星の守り人 3話 目覚め
明るい…
折原は光の中にいた。暗くて狭いところに閉じ込められていたはず、たしかロボットに連れ去られてその後…
「痛っ!」
痛い、全身を打ち付けていたようだ。それにしてもここは一体…?折原は周囲を見渡す。
白い部屋、広さとしては寝台列車の客室くらいだろうか?窓が無く、ちょっと窮屈に感じるがベットの寝心地は良い。
ベットを見てみる、触ったことのない生地で出来ていた、サテン生地の様なサラサラした触り心地だがちょっと違う、何というか、細い金属で編んだ布のような…?
「_体調はどうだ?_」
「ふえ!?…あの…えっと……?」
急な声に驚く、館内放送のように部屋中に響くが、スピーカーは見当たらない。
「_あー、怪しいものでは無いよ、っていうと余計怪しいか…とにかく動けるくらい回復していたらこちらに来てほしい、その部屋を出て左だ_」
なんか声の主以外に後ろで笑い声が聞こえる。なんでだ?
なんにせよさっきの一言も喋らない黒いロボットに比べれば、言葉が通じるだけで百倍マシだ。折原は言われたとおりに声の主のもとへ向かう。
「綺麗な所だな…」
白を基調としたシンプルだが汚れ1つない綺麗な廊下を抜けると、少し大きめの部屋に出た。
漫画の宇宙船に出てくる様な椅子が5つ、2列にバランス良く同じ方向を向いて配置されており、椅子の向く方向には大きなモニターが壁に埋め込まれている。
表示されているものの意味わからないが、何かのパラメータを表しているであろうゲージやレーダーのようなものがいくつも映っている。
部屋の入り口で棒立ちになっていると、手前側の2つの椅子が回転しこちらを向いた。
「よかった、なんとか回復したようだね」
「君、運がいいねー、僕たちが見つけなかったらやばかったよ」
「あ、ありがとうございます…?」
「リオ、彼はまだ混乱しているんだ、茶化すんじゃない。すまないね、俺はオルカ、この軽そうなやつはリオ」
「まぁ、体重はかるいよね」
「えっと、折原…健人です…」
「ケント君だね、よろしく」
こちらを向いた椅子には2人の男の人が座っていた、オルカと名乗った男は短髪で身長は180cmはありそう、年齢は20代後半から30代半ばくらいだろうか?
その隣のリオと呼ばれていた男、いや、少年は印象的な見た目をしている。肌は色白でベージュの耳が隠れるくらいの長髪に綺麗な青い瞳、美少年という言葉がしっくりくる。
どこの国の人だろうか?というか言葉が通じてるのはなぜ…?
「色々と疑問がありそうだね、まず最初に言っておくと俺達は地球人では無い、君達の言うところの、宇宙人というやつだ」
「…!」
宇宙人、気絶する前の記憶が蘇る。突如現れた謎のロボット。まさか、この人達が俺を捕まえた張本人?
蘇る記憶と最悪な想像をして震える折原に、オルカは慌てて声をかける。
「落ち着いてくれ!最初に言うべきだったな…あの黒いロボットは俺達の敵、君をあれから救い出したのが俺達だ」
「…っ!そうだったんですね…あの…ありがとうございます…あのまま連れ去られていたらと思うと…死ぬんじゃないかって…怖かったです……」
自分が助かったことに安心した折原は恩人に感謝を伝えながら涙を流した。
「あー!泣かせたなー、オルカがちゃんと説明しないからだよ」
「だからいまちゃんと説明を!…いや…その…ケント君?すまない、大丈夫かい?」
「す、すいません!大丈夫です、ちょっと安心したら涙が…」
「そ、そうか…落ち着いたら今の状況を説明したいのだが、いいかな?」
「いえ、もう大丈夫です…聞かせてください」
オルカは折原自身に起きたこと、今地球に起きようとしていることを教えてくれた。
話によるとオルカやリオ、そして折原を連れさろうとした黒いロボットは宇宙の遠い彼方、別の星から地球に来ていて、黒いロボットは地球を攻撃する準備のための偵察に、オルカ達はその偵察の妨害、そして防衛対象である地球の調査と防衛準備のためのに来ているらしい。
「なるほど…それにしてもなんで俺の喋る言葉、日本語が喋れるんですか?それに気絶してて一言も喋っていないのに、俺が日本人だと分かったんですか?」
「あぁ、そのことか。俺達は地球の調査の過程で言語についても調査するんだよ、君達の星はいろいろな情報を電波に乗せて放っているだろ?その情報があれば言語を解析するには十分、あとはこれをつかって自動翻訳しているってわけさ」
オルカは耳につけているインカムのようなものを指して言う。地球の皆様、知らない間に宇宙人にめっちゃ通信傍受されてますよ。
「それ、地球だと普通に犯罪ですよ」
「知っているよ、調査の中で法律についても調べたからね、でもどの国の法律にも、その法を「宇宙人にも適用する」とは記載されていないからね」
「なるほど、確かに」
そんな事想定して法律作らないよ。もしかして違うのか?他の星では宇宙人に対しても法律あったりするのですか?
