第20話 スタンピード(亜竜戦)
亜竜が飛んできてさっきまでの戦勝ムードとは一変、辺りは全身が張り裂けそうな緊張感が漂っている。
息を吸って吐いて、迷わず懐に飛び込む。
懐に飛び込んだ俺に亜竜がブレスを吐く。当然辺りは燃え盛る。
ギリギリ反応できたお陰でシールドを張れた。
「こわぁ」
四方に燃え広がる炎を見ながらつぶやく。
自分の周り360度にシールドを張って対処しているが、当然亜竜がそれを見逃してくれるはずがない。
再び飛び上がった亜竜がシールドごと俺に突っ込んでくる。
すぐにシールドを解除して逃げる。辺りはまだ燃えているが多少の火傷はこの際仕方がない。
幸い綾人が水の魔法を使って俺の援護をしてくれているおかげで重症にはならなかった。その間に真也が亜竜のヘイトを買う。
亜竜と魔法の打ち合い。
一見拮抗しているように見えるが亜竜は俺たち3人の攻撃を警戒しながら真也と打ち合っている。
つまり誰か1人でも欠けたら一気に状況がまずくなる。
「俺はいいから綾人は真也を援護して」
「わかった。お前は?」
「隙を見つけて斬りこむ」
いったん綾人と俺は二手に分かれて綾人は真也の援護、俺は亜竜にちょっかいをかける。
2人の撃ち合いに気を取られているうちに俺が亜竜に攻撃を加える。
亜竜の弱点は主に3つだ。
1つ目は翼の付け根、2つ目は眼球の他顔面各位、3つ目は亜竜の重量バランスを調節しているしっぽだ。
まずはしっぽを狙う。
そのためにも2人には注意を引き付けてもらわないと…
「真也、あの魔法打てるか?」
「撃てるには撃てるがブレスで迎撃して不発になってしまう」
「それなら何か煙幕になる魔法はあるか?」
「ある」
「俺が合図したらそれを撃て」
「わかった」
真也が1歩下がって亜竜のヘイトが綾人に移る。
その間に真也が攻撃の準備をする。
「『バブル』+『サンド』、いつでもいけるぞ」
「わかった………………………………撃て」
と同時に真也が撃った魔法がブレスに当たり爆発する。
辺り一帯に砂や水蒸気がまき散らされて視界不良鵜になった。
これなら奇襲を仕掛けられる。亜竜は俺たちの姿がわからないが、俺たちはあのでっかい図体のおかげで影を視認できている。
すぐに背後から奇襲に入る。
と同時に亜竜が360度にブレスを吐き散らした。
「あっつ」
ととっさに自分の前方にシールドを張るがそれだけでは防ぎきれなかった。
だがここで止まってしまってはせっかくのチャンスが台無しになってしまう。熱いのを我慢してそのまま亜竜の尻尾を斬る。
けたたましい鳴き声とともに亜竜が暴れ始めた。その時に暴れた亜竜の羽が俺にたまたま当たって吹っ飛ばされた。
さっきのケガとは違う。ちゃんとヤバいと思えるケガ。
肋骨が折れたのだろうか。呼吸をするだけで胸部が痛む。
「湊がやられた」
「マジか。煙幕ももう晴れるぞ」
「もう一回煙幕を張って」
「了解」
と煙幕をもう一度撃つが今度は亜竜はブレスを撃たずに発動する前の魔法を食べた。
煙幕は直接的な殺傷能力がないからこの亜竜の判断は合理的だ。
「煙幕が効かない」
「くそっ、湊大丈夫か?」
「尻尾をやった。俺を気にせず攻撃を続けろ」
「ッ…わかった」
尻尾を失ったおがけで亜竜の飛行能力を潰せた…はずだ。
そう思っていた。
「ふざけんな。全然飛ぶじゃねえか」
飛びやがった。さっきよりも不安定だが、亜竜にはまだ飛行能力があった。
「ふざけんな。デマ情報書きあがってよ」
とゆっくり立ち上がる。普通に羽が当たった場所は痛いが我慢する。
だけどこのケガじゃおそらく近接戦闘はもう望めない。
「『魔法弾』」
すぐに左の羽めがけて魔法を撃つ。
現状、亜竜の注目先は綾人に向いている。こうやって横からちょっかいをかけるだけでもある程度の効果が見込まれる。
痛みのせいで脳が回らない。
魔法陣も不格好だし威力もお粗末だ。
「綾人、アレを撃つから時間稼ぎを頼む」
「撃てるのか?」
「それ以外方法ないだろ。湊は戦闘不能だし俺たちの魔力もあと少しだ。ここでどうにか現状打破しないとやばい」
「なるべく亜竜の意識を俺が持っていく。撃つタイミングは真也に任せる」
「わかった」
と同時に綾人と真也が2人に分かれる。
まず綾人が限界まで亜竜に近づいて攻撃を続ける。その間に真也が魔法の準備、俺も真也がさっきのスタンピードで売った魔法を撃つことはわかったから真也から意識をそらすために攻撃を続ける。
威力はお粗末だがないよりかはましだ。
亜竜の意識をできるだけ真也から遠ざける。
「『ファイア』+『ウィンド』」
と唱えて綾人が亜竜のブレスに真っ向から対抗する。
でもやっぱり綾人が若干押されている。
「援護する」
と綾人にブレスを吐き続けている亜竜の眼球に狙いを定めて魔法を撃つ。
「当たった」
「真也!!」
「今しかないでしょ」
眼球をやられて悶えている亜竜めがけて真也が用意していた魔法を撃つ。
魔法は亜竜の首元に炸裂して爆発する。
辺りに砂埃が舞い上がった。砂埃の先を注視しているとそこには首元がえぐれている亜竜の姿があった。
「勝てたか?」
「まだ死んでない!」
綾人の叫び声とともに亜流が立ち上がる。
俺も綾人も真也も魔法を撃てる余力はもうない。全員魔力切れだ。
「綾人避けろ!」
と同時に亜竜が綾人に突進する。首が損傷しているからか亜竜はブレスが吐けていない。
「なんか武器…」
と思いアイテムボックスを開くと、偶然捨てずにいた刀を短くするために折った刀身が出てきた。
「イチかバチか…」
と刀身を全力で投げる。
刀は再び立ち上がった亜竜の頭部を突き刺した。
「湊⁉」
「俺もやる!!」
と同時に亜竜を躱した綾人が槍を亜流の腹部に突き刺した。
遂に亜竜は倒れて塵となって消えた。
やったっと思った直後、亜竜が塵となって消えている姿を見ながら俺は意識を失った。
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