第12話 社交界②

社交界会場に戻ったら親にしこたま怒られた。

現在俺たちはあんまりウロチョロしないってガミガミいわれている。

「まったく、好奇心旺盛なんだから」と怒っている反面呆れている親、それを「まあまあ」となだめる周りの大人たち、反省しているふりをする男子たち、それを遠目でクスクス笑っている女子たち。


俺はというと


「まあいいじゃん、子供のしたことなんだからさ」


と、お母さんをなだめている。そしてついでに「そんなにカッカしちゃったらせっかくの奇麗な顔が台無しですぞ」って言おうとしたら


「それはあんたが言うセリフじゃない!!」


と余計に怒られた。調子に乗ったのがまずかった。





「いやぁ、怒られちゃったね~」


「今日は雷が思ったよりも降らなくて助かった」


「いいヘイト誘導だったよ、湊」



怒られた俺たちはというとさっきとは打って変わっておなしくなっている。さすがに2回も怒られたくはないし、さっきの探索でホテルには面白いものがないこともわかってしまったので大人しくご飯でも食べてます。



「あー暇だー」


「それな、ちょっと前のトーナメント戦の感想戦する?」


「いいね、やろう」


「トーナメント戦の感想?

 とりま湊のメタから話すか…」


「俺の目の前でメタの話すんな」



話は前の戦いの感想戦になっていく。

前の試合の感想戦となって最初に出てくるのがやはりというべきか俺の戦い方のメタだ。というか俺の戦い方のメタを俺の目の前で話しても意味ないのではないか?とは思いつつ話に参加する。



「というか湊ってさ、なんで近接戦闘しようと思ったの?」


「うーん、なんとなく?

 無属性魔法やっても成長できないなぁって思ってた時にネットで調べた魔法剣士がはまった感じ」


「お前の場合は魔法剣士どころかナチュラルに剣士だけどな」


「人間の剣士って戦ったことがないからあれの対策結構きついんだよな」


「わかる。ゴブリンをやるときよりも全然きつかった」


「現状出ている湊対策が広範囲の魔法攻撃と近接攻撃のマッチアップしかないのごみすぎる」


「お前らが近接戦闘できるようになればいいじゃん。

 現に綾人は近接攻撃を使うようになってるぞ」


「近接やるよりは魔法覚えたほうが楽だし…」


「それはそう。

 近接戦闘をできるようにするっていう労力をかけるリスクに対するリターンがお前に勝てるようになるしかないのがヤバすぎる。それにもし俺が近接やってお前に勝てるようになっても他のやつらに遠距離攻撃でメタ張られて負けるだけじゃん」


「現状やれることが各自今まで通りの鍛錬だけなんだよなぁ」


「えぇ~、近接やろうよ。俺、対近接の練習相手がいなくて困ってるんだよね」 


「それが狙いか」



現状俺のメタを張る方法が、近接攻撃をできるようになると遠距離攻撃で何とかするの2種類しかない。この状況でみんなはこれまで通りの遠距離攻撃をやるのが普通なんだけどなぜか綾人が近接攻撃を取ったことで俺自身が対近接しないといけなくなっちゃったっていうのが現状だ。

いやぁ、綾人が特異点すぎる。なんで今までの魔法を伸ばすやり方じゃなくて近接のほうに手を出したのか理解できない。それを言うならいきなり近接できるようになろうとか言い出した俺も特異点ってことになっちゃうんだけど...



「ともかく今のところは湊の近接さえどうにかすればみんな大会で優勝できるチャンスはあるってことでしょ?」


「そうそう、今まで通りやればなんとかなると思う」


「入賞は俺たち1組で独占だもんなぁ」


「わかる。平民には手も足も出ないって感じ」


「出たよ差別表現、週刊誌にチクっちゃおう」


「逆に差別表現じゃない言い方ってなんだ?一般階級の方々とか?」


「明確な表現がなくなっちゃったからなぁ」


「50年前ぐらいは平民と華族って感じで階級分けされてたのに差別がなんだのってことで全部なくなっちゃったからなぁ」


「今じゃぁ華族っていうだけで炎上だよ。つらい世の中よ」


「おっほぉ~、実際に燃えた人が言うと説得力が違うねぇ」


「黙れ」



まあ煽ったり煽られたりしているがここにいる人たちは全員何かしらニュースにされているからかなりメディアにストレスと恨みがたまっている。かくいう俺もちょっと前に記者の質問にうるさいって返しただけで『公共の場で暴言』なんて書かれてプチ炎上した。



「それを言うなら湊だってトーナメント戦でいろいろ言われてたじゃんじゃん」


「は?俺が?」


「あ~、なんか書いてあってよ。

 『歴代続く魔導士の家系として恥ずべき戦い』って」


「なにそれ受ける。そんなこと書かれてたの?」



スマホで調べてみるがホントに書かれていた。

前まで散々華族は現代の平等を基本とする社会に害する制度とか言ってたくせに気に入らないことがあれば『代々続く家に失礼』とか矛盾いいところだろ...



「こういうのはいちいち気にしてるほうが負けよ」


「それはそう」



ほら見ろ、結局マスコミ叩きが始まった。

やっぱりこういう集まりでメディアの批判が出るのは通例なんだろうね。普段から俺たちが集まると大抵この話で持ち切りになってしまう。

というかこんなに言われるメディアが逆にごみすぎる。なんでこんなに糞記事を書くんだろうか。

結局金かなぁ。やっぱ上級階級に対するヘイトスピーチって稼げるんだろうな。

というか特定への攻撃的な内容全般がお金になる気がする。

うーん、やっぱり人間って残酷だなぁ。


そんなことを考えながらご飯を頬張る。

まだまだ夜は始まったばかりだ。


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