第16話 異変

いつもとは何か違う、ここ最近はずっとよくわからない違和感を感じていた。

モンスターの数が少ないって...













「今日の目標は?」


「75層」


「でかく出たね」


夏休みに入ってから大して変わらない日常を過ごしていた。

今日もいつも通り集まってダンジョンに集合する。夏休みに入ってからダンジョンに潜る人が増えているからか、最近は人が多い。


「それじゃあレッツゴー」


と言ってダンジョンに入る。

夏休みに入ってダンジョンに潜る人、特に初心者が増えているような気がする。そういう時は1層から10層ぐらいの比較的上の階層であまり戦わないようにする。


こればかりはマナーの問題だ。

初心者の成長を妨げるようなことはご法度だ。基本的にダンジョンの中はお互いに助け合うことでなり合っている。

そんなマナーを守りながら下層へ下層へと降りていく。


「20層辺りからモンスター狩ってもいいかな?」


「いいと思う」


「じゃあもうちょっと我慢しないと」


迫りくるモンスターを回避しながら降りていくと段々辺りから人が減っていく。


「そろそろ20層だよ」


「じゃあ杖持っとくか」


とそれぞれ杖やら刀やらをアイテムボックスから出現させてモンスターを狩り始める。


その後はいつもの通り全力へ下へ下へと降りていく。

今日も70層ぐらいまで行ってその後は門限に迫られながら急いで家に帰る。そうなると思っていた。





「なんか今日モンスター少なくない?」


「下に強い冒険者がいるのかも」


「ここら辺に強い冒険者いたっけ?」


モンスターの数が少ないおかげか75層には余裕で到達。さらに言えば今から80層ぐらいまで攻略しても門限には間に合っちゃうぐらいだ。


「どうする?まだ攻略する?」


「時間いっぱいまで攻略しようよ」


「そうだな、それじゃあ次に行こう」


そういい76層を攻略し始める。

このくらいの下層になってくると戦闘中の雑談ができないぐらいにはモンスターも強くなっていて、階層ボスに関しては戦闘後に休憩を挟まないといけないレベルだ。

そんな状況でもモンスターが少ないからか比較的楽に攻略で来た。


「それじゃあボス戦やるか」


「魔力大丈夫?」


「舐めんなって」


「ははっ、悪い」


そう言い階層ボスと戦闘が始まる。

魔法を飛ばしたかと思えば距離を詰めてもている槍を攻撃してくるリザードマンを躱して後ろの魔法組2人が攻撃しやすいように誘導する。


誘導して今度は魔法に意識を割かれた瞬間、懐に飛び込んで刀を振る。が、やっぱり切れない。

リザードマンの表面の鱗が固すぎて刃が通らないのだ。


それなら鱗が生えていない部分を狙えばいい。具体的には目、各関節の内側だ。

インファイトで敵を削ごうとする。幸い左腕の関節に当てることができた。


片腕から血が垂れながらいまだに近接戦闘戦、こういう時に一気に距離を開けて魔法で仕留めてもらう。


二方向からの魔法攻撃にリザードマンはある程度耐えていたが、だんだん対処が追いつかないくなっていき遂に倒れた。


「ガチで疲れる」


「それな。リザードマン強すぎ」


「15分ぐらい休憩しよう」


「「賛成」」


ってなわけでボス部屋の端っこで休息をとる。

リザードマンが硬いせいで思ったよりも苦戦してしまう。

そんな状態だから今の俺のポジションは前衛&サポート役になっている。

出来ればリザードマンにしっかりと刃が通ってダメージを与えたいが、現状できそうにない。


アイテムボックスからペットボトルを取り出して給水しながらそんなことを考えている。

だけれどリザードマンに攻撃は通らないもののこの3人のなかで唯一リザードマンの動きについていける。


平たく言えば俺がこの中で一番速い。

欠点もあればちゃんとアドバンテージもある。今の俺はゲームで言うと回避性能は高いけど決定打には欠けるといった具合が正しい評価だろう。




「そろそろ行く?」


「まだ10分しかたってないって」


「俺はもう大丈夫だし」


「回復は早っ」


休憩といっても俺は息を整えたらほぼ回復。それに対して魔法組は疲れをとれるまで結構時間がかかる。特に脳の疲れだ。


攻撃魔法、身体強化、場合によってはシールドの3種類を同時展開しながら味方に当たらないように戦場を俯瞰してみないといけない。魔法使いの仕事はかなり多いのである。




「チョコいる?」


「食べる」


「俺も欲しい」


なんて会話をしていると突然、地面が揺れた。


「…今の何?」


「地震?」


「ダンジョンには地震なんてものは存在しないだろ」


嫌な予感がする。そういえばちょっと前からモンスターの数が少なかったような気がした。今日もモンスターの数が少なかった。


有名な冒険者が来たのなら少なからず上で話題になっているはずだ。だけれどそんな話題はなかったしネットを見てもここには有名な冒険者が来たという情報はない。


となるとこの揺れの正体は1つ。


「もしこれでダンジョンの壁に魔力が走ったら確定だな」


「…今流れたね」





『魔力が一瞬壁に走る、ダンジョン内の突発的な揺れ、モンスターの数が少ない。』


間違いない。スタンピードだ



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