第15話 夏休み

夏休みになり、俺たちはというと連日のようにダンジョンに籠っていた。

毎朝8時ぐらいに起きて午前中は夏課題、昼飯を食ったらダンジョン前に集合してそのまま夜までダンジョン攻略。


「全身バキバキ」


「俺も」


夏休み前は放課後の3時間程度の攻略だったからか、こんなに疲れることはなかったけど夏休みに入ってからは6時間、長いときは8時間連戦している。

当然その分体が鍛えられていることを実感できる。


そして攻略できる時間が増えたことで攻略する階層が前よりもはるかに増えてきた。

昨日到達できた階層は63層、今日は65層を目指してダンジョンを潜る。


「夏休み入ってから格段に体力ついた気がする」


「俺も」


「そりゃ6時間も戦ってたらね」


「特に60層辺りから格段に疲労感がやばい」


「わかる。ちょっと前に一回刀すっぽ抜けそうになったもん」


「あの時のお前めっちゃ焦ってたよな」


「戦闘中なんだからなるに決まってるだろ。お前だってちょっと前に魔力切れ起こしかけて焦ってたじゃん」


「あー何も聞こえないー」


目の前のリザードマンの攻撃を躱しながら売り言葉に買い言葉といった具合に雑談をする。リザードマンの槍の大振りを逃さずにそのまま一刀両断、すぐに次の階層に移動する。


「次が64層?」


「そうそう、未探索だから気を抜かないようにな」


昨日までの到達点を突破して新しい探索エリアに足を踏み込む。

だんだんとモンスターの強さが上がっているの感じながら襲ってくる敵を冷静に対処する。


「やっぱ20センチだときつい」


「間合いが?」


「もう10センチ欲しいな」


「竹製ものさし振り回して遊んでろ」


「懐かしー、まだ家にあるかな」


もう少し短刀が長ければいいなという状況がちらほら出てきた。特にリザードマンも標準装備の槍にリーチ差で負けているという状況で戦うのがきつい。


「やっぱ槍強いなぁ」


「やっぱ魔法杖にしたほうがいいって、杖の先端に刃物つけたら最強じゃん」


「指輪型を選んだツケがここで回ってくるとは…」


「あぁ、だから湊は指輪型なんだ」


「湊ってなんで指輪型にしたの?」


「昔見た映画に影響された」


「「あぁ~」」



だんだんと敵のレベルが上がっているがまだまだ無駄口をたたけるぐらいには余裕だ。そのまま64層も攻略して本日目標の65層の攻略を開始する。





「それじゃあ俺はこっから別だから」


「おう、また明日」


「明日も遅刻すんなよ」


ダンジョン攻略を終えて帰路に着く。

今日は65層を飛んで67層まで攻略できた。ちなみにここのダンジョンの最高到達点は214層、最下層まで目指しているわけではないがせめて214の半分、107層にまで到達出来たらいいなんて考えながら家で今日使った得物のメンテナンスを行う。


模擬戦からダンジョン攻略を主軸にしてから基礎体力が上昇してきているのが実感できるが、逆に模擬戦をしていた時よりも一撃の威力を上げるために得物の振り方が大振りになってきているような気がする。


ちょっと前まではもう少しコンパクトな戦い方をしてたよな。なんて考えつつ今使っている刀を見る。


「この大きさで大振りってやっぱダメなのかな」


ダンジョン攻略中は気づいていなかったがよくよく考えたら短刀を大振りって結構非効率かもしれない。とはいっても大振りにしないとダメージが通らない。


「非効率だけどこっちのほうがいいのかなぁ」


長い刀は個人的に使いづらい。

使いにくい刀を使って苦戦するぐらいなら使いやすい刀を使って苦戦したほうがいい。そっちのほうが安全だと思う。


「実際はどうなんだろ」


アイテムボックスに入れてあるこの前買ってきた刀を出現させて試しに構えてみる。


「うーん、やっぱりやりずらい」


自分の体がまだ中学生で出来上がっていないからなのか、だいだい70センチもある刀を振ってもうまく扱えない。

しょうがないからいったん亜空間に放り投げる。


「持ってる分にはいいか」


ついでにメンテナンスを完了させた短刀を鞘にしまってアイテムボックスにしまう。

近接のことを教えてくれる人がいないためこういうのもすべて自分で調べたり考察したりしなければいけない。この際、俺自身がマニュアルを作るぐらいの意気込みで頑張っているが結構壁にぶち当たっている。


俺にあった武器はほんとにこれなのか?だったり、戦い方はあっているのか?だったりと本当に基礎的な部分ですら自分自身で理解していないため、壁に当たっていると思っても実は正解でしたみたいな場合も多分あるんだと思う。



こんなことを考えてもしょうがない。明日もしっかりと攻略してしっかり模索していきたいから風呂に入ったらすぐに寝よう。


そう思いながら、片づけを終えて倉庫を後にする。

手や服に刀油がついてしまっているため、そのまま直行で風呂場に向かう。



風呂に入り、そのまますぐにベッドにダイブ。

明日は70層目指して頑張ろう。


そんな風に思いながら眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る