第25話 桜杯③
次のBブロックの試合は一人の男が圧倒していた。
「こいつ誰?」
「最近話題の勇者君」
「全然知らん。配信者?」
「そうそう、なんでも他の配信者がピンチのところにさっそうと現れて一気に有名になったらしい」
「へぇ~、興味ないや」
珍しい聖魔法を使って敵をなぎ倒しているのを見ながら自販機で買ってきたお茶を飲む。テレビの中では剣と盾を持った如何にもといった格好の男が観客に向かってファンサービスをしている。
「この笑顔をへし折りたい」
「うわぁ~、趣味悪すぎ」
Bブロックも決着した。
次のCブロックは綾人が出るブロックだ。すでに綾人は準備万端といったで雰囲気で控室でストレッチをしている。
「勝って来いよ」
「もちろん」
といって控室を後にする。
せっかくなのでテレビじゃなくて直で観戦することにした。
控室を出て通路の奥にある階段で上に上る。
そして関係者しか入れない仮想ステージから一番近い場所で綾人の試合を見ることにした。
「どんな感じかな~」
と呟きながらステージに目を向けるとちょうど試合が始まる直前のようだ。
綾人もしっかりいる。
『それではCブロックの試合を開始します』
というアナウンスが響き渡り観客席からは歓声が上がる。
ブザー音とともに試合がスタートした。
◆
試合が始まった。と思ったらすぐに綾人が仕掛けた。
「『ファイア』+『ウォーター』」
綾人が放った魔法は高速で敵に突っ込んでいき爆発した。爆発に直撃した1人と爆風で場外に飛ばされた3人の合計4人がアウトになった。
「しょっぱなから飛ばすねぇ」
最序盤からの大技に仮想ステージにいる他選手もビビっている。
こうなるとAブロックと同じで一対多数で標的にされてしまう。
「『サンド』+『ミスト』」
まあ綾人も最初から1対多数の状況になることぐらいは理解しているだろう。というか綾人の狙いは自分に敵を引き付けることなのかもしれない。
現に標的にされて囲まれている所に煙幕を張っている。煙幕のせいで誰が綾人か認識できずに同士討ちになっている状況だ。
「人間焦ると上と下を疎かにするよね…」
実際は綾人は煙幕の中に入っていない。煙幕の上に飛んで同士討ちの流れ弾が当たらないように回避している。
「『ミスト』+『ウォーター』」
空中に浮いている綾人が煙幕の中に水分を混ぜまくっている。
こうなってくるともう煙幕の中にいる人間は全滅確定だろう。
「『サンダー』」
そう呟くと煙幕の中で紫色の閃光が駆け巡り、まるで雷が落ちたような音とともに10人単位で脱落した。こうなってくるともう止まらない。
水属性に岩属性、雷属性とすでに3種類を見せびらかしている。
見せびらかしたおかげで周りは距離を取る動きだ。
そんな中、1人が綾人に魔法を放った。
綾人は当然のごとくシールドで防御、そして反撃する。
「おぉーすごい」
加工して砲弾のようになった岩を綾人は飛ばすが男はシールドで防御するどころか氷を放って相殺した。
これはもしや……と思ったのもつかの間お互いに最高火力の魔法を放ちまくる大怪獣バトルが勃発した。
◆
「『アステロイド』、『プラズマ』、『海坊主』エトセトラ………何であれだけ放って魔力切れにならないんだろうね」
1vs1の勝負は熾烈さを増していってすでに流れ弾で2人以外は脱落している。
バトルロワイアルだというのに蓋を開けてみれば一対一の決闘だ。
「でも綾人が圧してるね」
魔法の威力は五分五分、いや相手のほうが若干強いが手数の多さで綾人が勝っている。流石は全属性持ちだ。
「そろそろ終わるかな?」
試合を見ながらそう呟くと綾人がとどめを刺してきた。
「『ノヴァ 』」
「『プロメテウス』」
負けじと敵さんも最大火力で対抗してくる。
全ての属性を融合させた『ノヴァ』と原初の炎こと『プロメテウス』。どっちも世界最高レベルの魔法だ。使える人間が数人いるかどうかのレベル。
「魔法は良いねぇ」
なんて思いながらステージを見る。魔法の閃光が治った仮想ステージには綾人だけが立っていた。
「ノヴァに火力勝負で勝てっのは酷か…」
関係者用の観戦場所から控室に戻る。
控室にはついさっきまで仮想ステージで戦っていた綾人が一足先に戻っていた。
「お疲れ」
「生で見てたの?」
「魔法は直に見るに限るよ」
「それもそうだな。で、『プロメテウス』を喰らってみてどうだった?」
「あれ凄いね」
「それだけ…?」
取り敢えず俺と綾人は初戦突破というわけで机にあるお菓子を食べながら残りのブロックを見ながら時間を潰すことにした。
◆
結果を言うと、初戦を突破したのは
Aブロック…俺
Bブロック…勇者くん
Cブロック…綾人
Dブロック…真也
Eブロック…知らん配信者
Fブロック…クラスメイト
Gブロック…知らん配信者
Hブロック…知らん配信者
Iブロック…クラスメイト
Jブロック…知らん配信者
の合計10人だ。
この10人が決勝でバトルロワイヤルで戦うことになる。
「真也〜、ブロック突破おめでとう」
「おう、お互いな」
「控室で見てたよ。真也強いな」
「は?お前ら同じ控室?」
「うん」
「いーなー、俺も呼べよ。俺なんてさっきまでずっと1人だったんだぞ」
「笑える」
決勝前、出場する人たちが集まっている。
真也と会い決勝が始まるまで時間を潰す。
決勝が始まる時間まであと少しだ。
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