第34話 勇者くん

「勇者くんイケメンだねぇ、彼女とかやっぱいるの?」


「そんなことより俺はこいつの聖魔法が気になる」


「あっ勇者君じゃん。チャンネル登録しといたよ」


お坊ちゃまお嬢様に囲まれる勇者君(16)という最高におもろい光景を見ながら昼飯を食べる。


というのも勇者君もダンジョン配信をしているし何ならめっちゃ人気だからこのクラスでも知っている人が多いらしい。ちなみに俺はあんまり興味がないから見たことはない。


「それよりも湊くんと話したんだけど」


「ほいほーい、どした?」


やっとこさ質問攻めから開放されたのか俺と一対一で話す。

前に呼び出されたときは遊べなかったし今回は勇者君を使って遊ぼうと思う。


「不正した?」


「してないよ~」


「そっかー」


そして沈黙……

え?これで終わり?


なんか思ったよりもあっさり終わった。その場でいきなり配信をして全世界に俺への断罪を公開するとか、そういうのを予想していたから拍子抜けだ。


「これで終わり?」


「うん。不正してないって言われたら確かめようがないしね」


「それはそうなんだけどさ……」


単純に面白みがない。

暇を持て余していたところに折角面白そうな来客が来たと思ったら特に面白くもなく現在沈黙って最悪じゃねえか。


「というかなんで不正してるか聞きにきたん?」


「配信のネタにしようかなぁって」


「配信のネタが欲しいのか?」


「そうそう。

 俺って冒険者を助けたらバズって、それがきっかけに配信を始めたんだけどさ。ぶっちゃけ言うとダンジョン配信以外の雑談配信とかが下手ったらありゃしないのよ。」


「いきなり一般ピーポーが配信しようとしたら、そうなるわな」


「そんなわけで雑談配信とかは話のネタを日頃から必死に貯めて頑張ってるわけよ」


「なるほどねぇ~」


ふと思いついた。

俺は暇で死にかけている、勇者くんは配信のネタが欲しい。

これって模擬戦をすれば解決なのでは?


俺は普段は戦わない相手と対戦できるし勇者くんは俺と対戦したっていうネタができる。


「勇者くん、模擬戦をしよう」


「へ?」


「君は俺と模擬戦をしたって配信のネタになるし別にいいでしょ?」


「まぁ、確かに……」


てな訳で放課後に鍛錬場で集合という約束を取り付けた。





勇者くんが使う基礎属性は知らないから置いておくとして、彼が使う聖魔法はある程度理解している。


聖魔法——

神様に見染められた人が使えるようになるだか天使の生まれ変わりが使えるって具合に色々とオカルトチックな伝承がある特別な魔法だ。


能力は主に3つある。

一つ目は単純に身体能力を底上げするバフ。

一般的な無属性魔法の身体強化とはあまり変わらないが2つだけ違うところがある。

それは自身以外にもバフを与えられるという点だ。纏めると自身と任意の周りの人間を強化することができるというものだ。


もう一つは回復機能が着いているというものだ。これはお約束といった具合に聖魔法には身体の自己修復だったり、他人の傷を癒す能力が備わっているわけだ。


ぶっちゃけいうとこれだけでも強いのにさらにもう2つも能力があるんだから驚きだ。




二つ目は攻撃魔法。

普通の魔法の様に魔法を放って中長距離の戦闘で活用できる。頑張れば近距離での活用も可能だ。普通の魔法と違って魔法陣や詠唱を必要としないため魔法を放つ時のタイムラグがゼロに等しい。

だから近距離でも使えるっちゃ使えるって話しだ。



そして3つ目の能力は昇華。

カッコよく言っているけれど簡単に言えばモンスター特効。モンスターなどに対して本来与えれる以上のダメージを入れられるとのことだ。

モンスターが持っている魔力や魔法が放たれた後にでる魔力の残骸、通称”魔素”と呼ばれている物を分解だか何だかで消滅させられるらしい。


特に”魔素”は基本的に人体に有毒だからこの能力は魔素が蔓延している地域の浄化に役立っているらしい。



とまぁ、聖魔法の能力紹介を済ませた所で話を放課後の模擬戦に戻そうか。


現在俺は勇者くんに対して3戦3勝している。因みに今は4戦目を始めたところだ。


勇者くんと戦ってみて分かったことがある。それは1つ目の能力であるバフと自己修復機能のお陰でアホみたい硬いということだ。所謂タンク職というやつ。


「よくそれでダウンしないね」


「チッ」


模擬戦をしながら勇者くんの耐久性能の高さを久々と感じている。

というかよくよく考えて腕を切り落としても付け根から再生してくるって軽いホラーじゃね?


「再生にも魔力が使われるのかな?それならかなりの魔力が君に備わっていることになるけどッ」


そう言いながら勇者くんの鳩尾みぞおちにパンチを喰らわせる。


「再生能力に痛覚のオンオフは含まれてないないのかな?いや、それだとおかしい……」


初めて聖魔法をナマで見ているせいか気分が高揚している。高揚しつつも聖魔法の能力をできるだけ理解するために色んなことを試してみる。


「やっぱり腕の切断時は痛覚オフになってるね」


幸い模擬戦だから死なないし彼自身も耐久性が高い。いいサンドバッグだ。

そう思いながら勇者くんとの模擬戦を楽しんでいた。





—————————————————————

次話は勇者くん視点です。

勇者くんの本名を決めないとな……


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る