聞こうと思ったがやめた、いつか法律を作ることがあったら記載してやる。「宇宙人にも適用する」って
「ってちょっと待ってください!地球を攻撃?防衛?地球は攻撃されているんですか?」
「いや、正確にはまだ攻撃されてはいない、だがいずれ大規模な軍隊が来て侵攻が始まるだろうな」
「そんな……!」
「だから俺達がこの星に来ているんだ、まだ準備中だけどね」
「そ、そういえばそうでしたね……なら安心なんですね?」
「それがな…ちょっと問題が発生してな…」
「問題…ですか…?」
オルカは困った顔をしながら「問題」の内容を教えてくれた。
地球を防衛するにあたって、地球への侵入許可、物資や防衛拠点のための土地の支援要請、地球に住む人達へ戦闘になる旨を通達する依頼など様々な手続きを行うため、地球の代表にコンタクトをしなければならないのだが…
「誰一人信じてくれないんですね…」
「そうなんだよ…ここ数ヶ月間メッセージを送り続けているんだが、「いたずらメールをするな」だとか「そんなもの存在するわけが無い」みたいな回答しか来なくてな…この前なんてちゃんとデータを揃えた上で地球で行われた大規模な会議をハッキングして直接交渉したんだが、結局データは捏造だとかいろいろ言われて全く信じてもらえなかったんだ」
5日前くらいに各国の首脳が集まってサミットやったってニュース観た気がするけど…まさか…ね。
「諦めてください…地球では宇宙人を信じている人の方が異常者扱いなので…」
「俺達もそうしたいんだけどな…」
「無視して準備始めちゃうのはダメなんですか?そりゃ多少は被害出るかもですけど、手遅れになるよりはマシなような…」
「それは出来ない、俺達は防衛対象の星の意向を汲む必要がある、それに守るのもタダじゃないからね」
確かに、守ってと頼まれていないのに勝手に守るのは筋が通っていない。自分は地球のことしか知らないけど、他の星の奴に守られるのを嫌だと思う価値観の星もあるだろう。
それにしても…何かが変だ、話に最初から違和感がある。折原は違和感の正体を聞いてみることにした。
「あの、すみません」
「ん?何か分からないところがあったかな?」
「いえ、話自体はわかったんですけど、1つ気になったことがありまして…てっきり俺はあのロボットとオルカさん達は同じ星から来ていて、敵対しているのかと思っていたのですけど、そうでは無いんですよね?一体何のために戦っているんですか?それに星を守るための組織って、まるで何度も星を守っているように聞こえるのですが…あなた達は一体…何者なんですか…?」
「あー、なるほど…そういえば名前以外の自己紹介をちゃんとしていなかったね、ケント君の質問の答えはね…そういう「仕事」だからだよ」
「仕事…ですか?」
「自分の能力と時間を対価に報酬をもらうから、表現としては仕事であっているよね?俺達は様々な星から集められ、星に対する侵略行為から防衛するために組織された、傭兵団の様なものなんだよ」
「星を守る仕事…」
「そう、この宇宙には数多の生命が住む星があって、その中には他の星を侵略し、自分たちの植民地にして資源や土地を搾取する存在がいる、それと戦うのが俺達の仕事だ」
星を守る為の傭兵団……宇宙人は本当にいて、数多くの生命の星があって、それぞれに人が住んでいる。そして、それを星単位で侵略する悪者がいて、それと戦うヒーローがいる。まるでアニメや映画の中の世界のようだ。
「…改めて自己紹介させていただくよ、俺はオルカ」
「僕はリオ!」
「この地球を守るために来た……
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