したか…」


 撃墜されたコロナイザーを見て感心するオルカ、連射性能を上げるためコモンシューターの出力を落としていたのだが、その結果無力化できる最低限の破壊でのコロナイザー撃墜を成功させていたため、動力機関周辺と翼の一部以外はほぼ無傷だった。ちなみにオルカが撃墜した方は、エクステンドレンジシューターの高射程、高威力の一撃で粉々にしてしまったため、ほとんど調べられることは無かった。


「サテラ、こいつのメモリにアクセスできるか?何目的で地球を離れたのか調べたい」

「[了解しました。アクセスします…]」


 最初に鹵獲した偵察機を解析し、構造は把握していたため、すぐにアクセスが完了、情報がオルカのヘッドアップディスプレイに映し出される。


「さて、何が目的だ…っ!これは…」


 *


「ケントお疲れ様!」


 帰還した折原を満面の笑顔でリオが迎える。


「ありがとうございます!あとアドバイスも、助かりました…あれが無ければ…」

「気にしないで!僕はアドバイスしただけ、それを実行するだけの実力があったのはケントだよ!」


 リオは良くも悪くも気を遣えない男なので、きっと本心から言っているのだろう。折原もそれを知っているから素直に嬉しいという感情で言葉を受け取る。


「ーーで、ここで僕のスペシャルアドバイスがあって一気に決着したって感じかな?」


 戦闘記録を見ながらリオが説明してくれた。客観的に見れるし、どれだけ最初の追いかけっこが無駄だったかよくわかる。何より驚いたのがオルカの戦闘記録だ、なんと接敵して3分経たずに撃墜していたのだ。


(武装は違うけど条件は同じだった、ここまで実力に差があるのか…)


 その後もリオからアドバイスを受けたり、逆に折原から質問をしたりしていると、調査からオルカが帰ってきた。


「あ、お帰り~」

「オルカさん!お疲れ様です」

「ただいま、ケント君、今回もよく頑張ってくれたね。あとすまない、ケント君をサポートする予定だったのだが、実戦経験を積んでほしくて傍観させてもらったよ」

「オルカってば厳しいよねぇ、あれだけ苦戦したんだからアドバイスくらいしてあげても良いじゃん」

「ぐっ…すまない」


 いつも通りリオにいじられるオルカ


「それで?何かわかったの?」

「あぁ…」


 オルカは調査結果をモニターに映し出す。


「コロナイザーの目的は…帰還命令?」

「あぁ、もう地球での役目は終わったようだ、しかもこれを見てくれ」


 そういってオルカはコロナイザー同士の通信記録を表示した。


「帰還命令が出たのはケント君が地球で敵を撃墜したしばらく後。恐らく6機の偵察機の内、1機でも撃墜されれば帰還するような指示だったのだろう」

「ケント君が撃墜してしばらく…ってことは…」

「記録から見ても間違いないだろう、残りの2機はもう地球にいない」

「そっかぁ…まずいねー」


 地球に飛来した偵察機は全部で6機。1機は折原を攫った奴で今はアレックスの元に、もう1機は地球で折原が撃墜して海に沈めた。そして先ほど撃墜した2機と既に逃げた2機。先ほどとは打って変わって船内が沈んだ空気に包まれる。確かに逃げられたのは悔しいけど、何故オルカとリオはここまで落胆しているのか折原には分らなかった。


「あの、地球からコロナイザーが居なくなったなら良いことじゃないんですか?」

「あー、確かにね。地球人のケントにしてみればそうなんだけどね。僕たちとしては困ったことなんだよ」

「困ったこと…ですか?」

「そうなんだよぉ!だってもう敵が居ないんだよ?地球にも降りれないし、僕たち仕事無いじゃん!!」

「え、いや…そんな事…ない…んじゃないですかね?」


 リオがいつもの調子に戻って愚痴り始めた。沈んだ空気を晴らすためにわざとやってくれているようにも見える。急なテンションの切り替えについて行けずタジタジになる折原、今日は急ハンドル切るやつが多いな…


「リオ、ケント君を困らせるな」


 リオのオルカいじりと、オルカがリオを叱るのはもう2人の定番のやり取りになってきた。


「確かにリオが言っていることも一つなんだけどね。もう一つ重要なことがあるんだ」

「…?」

「偵察機が帰還する、という事はつまり偵察が終わったという事なんだよ。偵察が終わったら次に何が来ると思う?」

「偵察の次は…侵攻」

「そうだ、とはいっても敵の本体は遥か彼方だからすぐに来ることは無いとは思うが…予想より早く侵攻が始まる可能性は高いだろう」

「そんな…!」


 地球での撃墜がきっかけで帰還命令が出たってことは…


(俺が…撃墜したから)


 もっと自分に強さがあれば、撃墜せず生け捕りという選択肢もあった…もっと…


「にしてもこれじゃケントも困ったねー」

「そうだな…」

「え、俺がですか…?」

「だってほら、もう実戦経験積めないじゃん?」

「あ…」


 そうだ、今地球にいる唯一の敵である偵察機が居なくなったという事は、もう戦う相手がいない、しかも次に来るであろう敵はきっと、偵察機では無く敵の本隊、攻撃してくる敵…


「しょーがない、やっぱアレ使うしかないんじゃない?オルカ」

「うむ…もっと実戦経験を積んでからが良かったのだが、仕方ない」

「オルカさん?リオさん?アレって一体…」

「「シミュレーターだよ」」

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