星の守り人 5話 タイムリミット
「オルカ、地上に行ったレイラっち…上手くいってないっぽいよ」
「レイラから通信が来たのか?」
「いや、まだ来てないんだけど、今レイラっちがいる所をサーチしたらさ…警察署にいるんだよね、目的地って国際連絡機構じゃなかったっけ?」
「コンタクトに失敗したのか……?」
地上に降りた仲間、レイラからの通信が一切無いためリオが状況確認のためレイラの信号を探索すると、本来の目的地では無い所にいた。
それはつまり、地上での交渉で問題が発生しているという事だろう。
「やっぱり…地球の人間が信じるわけ無いんだ…!」
折原の不安が的中してしまった。
警察署にいる。地球人である折原にはその意味がよく分かる。交渉に訪れた宇宙人を警察署に連れて行くとしたら、護衛の為か不審人物として連行されたかのどっちかだろう。そして今回は恐らく後者だ…
「レイラならなんとかこの状況を打開出来るとは思うが…」
「順調じゃないのは確かだよねー」
「他に…他に方法は無いんですか!?」
「今のところは無い。俺達が調べた限りだと、地球規模の危機に対して権限を持つ組織は国際連絡機構だけだ」
…無理だ。地球上にこの状況を信じてくれて、その上で地球を守るという目的の為だけに星守と協力ができる人間がいるとは思えない。
自分の様に体験して驚異を知っている人でもない限りは…
「それじゃあ…このまま間に合わなければ地球は侵略されちゃうって事ですか!?」
折原は行き場の無い焦りをオルカ達にぶつける。
自分でも分かっている、この人達が悪いわけではない、この危機的状況を信じようとも、交渉に応じようともしない地球の人間が原因なのだ。
しかし、同じ地球人である折原には地球人側の気持ちも分かる、自分だって何も知らなければ信じる事は無かっただろう。
「レイラが地上に降りてから1日、まだ時間もある」
「そんな事をしている間に地球に来ちゃったら!…ってあれ…?…そう言えば敵が来るのがいつか分かるんですか?」
「……言ってなかったかな?」
「オルカ……もしかしてまた説明し忘れたの?」
「……かもしれない」
「それで…どのくらいなんですか?」
「約2年後だ」
「……え?」
2年後?全然先の話じゃないか。てっきり数日、数週間で来てしまうのだと思っていたのに…
折原はホッとして肩の力を抜く、焦りで体が緊張していたから忘れていたが、攫われていた時に全身を打っていたから体中が痛い…早く家のベットで横になりたい、そんな呑気なことを考え始めた。
「なんだ…じゃあまだ時間は全然あるんですね!」
「…逆だよ」
「逆?」
「むしろ2年という時間は準備には短すぎる、よく考えてみてくれ、防衛設備の準備、各国との協力体制の準備、交戦時の対応方法の策定、そういった準備を地球規模で行わなければならない。それに…」
「それに…?」
「防衛部隊の到着が間に合わなくなる。地球との契約が締結して要請を出したとして、部隊が到着するのは1年後だ」
「そんなに…!」
2年後という未来の話に安心するという浅はかな考えをした自分に怒りを覚える。
よく考えればそうだ、国家間での問題1つ解決するのに数年、下手すれば数十年かかる今の地球の状況で、たった2年で世界中が一致団結して宇宙からの脅威に対抗するための準備が完了するはずが無い。
もしこのまま間に合わなければ地球が……!
嫌だ___
何より自分が感じたこの恐怖を、大切な人達に味合わせたくない。何をされるか分からない恐怖、抵抗する事すらできない絶望感。
そんな目に家族や友人が合うかもしれない…?そんなの絶対に嫌だ!何か方法はないのか!?自分にできる事なら何だってする…だから…だから…
助けて___
折原の心の中で感情が濁流のように暴れまわる。地球上で自分しか知らない恐怖、焦り、最悪な未来の想像、家族、友人……
折原は耐えられなくなり、その場で膝から崩れ落ちた。
「なにか…俺に出来る事は無いんですか………」
折原の絞り出すように放った言葉に返答は無い。今までどんな質問をしても必ず答えてくれたオルカも目の前で絶望する少年にかける言葉が見つからない。
「…じゃあさ」
ここまで自分からは折原にほぼ話しかけなかったリオが急に声を上げる。
「君が星守になるっていうのはどうかな?」
「………え?」
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