第13話 社交界③

「ヘイトスピーチしてないのにいわれるぐらいなら逆にガチでヘイトスピーチしてもいいのでは?」


「天才かよ

 次からそれやるわ」


「俺もそれやろうか考えたことあるけどやめた

 今までボヤレベルの炎上だったのが火柱上がるレベルになるのが目に見える」


「別に炎上しても良くない?」


普段から外側からの悪質記事を見ていると逆に自分が実際に記事通りのことをやったらどうなるのかが気になってくる。例えば...


「俺が実際に平民をバカにしまくったらどうなるんだろ」


「うわぁ…、楽しそ~」


「たぶん数少ない擁護派が白目をむくな」


「絶対おもろいじゃん」



俺たちがこんなにひねくれているのはマスゴミが原因だからしょうがないよね。というわけで今までは記者の悪行やニュースの内容について話していたが、今からどれだけ悪徳貴族っぽいことをやるのかという話で盛り上がる。



「やっぱ平民差別思想は外せないよね~」


「俺的にはいじめのほうがいいと思う」


「実際にいじめたら問題になるだろ。やっぱ模擬戦とかでボコボコにするのが一番いいだろ」


「俺、公式戦とかでボコって『たいしたことない』って言いたい」


「湊の今の実力ならいけるでしょ。現に前のトーナメント戦でボコってたわけだし」



こうなってくるともう止まれない。(ゲス顔)

ここからはいかに残虐なことをしようかという考えで盛り上がる。

いかに法律や倫理的にOKな範囲で出来るかなどという悪魔も真っ青な内容を話していると、いつの間にか社交界も終わりお開きになった。


というか倫理的とか言っていたけど実際に考えたら今までされてきた仕打ちを考えたら倫理もクソもないから別に倫理は無視してもいいんじゃないかと思えてくる。


「倫理を捨ててもいいんじゃないか?

 俺がされたことを考えると倫理とかどうでもよくなる」

 やい魔法も使えない雑魚坊ちゃんだの、不貞で生まれた[自主規制]だのって好き勝手言われてきたのを考えると殺意が芽生えてくる」


「お前関連の記事って大抵が倫理無視してるからなぁ」


「とりま最初に不適切発言連発して宣戦布告するわ」


「がんばれー、応援してるぞ」


「お前も参加するんだよ」


「わかってるって

 いやぁ、今日は眠れないなぁ」



社交界がお開きになりエントランスで駄弁っている間ですらもこんな話でいっぱいだ。不思議と周りの大人たちが俺たちの話を聞いて深くうなずいていたのは気のせいなのだろうか。


そんなこんなで今日の社交界は終わりとなりホテル前に止まっている車に乗りホテルを後にする。





「久々の社交界どうだった?」


帰りの車に乗っている間、お母さんが俺に今日のことを聞いてきた。


「めっちゃ楽しかった。最初の記者ゾンビさえなかったら100点だった」


「毎度のことだけどどうやって情報が洩れているんだろうね~」


「もう慣れちゃったよ」


「そっか、ところで明日から不適切発言するって本当なのかしら?」


と、突然のお母さんの質問に助手席に座っているお父さんがびっくりする。ついでにその隣の運転手もびっくりする。

そしてお母さんは話を続ける


「別に不適切発言とかをしてもかまわないけど高校生まで我慢しなさい」


「なぜに高校生?」


「高校生になったらもう大人でしょ?

 そういう言動をするのは自由だけど責任をちゃんと持ってほしいの」


「というか不適切発言云々には何も言わないんだ」


「私はそういうの別にいいと思ってるわ」


「アグレッシブだなぁ」


前でお父さんが「誰に似たんだか」とつぶやきながら冷や汗をぬぐっているのが見える。普通そうだろ。ふつうは自分の息子が自ら炎上しようとしていたらSTOPかけるのが常識よ。


「お母さんってもしかして常識が通用しないタイプの人?」


「いまさら気づいたのか。お前のお母さんは20年前からこれだ」


今までずっと黙っていたお父さんが汗を拭きながら口を開く。


「お前のそういう部分はお母さんに似ている。

 別に炎上するのは構わないが1人で炎上しろ。家族に迷惑をかけるなよ」


「お父さんはお母さんが非常識って思ってるかもしれないけど俺からしたらお父さんも結構非常識だよ…」


「それを言うなら私からしたらお兄ちゃんも十分非常識だよ」


と妹が口を開ける。

確かに自ら炎上しようとしているのは周りからしたら十分非常識なのかもしれない。というか普通はそうだ。


「沙良だけがこの家の常識人枠だな」


とつぶやきながら家に到着。その後は明日に備えてすぐに就寝した。





翌日、ウェブニュースを見ると俺たちが炎上していた。


『華族の集まりで間宮湊ら男子学生が「平民」発言を連発。またもヘイトスピーチか?』


だそうだ。またかと思いつつこのことをグループチャットに投げると1人が『実際にチクってみたらどうなるのか気になってた』などと発言した。


爆笑だった。

正直笑うしかない。別にチクることには誰も怒ってない。というかこういうことは貴族間では結構やる。冗談半分で偏向報道をゴシップ誌やネットニュースにチクってみて反応を楽しむというもの。


俺も昔、スマホを買い与えられてすぐにやってみた。

その時に友達と自分たちのあることないこと言ってそれに振りまわれているマスコミを見て笑っていた。


好奇心は猫をも殺すっておいうけどさ、子供って残酷だよね。



あれっ?

使い方間違ってるっけ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る