第30話 不正呼ばわり

「ほんで、どんなこと言ってたの?」


「特になんも」


「………そう」


クラスメイト曰く、昨日の昼休みに教室に来て「湊くんいますか?」って言っただけらしい。うーん昨日の俺グッジョブ。

これで昨日の学校に俺がいたら絶対に面倒なことになっていた。


「まぁいっか」


「よくねえだろ。加害者と被害者だぞ」


「ちなみに俺は?」


「加害者に決まってるだろ」


「ひどいなぁ、炎上してるのに加害者呼ばわり?」


「加害者だから炎上してるの」


そうこうしているうちに授業が始まった。

昨日は自分の意志でサボったからしょうがないんだけど1限分の授業を飛ばして受けるのってめちゃくちゃわかりずらいね。俺たちがカラオケにいる時に学んだ内容を平気で出してくる。


「むっず」


「昨日サボったのが悪い」


「それはそう」


その後も何とか授業についていき午前中の授業が終わった。





「腹減った」


「湊、購買行こうぜ」


「いいよ」


と購買でおにぎりとかを買って教室で食べる。

最近は弁当を家から持ってこなくなった。その代わりに学校でご飯を買ったりする。

ちなみに俺が購買でよく買うのが唐揚げおにぎり。コスパ最高だし普通に旨い。


そんなこんなで午前中に表皮下カロリーを取り戻すべく飯を食べていると教室のドアからあんまり見たくない人が現れた。


「間宮さんっていますか?」


すぐに体制を低くして目配せする。

クラスメイトは俺の意図を理解したのか瞬きで答えてくれる。


(どっかいったって言ってくれ)


(任せろ)


(こいつ、直接脳内に……)


そうしてクラスメイトの一人が


「湊ならどっかに行っちゃったよ」


「ではそこにいるのは誰なんですか?」


うん、普通にばれてた。

仕方ないので飯を食べるのをいったんやめてドアのほうに行く。


「ちょっと来てくれる?」


「飯食ってる最中だからちょっと待ってくれる?どこに行けばいい?」


「それなら鍛練場に来てほしい」


「わかった」


そう言い机に戻る。


「どうしたの?」


「鍛練場に来いって」


「告白?」


「なわけねえだろ」


そう言いながらおにぎりを食べ終える。ぶっちゃけ行きたくないんだよなぁ。


「これってバックレるのあり?」


「なしだろ。はよいけ」


そういわれてしぶしぶ鍛練場に出かける。

鍛練場にはすでに何人かいる。その中には大会で戦った凛もいる。


「来たけど、何?」


「もう一回戦ってほしい」


「は?なんで?」


「理由はないよ。ただ間宮君ともう一回戦いたくなっただけ」


と言われた。これはどう返すのが正解なんだろう。正直なところを言うと、こいつとは戦いたくない。理由は戦っても楽しくないから。

やること成すことに楽しさを求めるのは当然だよね。


「やだ」


「なんで?」


「めんどいから。それだけなら俺帰るから」


「おい待てよ」


そういって教室に戻ろうと引き返すと取り巻きが呼び止めてきた。お前誰?という疑問を心の底にしまいながらそのまま立ち去る。


「不正で優勝して嬉しいか?」


取り巻きAがそう言って肩を掴んできた。

俺からしたら意味が分からない。なんで公式大会なんかで不正なんでしないといけないんだろうなんて考えつつ立ち止まる。


「不正って何?」


「お前が賄賂送って九条に勝たせるように言ったんだろ」


「綾人に?そんなわけないじゃん」


「とぼけんなよ。これだから金持ちは嫌いなんだ」


「お前らこそ勝手に妄想したこと喚き散らてキモイよ。これらから貧乏人は」


「は?」


「あれ?もしかして図星だった?」


「お前ボコボコにしてやる」


「頑張ってね~」


これ以上話しても無駄だと思ってその場を後にする。

ぶっちゃけいうと綾人が不正に加担していると思われていることにムカついてはいるが心を落ち着かせて何も言わないようにする。


「はぁ~だる」


そう言いながら教室に戻る。


「というわけなんですよ。ムカつかね?」


「よくあることでしょ。慣れっこよ」


「俺も別にいいんだけどさ、綾人が賄賂を受け取ったって話になってるのがムカつくんだわ」


「俺は気にしてないぞー」


「お前が気にしなくても俺が気にする」


特にあの取り巻きAがムカつく。

それにあの取り巻きAが言った途端に後ろでそうだそうだって言い始める奴らにもムカついている。


「次の試合でボコボコにする。何ならなぶって殺す」


「それまた炎上するよ」


「別に炎上してもよくね?」


「まぁ本人がそういうなら……」


2ヵ月もあとの次の試合のことを考えながらスマホをいじる。そうこうしているうちに昼休みも終わり、午後の授業が始まった。




「終わった~」


「帰りにスタバ寄らね?」


「いいよ~」


そう言い学校を出る。

学校を出る途中で変な目で見られたが気にしない。子供の頃からマスコミにいろんな目で見られていたからもう慣れっこだ。


というか日頃からあることないこと書くような連中よりも変な目で見るだけの連中のほうがまだましだ。


「湊~、なんかまた燃えてるけど大丈夫そう?」


「どんな内容?」


「華族の息子が他生徒に貧乏人呼ばわりだって」


「情報の流通速度早すぎじゃね?」


「ちなみに動画付き」


「まじ?うけるんだけど」


今はどんなに燃えてもいい。というかネットで色々言われても俺自身はぶっちゃけどうでもいい。


そう思いつつ新作フラペチーノを飲みながら下校した。



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