第22話 鍛練
桜杯に向けて鍛練を続けている。
中学1年の最初の頃のように放課後は鍛練場に籠りまくって模擬戦を続ける。
高校に入ってから寮に入ったお陰で夜遅くまで模擬戦ができるようになった。
こういう所が中学とは違う点だ。流石は国内最高峰の高校。
「それじゃあ俺はこの部屋だから」
「おう、お疲れ~」
学校から徒歩5分のアパートに帰宅して模擬戦をしていた友人たちを分かれる。
寮といってもその実態は学校が所有しているマンションやアパートを格安で借りているだけなのでハリーポッターみたいな寮ではない。どっちかっていうと一人暮らしのほうが正しいような気がする。
「疲れた~」
と独り言を言いながら制服を脱いで風呂でシャワーを浴びる。これが一人暮らしを始めてからのルーティーンになっている。シャワーを浴びた後はジャージに着替えて適当に夕飯を作って食べる。
桜杯は高校生限定の大会で、1年に4回ある公式大会の内の1つだ。
4月の下旬に開かれてトーナメント形式で争う。桜杯はまっさらなフィールドで戦うようになっている。つまり『単純な火力』がモノを言う試合になっている。
つまり、近接を武器にしている俺は結構不利な試合だ。
まぁ、だから何だって話なんだけどね。多少の不利で負けるような俺じゃない。
それを見せつけるためにもこの試合は勝つんだ。
「少し焦げた…」
焦げた夕飯を食べながらネットで今までの桜杯の試合ログを確認する。
桜杯のログを見るとやはりこの大会は魔法の威力がモノを言う大会だ。
相変わらず魔法の練習はやっている。
中学生の頃は7つの同時展開が限界だった魔法の展開も今は14個も同時に展開できるようになっている。
でもまだ足りない。たとえ14個の同時展開をしたとしても試合本番ではシールドで塞がれるのが目に見えている。
となるとやはり注目するべきはシールドだろう。シールドで相手の魔法を防ぎながら間合いを詰める。そうすれば自分の得意な近接攻撃で相手と戦える。
あいにくシールドの精度は高い方だから問題ない。あのスタンピードでシールドの有用性に気づいてから、シールドのについても色々頑張っていた。
「……やっぱ負ける要素ないよね」
ログを見ながら呟く。
試合に負ける要素はない。でもまだ不安材料が残る。
ひとまずは桜杯のための鍛錬を続けることにしよう。
◆
「シールド硬ったいな」
「まじ?鍛えといてよかった」
模擬戦をしながら桜杯に向けて調整を進めていく。
自分の今の戦闘スタイルは日本刀+シールド。とはいってもシールドはあくまで保険だ。基本的には身体強化のごり押しで懐まで入って刀で一閃する。
これが俺の戦い方。3年前よりもちょっと変わった。
昔は30センチほどの刀だったが今は50センチ弱の刀に変わった。
そして中学生から身長ともに成長しているから昔はうまく扱えないなかった大型の武器も扱えるようになった。
今、俺がアイテムボックスに入っているのは『刀、予備の刀、小型のハンマ―、大型のハンマー、槍、大鎌』の計五種類。
その5種類は”平均的”に使えるようにはなった。
基本的には今まで通りの刀で相手を追い詰め、武器が破損又は状況によって他の武器を使うのが現状だ。例えば重量系の相手には大型のハンマーを使ったりしている。
「はぁ~、心配になってきた」
「なんで?おまえ強いじゃん」
「湊に勝てるかどうかが心配なんだよ。お前最強じゃん」
「あぁ~、運がよかったら勝てるんじゃね?」
「そんな無茶な」
大会前、愚痴りながら帰り道を歩く。
今はただの友達だが大会当日はライバルになる。
「本番は容赦しないから」
「こっちのセリフじゃボケ」
友達との帰り道、笑いながら帰る。
こんな感じで俺たちは桜杯に向けて調整を続けていった。
◆
4月の下旬、桜杯当日。
「うし」
軽く準備運動をしてから会場に向かう。
会場は東京にあるドーム型の建物だ。東京ドームみたいな形をした建物が会場になっている。
このドームは魔法で作られた特殊な素材で作られていてどんな衝撃にも耐えることができるらしい。
そんな頑丈な建物が大会の舞台だ。
「おっ、もう来たのか」
「思ったよりも早く着いちゃってさ。そういう綾人もめっちゃ早いじゃん」
「取材があったからね~」
「はぁ~、人気者は大変だ。それで対戦表は?」
「出てたよ。俺たち決勝まで当たらないらしい」
「はぁ?つまんな」
「そんなこと言って…足元抄われて決勝に来ませんでしたとかやめろよ」
「へいへい。それじゃあ着替えるからまた後で」
「おう」
いったん綾人と別れて着替え室に行く。この日のために戦闘用の服を新調した。
とはいっても俺の戦闘服はそんなキラキラしたものじゃない。
普通のズボンに上着、そしてパーカーを羽織って着替え完了だ。
「戦闘服地味じゃね?」
「そう?そういうお前も制服じゃん」
「戦闘用に換装してるんで問題ないでーす」
「わざわざ制服にする意味が分からん」
「お互い様やろ。それよりも配信者の戦闘服見た?」
「まだ見てない」
「見たら驚くよ。めっちゃ装飾しまくってるから」
「まじかよ。俺そういう戦闘服あんま好きじゃないんだよね」
試合が始まるまで控室でだらだらと時間を潰す。
試合が始まるまで残り30分を切っていた。
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