中学生編

第2話 入学初日

どうも、中学生になった俺です。

魔法に興味を持ってから10年経って今も楽しく魔法を練習しています。

とはいっても自分自身はエンジョイしているが周りからの声は全然楽しくない。


まあ、江戸時代から続く魔術師の家系から出てきたのが火も灯せない糞雑魚ナメクジだったらそういうこと言われるよね。まったく、世間の声は厳しいですよ。


今はこんな感じで飄々としているけど昔は結構考え込んじゃったりと大変だったよ。マスコミとかのネットの声はうるさいし、他のそういう家系の才能ある人たちを見ると自分ももしあんなだったらって考えちゃったりして子供ながら病んじゃうこととかしょっちゅうだったよ。


とはいってもそれは昔の話。

今はそんなの気にしない糞強メンタルの持ち主に大変身。


いやぁ、男ってのはね。ある一定の年齢になると悪役にあこがれるわけよ。

想像してみてよ。ただでさえ名家が嫌われているこの時期に今まで散々ディスってた世間に俺が最強になって見返す姿。


それはさぞかし気持ちがいいのだろう。




それはそうと今日から俺は中学生。当然、青春を満喫したいしほかにもやりたいことがたくさんだ。友人を作ったり部活に入ったりとやりたいことが盛りだくさん。


やっぱ1度きりの学生なんだからさ。楽しみたいじゃん。




ということ俺の学校生活せいしゅんが始まる。


「ネクタイ結ぶの下手だなぁ」


とお母さんに言われながら玄関でネクタイを結んでもらう。



「ありがと、それじゃあ行ってきます」


「私たちは後で入学式見に行くからね」



今日は登校初日。これからの学校生活に期待し胸を膨らませながら門をくぐり抜けた。





学校のクラスは1から6組に分けられていて、1組が名家の跡取りだったり大企業の2代目だったりのいわゆる上級国民って言われている人のクラス、他の2~6組はその他の生徒が在籍している。ちなみに1組に入る権利を持っている子でも2~6組のクラスに入ることは可能だ。

ちなみに俺のクラスは1組。特に理由はないけどなんとなく他のクラスの子より1組の同じ身分の人のほうが友達ができやすそうという理由だ。



教室につき自分の席に座る。

自分の名札が書かれている机に着席し、そのままスマホを弄る。周りにはぽつぽつとすでに生徒が座っている。本来なら「はじめまして」からの連絡先交換が始まるだろうがここは名家やその他お坊ちゃん、お嬢ちゃんが集まる1組。すでに連絡先を好感していたり、交流があったりと顔見知りがほどんどなのだ。



