第9話 振替休日

翌日、今日は昨日のトーナメント戦のおかげで学校が休みだ。


今日はこの休みを思う存分に堪能しよう。そう思いながら二度寝をかまそうとしていた。


「あーだりぃのが来た」


自分の部屋の扉が突然開き、妹が入ってきた。




「ノックしろ」


「したし。

で、今日暇?」


してなかっただろうとは思いつつ、話を続ける。あぁ、買い物に付き合うのだけは嫌だ。


「……まあ」


「じゃあ買い物付き合ってよ。ちょっと服買いたいから」


「えー……まあいいけど……」


正直言ってめんどくさい。

だがここで断ってもどうせ押し切られて結局行くことになるので仕方がないが了承する。


「じゃ、10時ぐらいに玄関ね」


「はぁ…」


10時になり妹と一緒に出かけることになった。

正直言ってかなりだるい。





「お兄ちゃん、こっちとこっちどっちがいい?」


「なんで俺に聞くんだよ」


えー、わたくしは現在、服屋に連れてこられて買い物をする羽目にあっております。

こっちはだるい気分なのになぜ妹は元気なのか、というかそんなに元気なら一人で勝手に行けばよかっただろうに。


「だって私まだ小学生だし、ファッションとかわかんないし」


まあ確かにそれはそうだけれど、それでも俺を巻き込まないでくれ。

そんな思いを抱きつつ妹の服選びを手伝った。


そして1つ気になることがある。

なぜ妹の服を俺が買っているのかよくわからない。

ぐんぐんと財布からお金が減っていくのを見ながらため息をついた。





妹の服選びに付き合わされた後はお昼ご飯を食べに行くことになった。

正直言って俺の財布が心配だ。大丈夫だろうか。まあ最悪銀行から崩せばなんとかなることはないが......


「お兄ちゃん何食べる?」


「なんでもいい」


そう答えると妹は少し考えてから答えた。


「じゃあオムライス食べたーい」


「……はいよ」


「え、いいの?」


「別にいいよ」


妹が驚いている。さっきからやいやい言っていたが結局奢ったりする当たり俺も結構甘いなぁと思いつつオムライスを頼んだ。

結構高かった。



その後もなんやかんやあって結局、俺の財布はもうすでにすっからかんだ。まあ何とかなった。ギリギリ致命傷で済んだって話だ。

そう思いながら妹と帰路についていると突然声をかけられた。


「あのー、すみませんちょっといいですか」


「…」


俺が無視をしていると、代わりに妹が返事をした。というかしてしまった。


「はい?」


妹がそう答えると、カメラを持った男がそこにいた。


「少しインタビューをしてまして…」


「楓、逃げるぞ」


妹の手を引きすぐに逃げる。そのまま路地を抜けて何とか記者を巻いた。


「どうして逃げたの?」


妹は不思議そうに俺に聞いてきた。

俺はそんな妹に少し切れ気味答える。


「ありゃ週刊誌の記者だ」


「えっ?」


妹は驚いている。俺は続けた。


「な、なんでわかったの?」


「……勘だよ」


そういうと納得したようなしていないような顔で頷いた。

少し嫌な予感がするが……まあ大丈夫だろう。多分。





家に着く直前、家の前にはさっきの記者がいた。大方俺に取材をするために家に張り込んでいたのだろう。


「あー……さっきの人……」


「でしょうね」


俺は思わずため息を吐いた。


「お兄ちゃんどうする?」


「俺らがわざわざ玄関から行く必要もないし塀を登って行こう」


「えっ、ちょっと!」


そんな妹の言葉を無視して家の塀を登り、窓から家に帰った。





「あ、あのー……」


「…」


「取材させてほしいんですけど」


「…」


翌日、休み明けの学校にも奴らはいた。こうなってくるともう限界である。

登校中、下校中に限らずカメラを構えて近づいてくる記者にいら立ちを隠せなくなってきた。




「おー、苛立ってるね~」


「綾人か…」


「記者たちは正門に集まってる。

 裏口から帰ろう」


「助かる」


ここ数日はこんな生活だ。

こうなってくるとダンジョンに潜ることすらままならない。ダンジョンに着く前に記者に囲まれ質問攻めだ。


ひとまず、記者たちが落ち着くまでの間はダンジョンに潜るのはやめて訓練場で鍛えよう。



「とはいっても、いくら何でも記者多すぎ」


「大変そうだねぇ」



訓練場で軽めの模擬戦闘をしながら記者の愚痴をしゃべる。

ここは学校の敷地内だからいいものの学校の外に出ると記者の嵐だ。



「というかなんで今になって俺なんだろう」


「そりゃあ今の今までバカにしてた属性魔法の使えない名家の跡取りが名門校の新人戦で優勝したらそうなるよ」


「はぁ、ダリ~」


「そうカッカすんなよっ」



と同時に一気に距離を詰めてきた綾人が魔法杖を俺にぶっ刺す。



「久しぶりの勝ち星~」


「何その杖、オーダーメイド?」


「うん、作ってもらった」



トーナメント戦が終わっていきなりこれだ。早速俺に対抗するために魔法杖に槍を合わせて近接攻撃ができるようになっている。

こういう連中だから油断できない。

知識に貪欲であるこあらこそ昔からの名家同士の争いに生き残ることができ、さらに言えば現代でさえ試合で優位に立てている証拠だ。


だけど、こういう連中だから戦うのが楽しい。

かくいう俺も名家の跡取り、知識に貪欲だ。

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