第18話 スタンピード②

刀が折れた。

それにもう刃毀はこぼれが厳しい。


刀が使い物にならなくなった。

近接の要が壊れた。だけぞ時間は無常に過ぎていく。


俺たちの絶望なんて気にせずモンスターたちは行進を続けている。

当然だ。


「まだ予備がある」


まだアイテムボックスの中に武器がある。

亜空間からすぐに武器を取り出す。取り出すモノを選んでいる暇はない。


「剣…」


実戦では使ったことがないが、刀を常日頃使っていたおかげで何とか使えることができる。そのまま近接攻撃を続行させる。


もうスタンピードに会ってから1時間は経っている。

未だに行進が終わる気配もなく、進行形で死にそうだ。


それにしても剣が使いづらい。

短刀よりも重たく、長い。当然使いづらい。だけどそんな贅沢なことを言っている場合じゃない。

剣でモンスターたちを叩き割っていたところ、


「やべっ」


気づいたときには遅かった。

モンスターの突進に対処しきれず後ろに吹っ飛ばされる。が、痛い。

剣も俺の手元から離れてどっか行った。


「内臓…」


とっさに剣で防御したおかげで致命傷にはなっていない。が、痛い。

痛みに我慢してすぐに立ち上がってまたモンスターを狩る。


わざわざ手元からどっかに吹っ飛んていった剣を拾いに行く暇はない。すぐに新しい武器をアイテムボックスから取り出す。


「槍か、一か八かやるか」


アイテムボックスから出てきた槍を2本に折る。

二刀流はやったことがない。というかやるつもりがない。


人生大一番のこの状況で今までやったことがない戦い方をやるほど俺はバカじゃない。

左側の『槍の柄』はいらないから捨てる。代わりに右側を使って攻撃を続行する。


モンスターはさらに強さを増していって魔法を撃っている2人もだんだん焦りが見える。魔法戦で焦りは禁物だ。

焦れば焦るほど魔法陣の精度が落ちていって威力が下がる。そうしたら敵の強さを誤認してさらに焦る。質の悪い悪循環だ。


「落ち着け。まだ対処できている」


「わかってる。だけど魔力がヤバい」


「…なるほど」


そりゃ15分もずっと最大火力で魔法を撃ったらそうなるわな。

とはいっても魔力を温存できるかと言われたらNOと答えるしかない。


「最悪だ」


「それってもしかして全滅ルート?」


「冗談言ってる場合か」


死が目前に迫ってきて嫌なほどに冷静になっている。

でも思考が冴えれば冴えるほど自分たちが死ぬ可能性が高く感じてしまう。


「湊、なんかいい案ないの?」


「今考えてる」


「なんか門外不出の必殺技とかないの?」


「そんなのあるわけねえだろ」


「俺はあるぞ」


「「は?」」


「幼いころに親に教えてもらったんだ。あれは今からだいたい7年前…」


「「今すぐ使え!!!」」



「わかってるよ。『ストーン』、『フレア』、『ウォーター』、『アイス』、全員シールド張れよ」


「了解」


「ちょっと待て、真也おまえ何やろうと…」


「どっかーん」


と真也が言うと魔法で生成した何かをモンスターの大群めがけて撃つ。

直後、謎の大爆発が起きて氷のかけらが全方位に散らばってモンスターの体を貫通させる。


「なんで今までやらないんだよ」


「魔力消費が激しいからあんまり使いたくない」


「そんなこと言ってる場合か。まだモンスターがいるんだぞ」


モンスターの数多過ぎじゃね?

少なくとも100体は屠ったのに行進は未だに健在だし、なんなら段々と下層のモンスターを相手しなくてはいけなくなっている。


「真也、もう何発行ける?」


「あと2発いける」


「ガチで魔力消費率ゴミじゃねえか」


「だから言っただろ」


さっきの爆発である程度かなりのモンスターが倒させていったが、まだまだ危機は迫っている。


「槍ももう限界か…」


さっきから使っている槍ももう各所ひびが入っていてもうすぐぶっ壊れるだろう。

さっきから片手剣、槍と来て次は何が出るのだろうか。


「トンカチ…、外れじゃねえか‼」


亜空間から出てきたトンカチを速攻モンスターに投げつける。

一応投げたトンカチがモンスターに直撃して1匹倒せた。


「次‼」


と取り出したのが『大鎌』…、大鎌!?


「…ハンマーよりかマシか」


大鎌を振り回してモンスターを一掃する。

だけど重量があるから使いづらい。力いっぱいぶん回すと面白いぐらいに敵が斬れていくが振り終わったときに大鎌のモーメントに引っ張られてしまう。

当然、大鎌に引っ張られている間は隙になってしまう。


隙になったところをモンスターが攻撃する。

火事場の馬鹿力とかいうやつで急いで大鎌を正面に持って行ってモンスターの攻撃を取っ手で受ける。


「あっこれまずい」


と思ったのもつかの間、取っ手が真っ二つに分かれてそのまま敵の斬撃が胸を切り裂く。


「湊?」


「浅いから大丈夫‼ それよりもモンスターがいきなり強くなった」


「やばい、魔法が効かない」


「くそっ、『ストーン』、『フレア』、『ウォーター』、『アイス』」


2回目の攻撃、急いで綾人に炎で止血してもらう。


「大丈夫か?」


「体のほうは問題ない、問題は武器の方」


「?」


「ラスト一振り」


「まじか」


「まぁ、大丈夫だろ。いつも通りやろう」


「わかった」


立ち上がってアイテムボックスから最後の武器を取り出す。


日本刀、それも結構長いタイプだ。


「折るか」


日本刀を地面に叩きつけて長さを調節する。

刃が真っ二つになって刀身が大体30センチになる。


「よし…」








覚悟は決まった。

後は野となれ山となれ

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