星の守り人 2話 救出劇

「_オルカ!見つけたよ!_」

「_本当か!?座標は?_」

「_オルカがいるところからはかなり遠い…日本っていうところの上空だよ_」

「_了解、急いで向かう!_」


 地球の遥か上空、宇宙で2人の宇宙人が慌ただしく動く。ここ数ヶ月地球を監視しながら探していたこの男たちの目標、敵を見つけたのだ。


「僕も出撃しないとね…サテラ!出撃するよ、僕は行くから今の位置で待機しててね」

「[了解しました]」

「さぁ、こっからが本番だよ」


 リオは先程まで乗っていた輸送機をAIサテラによる自動操縦に切り替え、自分の装備、白い金属に青い光のラインが特徴的な、頭から足まで全身を包み込む鎧の様なパワードスーツを装着する。


「出撃!」


 リオのパワードスーツが起動、背中のスラスターが点火され煌々とした青い光を放ち輸送機から射出、数秒で秒速3kmまで加速する。

 敵は地表から真っ直ぐに上昇いている。このまま宇宙に来たところで攻撃し鹵獲をしよう。リオは敵の通過予想地点に急行する。


「近づいてきてるね、サテラ、目標をスキャン」

「[スキャン開始…完了]」

「…!生体反応?これはまずいよね…」


 こいつは無人機のはず。もし中に人がいるのだとしたら…


「_オルカ、ちょっとまずいことになったよ_」

「_どうした?_」

「_目標の内部に生体反応があるみたい_」

「_まさか…地球人か?_」

「_地上から宇宙に向かっているところを見ても、ほぼ間違いないだろうね_」

「_これは厄介だな…_」


 今回の鹵獲の目的は分析だから、破壊しても良かったのだが、中に人間がいるとなるとそうはいかない。

 ここは宇宙、下手に攻撃をして宇宙に放り出されれば即死だ、そもそもこちらの攻撃の衝撃に耐えられないかもしれない。


「_とにかく武装を破壊して無力化しよう_」

「_その後はどうするの?_」

「_空気のあるところで解体して救助する_」

「_この宇宙にそんなところ…_」

「_格納庫の中だ_」


 オルカが提案した方法は敵機の武装を破壊後、自分たちの輸送機の格納庫に敵機を閉じ込め、空気のある格納庫内で中の人間を救助するというものだ。武装の破壊が不完全な状態で敵機を格納庫内に入れれば逆に自分たちの輸送機が破壊されてしまう危険も伴う。


「_リスキーだけど…とにかくやるしかないよね、そろそろ接敵するよ!_」

「_了解、こっちはあと3分で到着する_」


 リオのパワードスーツのヘッドアップディスプレイの望遠映像に、真っ黒で鳥のような形状の敵機が映し出される。その中には折原が閉じ込められている。



「一体どこまで飛ぶんだよ!!……クソッ………」


 あれからどのくらいたったのだろうか、数分?数十分?

 真っ暗な中に閉じ込められて時間感覚を失い、折原はいつ終わるかもわからない恐怖に耐えるために叫ぶ、しかしいくら叫んでも応答が帰ってくることはない。叫ぶことも諦めようとしたその時、事態が急変した。


「うぁあ!?今度はなんだよ!」


 先程まで同じ方向に飛んでいたロボットが急に方向を変えた、何度も何度も方向を変える、そのたびに折原は壁に叩きつけられる。頭が揺れる、気持ち悪い、吐きそうだ。それでもロボットは方向転換を止めない。

 何度も何度も壁に叩きつけられ、ついに意識を失ってしまった。


「もぉ!チョロチョロ動かないでよ!っていうか中身大丈夫なの?それ?」


 交戦を開始したリオは難しい戦いを強いられていた。攻撃が出来ない、本体を避けて武装のみを攻撃しなければならないが、敵機も高速で移動しているためなかなか標準が定まらない、とにかく距離を縮めるために更に加速、秒速十数kmで猛追する。


「_遅くなった!合流する_」


 オルカが合流した、オルカもリオと同様の白と青のパワードスーツを身に纏っている、武器が少し違うが、基本的な形は全く同じである。

 リオの武装はスナイパーライフルの様な長身の両手銃、オルカの武装は片手で持てるライフル型の銃。


「_狙撃で武装のみを狙うのは分が悪い、俺が近接戦で破壊する_」

「_了解、狙撃で追い込もうか?_」

「_いや、それよりも武装破壊後すぐ拘束できるように準備を頼む_」

「_頼まれた!サテラ、キャリアー持ってきて_」

「[了解しました、移動を開始します]」


 リオは先程まで乗っていた輸送機キャリアーを呼び出す。キャリアーは自動操縦でリオの元へと向かう。


「さてと、こっちも本気で行くぞ」


 リオの元へ合流するため、すでに秒速15kmまで加速していたオルカはものの十数秒で敵機に追いつく。

 オルカと敵機との距離が1kmを切ったところで、敵機の黒い翼から無数の青白いレーザーが放たれた、しかしオルカはスピードを落とすこともなくローリングで回避する。


「サテラ!目標の行動パターン分析、追い詰めるぞ!」

「[パターン分析……完了、想定パターンを表示します]」

「よし、GO!!」


 人工知能サテラが収集した戦闘データをもとにした敵機の行動パターン分析、敵の動きの予測がヘッドアップディスプレイに映し出される。

 オルカは想定パターンが武装破壊可能な距離まで近づけることを確認し、パワードスーツの高速旋回用の小型スラスターを起動、一気に敵機との距離を縮めていく。


「_オルカ、こっちはいつでもいいよ_」

「_了解、捕まっている人間が心配だ、一気に終わらせるぞ!_」


 オルカと敵機との距離は50mを切る、オルカの武装の性能ならほぼ外さない距離だ。


「さぁ、中の人間を返してもらうぞ!」


 オルカのハンドガンから青い閃光が真っ直ぐ敵の右の翼をめがけて放たれた、音の無い轟音が宇宙に響き渡る。敵機がバランスを崩した瞬間、もう一本の閃光が左の翼を破壊する。

 敵機、この黒いロボットの翼はメイン推進力兼武装、翼を破壊されてしまえば攻撃も先程のような高速飛行も出来なくなる。


「_リオ!急いで格納を頼む!_」

「_任せて!サテラ、格納庫内にエネルギーフィールド展開!目標を格納と同時に拘束して!_」


 翼を破壊され推進力を失ったが、無重力のため減速せずにそのまま飛び続ける。キャリアーのスピードをロボットの速度に合わせ、キャリアー後方のハッチを開け格納庫へ取り込む。


 ギギギギギ!!


 空気のある格納庫で音を取り戻したロボットがエネルギーフィールドに拘束され暴れる音が鳴り響く。


「怖!ってかうるさ!」


 リオは小型のハンドガンを持って格納庫に急ぐ。


「こいつかぁ…真っ黒だね……っと急がなきゃ、動力機関はこれだね」


 ロボットの胴体で青白く光る物体、動力機関をハンドガンで何発か撃ち破壊、それまで拘束の中で暴れていた敵が沈黙する。


「_オルカ…とりあえず終わったよ…_」

「_了解、帰還する…あとは無事でいることを祈ろう_」

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