第11話 社交界①
週末。
今日は待ちに待った社交界とうっきうきの妹とあまり乗り気ではない俺という状況だが行かないわけにもいかないので仕方なく行く準備をする。
父親と俺はスーツ、母親と妹は軽めのドレスを着て車に乗る。
運転手が車を運転して社交界のホテルに行く間はスマホをいじりながら暇をつぶす。
妹はお母さんと永遠にお喋り、お父さんは事前にホテルに着いているらしく一人寂しくイヤホンで音楽聞いてます...
イヤホンで音楽を聴きながらSNSを見ていると同じく社交界に参加する友達から連絡がきた。内容はホテルの前に人だかりがあるとのこと。
うーん、畜生が。
◆
ホテルに着いた。
駐車場の入り口には記者たちがたくさんいて車の中の俺たちに一生よくわからない質問をかけてくる。もはやゾンビだ。
おかげでホテルの目の前には着いているのに入れないという状況が15分ほど続いた。
まあその記者ゾンビを切り抜ければあとは楽ちんなわけで中に入るとまるで天国のような空間が広がっていた。
「それじゃあ私は受付をしているからそこで待ってなさい」
「いってらっしゃーい」
とお母さんが受付に行く。ホテルのエントランスには受付をする人、受付を済まして知り合いを待っている人と人がある程度たくさんいた。
「お兄ちゃん、あの人って…」
「あー、九条家の当主だね」
「よくネットとかで見る人だ…」
会場には奈良時代から続く祈祷の家系の者だったり、平安の陰陽師の末裔だったりと俺たちが霞むレベルの名家の数々が集まっている。
俺たちも名家ではあるらしいのだが始まりが江戸時代と比較的新しいため結構緊張している。過去に社交界でやらかしてお家取り潰しとかの前例があるからなおさらだ。
「受付終わったよ~」
とお母さんが戻ってくる。
「じゃあ行こうか」
受付を済ませた俺たちは会場に入り、各自好きな場所に移動する。
こういう社交界とかの集まりでは主催者が挨拶をした後はそれぞれで交流を深めるというのが通例だ。
「九条家当主の九条雅人です。本日はお集りいただきありがとうございます」
今日は九条家主催らしい。
こういう時は主催者のあいさつの後に各々のタイミングで挨拶をしに行くのが通説だ。
今日の主催は九条家。
国内で1,2を争うめちゃくちゃすごいだ。すでに九条家に挨拶をするために列ができている。祖語ぐらいのレベルで名家の中でもトップスラスなのだ。
すでにホテルにいたお父さんと合流して家族4人で挨拶に行く。
「本日はお日柄もよくこのような集まりに我が家を招待してくださりありがとうございます」
と親が挨拶をした後、俺たちもそれに倣って挨拶をする。
「湊です。招待してくださりありがとうございます」
「ありがとうございます」
「あぁ、間宮家の者か…
こちらこそ、今日はゆっくりしていってくれ」
と厳かな声で九条家の当主が口を上げる。
挨拶も終わり一礼して立ち去ろうとすると俺に名指しで呼び止められた。
「湊君といったな。
先日の戦いぶりを見たよ。これからも期待している。」
「あっはい、ありがとうございます」
◆
「ビビった~」
挨拶を終えて妹とビュッフェを取りながらつぶやく。正直、さっき呼び止められたときに一瞬心臓が止まった。
「私もお兄ちゃんがなんかやらかしたのかと思った」
「『湊君』って呼び止められたとき、一瞬心臓止まったわ」
としゃべりながらビュッフェでとったご飯を食べていると聞きなじみのある声が聞こえてきた。
「湊~、やっと会えた」
「綾人じゃん」
見覚えのある顔がそこにはいた。それと見覚えのない顔がある。
「そちらの方は?」
「俺の従妹」
「マジで?
めっちゃ雰囲気変わったね」
綾人の従妹とは何回かあったことがあるが久々にあったためあまりの雰囲気の違いで気づけなかった。
「もしかして結衣?」
「沙良ちゃん気づいてよ~」
と久々の再会に女子同士で盛り上がっている傍ら、俺と綾人はというと
「飯食った?」
「食った。めちゃくちゃうまい」
「鳥の照り焼きマジでうまいよ」
「ちょっと取ってくるわ」
「一緒に取りに行くか」
と、我らが男子は料理を取りに行く。
食べ盛りだからしょうがないよね。
「そういえば他には誰が来てるん?」
「結構来てるよ。ラインで聞く?」
「クラスの男子グルに投げればいいでしょ。
俺がやっとくよ」
グループチャットに書き込むと何人かが反応してくれた。
「いるっぽいよ。」
「なら探すか」
そして男子2人はクラスメイト探しの旅に出かけた。
一方女子はというと
「そのドレスかわいい」
「ありがとー、沙良のもかわいいね。
どこで買ったの?」
「デパートで買ってもらった」
「へぇ~」
ドレス等々のおしゃれ話で盛り上がっていた。
◆
結果的に言えば男子だけで7人、女子を含めたら16人と合流できた。
そして現在、俺たちは男女で別行動している。
俺たち男子は何か遊べるものはないかとホテルのいろんな場所を探索することになった。
女子はなんかスイーツを食べるとか言っていたが詳しいことはしらん。
「それで、遊べるものあった?」
「うーん、ないね。
というかこのホテル広すぎでしょ」
と綾人がぼやく。確かに広い。まじで迷子になるレベルで広い。
「どうする?戻る?」
「戻るか」
結果、10分もせず探索は終わった。
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