第28話 桜杯⑥

魔法の嵐を抜けた先には杖を構えている綾人の姿があった。


「それは違いますやん」


と言ったのもつかの間、綾人が魔法を放つ。急いでシールドを張って、ダメージは抑えた。


ここで行かなければ一生綾人にペースを握られてしまう。

ノヴァを受けきった瞬間、前方にシールドを飛ばしながら綾人に近づく。


ただシールドを飛ばしても綾人はすぐに対処して次の魔法を俺に向けるだろう。そうさせないために2枚目、3枚目とシールドを飛ばしまくる。


「『※菴ソ縺?◆』」


すぐに綾人がまた魔法の嵐を降らす。

俺が飛ばしたシールドも嵐にのみ込まれて消滅してしまった。だがチャンスだ。


恐らく魔法の嵐を降らしている間は綾人も俺のことが視認できていない。

俺は魔法の軌道で何となくの綾人の位置がわかるが、綾人は絶対に俺の位置がわからない。嵐を突っ切って綾人に近づこうとするとシールドを使ってしまうため綾人も魔法の軌道が不自然な所に俺がいることをわかってしまう。


「ならやることは1つだな」


逆に言えばシールドを使わずにこの嵐を抜けることができるのならば俺は綾人に勝てることができる。正直言って無理に等しいがやるしかない。


「ふぅ」


一息入れて嵐の中に走る。

そこら中に無差別に魔法が飛んでくる。躱すのだけで精一杯だが頑張って進む。

避けて避けて避けまくってついに嵐を抜けそうになる。


「よし」


そう言い嵐の外にシールドを生成させて嵐の中に突っ込ませる。


一瞬。綾人が何かに気づいたのか目を見開くが、気づいたものは俺の囮だ。

そのままシールドを嵐の中で突っ切らせると見事にシールドの方向に杖を向けた。


「チャンス」


そう呟いて嵐をシールドと同じタイミングで抜ける。

綾人はシールドに魔法を放つが俺はそこにはいない。

そしてそのまま綾人に近づいて刀を振る。


「マジか」

「そっちこそ」


間一髪杖で防御されたが大丈夫だ。まだ俺の間合いの中に綾人がいる。


すぐに2撃目、3撃目と攻撃を続ける。綾人もこの距離なら魔法を使えない。さっきの自爆覚悟のノヴァも今度は対処できる。あとは綾人に単純な近接戦闘で勝つだけだ。


綾人も綾人で杖をやりに変形させて対処してきている。

恐らく近接戦で対処しようとするつもりだ。だが近接戦闘の腕なら俺のほうが上だ。


「くそっ」

「俺の勝ちだ」


そういい刀を綾人に突き刺す。

仮想ステージには俺だけが生き残り、俺は終章することができた。





「いやー勝った勝った」


「負けたぁ~」


「お疲れさん」


試合が終わり綾人と一緒に控室に戻る。控室には真也がいた。


「こっちきたの?」


「おう、荷物も持ってきた」


そういいながら控室の私物を片付ける。この後に優勝者、準優勝者の表彰とインタビューがあるからゆっくりしている暇はない。


「このタオルって綾人の?」


「そう、椅子に掛けといて」


「オッケー、忘れるなよ?」


と、急いで荷物をまとめる。

荷物の片づけが終わりちょうど一息つこうかと思っていたところ、大会の運営スタッフが部屋に入ってきた。


「失礼します。優勝者の表彰とインタビューがあるのでそろそろ移動してもらえると幸いです」


「わかりました。」


「荷物については私たちスタッフが運びますので…」


「わかりました。この荷物で全部なのでこれだけ運んでくれると助かります」


「承知しました。それでは失礼します」


スタッフが部屋を出た。

俺と綾人はすでに荷物をまとめているから後は移動するだけだ。


「それじゃあ、俺たちは表彰式に行くから。真也も着いていく?」


「そうするよ。舞台脇で見てる」


「オッケー。じゃあ行こうか」


というわけで控えの部屋を後にして仮想ステージに戻ってきた。

仮想ステージで表彰式が行われて俺と綾人はそれぞれトロフィーをもらえた。


「これ売ったらどのくらいになると思う?」


「非売品だから価格付かないだろ」


なんて雑談をしながら表彰式を終えてインタビューを市に移動する。

インタビューとかは子供の頃からやらされているし慣れいているし、問題はない。


「まず優勝おめでとうございます」


「ありがとうございます」


「今回の大会、自身で振り返ってみてどうでしたか?」


「そうですね。しっかりと自分の力を発揮できたので及第点といったところです」

「今回戦って特に印象に残っている人はいますか?」


「やっぱり綾人くんですかね。最後の一騎打ちも割とギリギリ勝てたという印象ですし。他にも普段からよく模擬戦をしている真也くんも強かったなという印象です」


「なるほど。今回は数多くのダンジョン配信者が参戦しましたがどうですか?」


「あぁ~、自分はダンジョン配信についてあまり詳しくないので何とも……」


「そうですか。初戦で戦ったダンジョン配信者の凛さんはどうでしたか?彼女もトップクラスの冒険者なんですよ」


「あれでトップクラスなんですか?」


「え?」


「あーいや、伸びしろがあるしこれからが楽しみだなと思ってます」


「な、なるほど。それではスタジオにまた送りたいと思います。○○さーん」






スタッフから荷物を受け取って会場を後にする。

先にインタビューを終えていた綾人と真也と合流して第一声


「お前やったな」


「てへぺろ」


翌日、普通に燃えた。

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