「久しぶり」


「おう、久しぶり」


「昨日のニュース見た?」


「どのニュース?」


「名家叩きの」


「多すぎてわからん」


「それな」


「「アッハッハッハ」」



そんな顔見知り同士で必ず盛り上がる会話デッキが存在する。それはマスコミ叩きだ。

近年、名家どいう制度を解体するべきという世論が強まっていて当然その矛先は俺たちに向かう。

やれやったこともない豪遊生活だったり、犯罪のもみ消しだったりと言われ放題なのが俺たち名家出身の現状だ。


つまるところ、俺たちは全員ネットアンチってわけだ。当然俺も、テレビの取材などはほとんど受けたことがない。


「おや、そこにいるのは自分が”属性魔法を使えないからって雇っている使用人に暴力をふるっている”間宮君じゃありませんか」


「そちらこそ”普段から軽犯罪を犯しまくっているけどいつも親のコネを使っても罪をみ消している”九条君ですよね」


「よく知ってらっしゃる」


「噂はネットとかで耳にしますから」



こんな風にネットで言われていたことを最初に追加して名前を呼ぶのが最近の流行りだ。ちなみにちょっと前の流行りは(本名)様と呼んで謙るっていうネタがはやった。

.......こう考えると歳が進むごとに皮肉が酷くなっているような気がする。




「はーい、チャイムが鳴ったから着席~」


始業のチャイムが鳴り、担任が教卓に上ってくる。


「今日からお前らの担任をやる黒川だ。よろしく」


隈が酷いいかにも徹夜明けのような男はどうやら俺らの先生らしい。その後は先生に学生証や教材その他を配り時間が過ぎていった。


「じゃあ授業教材も配ったわけだし、今から入学式の流れを説明するぞ。簡単に言えば自分の名前が呼ばれた時と国歌斉唱だけ立って、それ以外は立つな。

あれだ、お前らの小学生の卒業式の簡単バージョンだ」



それだけ?とは思いつつも、変に難しくてもめんどいし逆にこのくらいがちょうどいい。しいて不満点を挙げるとするならば退屈だってことだろう。





「はぁ~、終わった」


退屈な入学式が終わり担任の一言で今日は下校になった。時刻はまだ午前10時、今から帰っても特にやることがないので同じクラスになった人で遊びに行くことになった。



「それでどこ行く?」


「カラオケ行こうよ~」


「30人でカラオケはめんどくさい」


「ならスポッチェは?」


「どっちかっていうとボウリングのほうがいいでしょ。初日から運動して制服に何かあったらやだ。」


「じゃあボウリング行くか。用事があっていかない人いる?」


「ないよ~」


「大丈夫ー」


結局ボウリングに行くことになった。




「湊じゃん。久しぶり」


「あ~久しぶり」


「ボウリングいつぶり?」


「わからん。最後に行ったのが多分小5のゴールデンウイーク」


「めっちゃ久しぶりじゃん」


「ガーターばっかでも許してくれ」



結局、3ゲームやってスコアは240、糞雑魚だった。




「久しぶりだからこうなってるの。本来なら300越えだから」


「負け惜しみ乙」


ボウリングを終えた後、フードコートで某Mのジャンクフードを食べていた。名家の跡取りというのもあって初めてハンバーガーを食べる人もいてかなりうるさいが、自分たち以外も学生が多くどこもかしこも騒がしいのであまり目立ってはいない。

そういう俺はというと初めてのジャンクフードを食べるお嬢様たちの反応を楽しみながら期間限定のシェイクを飲んでいる



「私、こういうもの初めて食べた」


「私も~」



ジャンクフードを食べたことがないってどんだけお嬢様なんだって思うかもしれないが、ここにいるのは上場企業の取締役の娘だったり、昔から続く名家のあととりだったりとそういうレベルなのでしょうがない。



「シェイクうめぇ」


「わかる。なんでこんなに旨いんだろうな」



このクラスでジャンクフードのおいしさを語れるのが数人程度なのだからレベルの高さがうかがえる。まあレベルと表現するのも変な感じではあるけどね。




「そういえば湊、お前今でも無属性魔法やってるのか?」


「うーん、やってるんだけどね~」


「けど?」


「最近いまいち成長の実感が湧かなくなった」


「あぁ~」


「何?これって誰しも通る道なの?」


「誰しも通る道っていうか...」


「そもそも魔法の熟練度って必ずしも1次関数的じゃないでしょ?

だから基本はある程度の熟練度を極めていったら他の魔法を新しく学ぶわけよ」


「だけど湊は無属性魔法しか学べないから他の魔法を学べないし必然的に成長感じなくなるってわけ」


「まじか。もう俺に学べる魔法ないよ」


「成長は感じなくなってるかもしれないけど毎日練習したらその分ちょっとずつ熟練度が上がるから、辛いかもしれないけど今まで通り頑張っていくしかないよ」


「それか魔法以外に何か新しく学ぶとか?」


「魔法全盛期のこの時代に魔法以外を?」



3歳から続けてきた魔法の練習も今は壁にぶつかっている。とはいえ魔法全盛期のこの時代に魔法以外を学ぶメリットが自分の中ではあまり考えられない。


どうしようかと考えながらシェイクを飲み干した。

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