第26話 桜杯④

「そういえばネット見た?」


「………今の発言でなんとなく察した」


「何?久々の炎上?」


「大正解。湊くんが大炎上でーす」


「うーん。どんな内容で燃えてるの?」


「『お前は決勝にいるべき人間ではない。凛様の方が相応しい』とのことです」


「凛って誰?」


「初戦にいた配信者」


「あぁ〜」


「思い出した?」


「あの雑魚のこと?」


「「ハイストップ‼︎」」


「この会話が世に出たらまた炎上するって」


「はいはい分かったよ」


と話を切り上げて仮想ステージの方へ移動する。周りの選手はピリピリし始めていよいよ決勝か という雰囲気だ。


「さてと、勝ちますかね」


仮想ステージに入って深呼吸をする。

ワクワクしている心を落ち着かせて今から始まる試合に集中する。


「それでは決勝戦を始めます」


というアナウンスとブザーを聞いてすぐに動く。


予選の大人数の試合と違い決勝は10人による少数のバトルロワイヤル戦ということで、最序盤から交戦する。


「まぁ、相手は選ばせてもらうけどね」


試合が始まってすぐにBブロックの勇者くんに狙いを定めて全力ダッシュ。


「遊ぼうよ?」


「は?試合中だぞ」


「マジメだなぁ」


ってわけで最初は勇者くんで遊んでいることにした。というか俺が一番戦いやすいのが彼だからしょうがないよね。


自分が刀を振って勇者くんが刀を盾で防ぎ反撃してくる。


「おっそ」


当然ジャンプでかわしてそのまま位置エネルギーを利用して攻撃を仕掛ける。


まずは刀を投げる。その後に続いて踵落としを決める。


そんなこんなで勇者くんを追い詰めていると横槍が入った。左から魔法の攻撃がきた。


当然シールドで防御。ぶっちゃけ痛くも痒くもないのでそのまま勇者くんに狙いを定める。


「ビーム」


「魔法⁉︎」


「嘘に決まってんじゃん」


咄嗟にシールドを展開した隙に腹部に蹴りを入れる。いくら仮想ステージとはいえ痛みはちゃんとあるし、仮想とはいえ仮想のダメージがちゃんと入る。


一瞬悶絶したような顔をして体制が崩れる。

こうなれば後はトドメを刺せば終わる。


「『天使の息吹』」


そう呟くと勇者くんの反応速度が急に上がった。そしてそのまま反撃に出る。


刀で受けるが勢いを殺しきれずに後ろに飛ばされる。さっきの蹴りのダメージもいつの間にかなくなっている。


「聖魔法…ね」


メカニズムはわからないが一説によると神様に選ばれる、見染められると聖魔法を使えることができるようになるらしい。


「いいなぁ」


とないものねだりをしても仕方がないので気持ちを切り替えて攻撃を続ける。

正直な所、こんな実力で聖魔法を使っても別に?というのが俺の感想なのだが周りからしたら聖魔法自体が崇高なものらしいので会場は大盛り上がりだ。


聖魔法を使った斬撃や身体強化で攻撃してくるけれど普通に対処できるから問題ない。思ったよりも強くないしつまらなかった。


「つまんないからもういいよ」


「なっ⁉」


「じゃあね」


といっても腹に蹴りを入れる。バキッという音が鳴って勇者君が吹っ飛んでいった。

今頃彼は肋骨が折れた痛みが仮想ステージによって再現されているのだろう。

当然動けるはずがない。


「さようなら」


といって刀を振り下してまずは1キル。

すぐに辺りを見回すとすでに何人かは脱落しているらしく、人数が減ってきている。


「乱戦している所に乱入するか…」


というわけでステージ中央で行われている合計6人による乱入する。

魔法による攻撃や斬撃による攻撃でステージはめちゃくちゃだ。


「やっほ、混ざりに来たよ」


「湊じゃん。勇者くんは?」


「倒した」


「思ったよりも遅かったね。ぶっちゃけ初撃で倒したものかと思っていた」


「ちょっと楽しんじゃってね」


「置い2人とも、戦闘中だぞ」


「はいはい」


乱戦中にもかかわらず普通に会話している。よく3人で三つ巴の模擬戦をしながら雑談しているため、ぶっちゃけ言うと日常だ。

まあ、周りの人からしたらびっくりだよな。現に乱戦に参加している他のやつらは普通に怪訝な目で俺たちを見ているし。


「よしっ、それじゃあ真也にはリタイアしてもらおう」


「はぁ?そうなる前にお前を殺す」


「口が悪いなぁ」


まずは狙いを真也に定めて攻撃を開始する。とはいっても周りも当然俺のことも攻撃してくるだろうし、正直なところを言うとうまく真也に攻撃できない。


「真也?」


「何?」


「一対一で負けるか、乱戦で負けるか。どっちがいい?」


「乱戦がいい」


「わかった。一対一でやるね」


「お前耳付いてんの?」


といったのもつかの間、シールドを展開して真也に向かって飛ばす。


「は?」


シールドによって乱戦から真也が弾き出された。

こういうシールドの使い方は初めて見るのだろう。そのせいで反応できなかった。


「そういうシールドの使い方は初めてだよ」


「いいでしょ。新技」


「いうほど新技か?」


二言三言会話した後に戦闘を開始する。

相手はすでに俺のことを知っている相手だ。それに強い。


さっきまでの相手よりかは苦戦するだろう。

まあ、そういうの逆に燃えるから個人的には好きだ。


「期待外れとかはやめてよね」


「そっちこそ」


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