第35話 憲法発布
1888年5月7日
文部省が加藤弘之・箕作麟祥・池田謙斎・菊池大麓・古市公威ら25名に博士号を授与(日本初の博士号)
エドゥアール・ラロ歌劇「イスの王様」初演(オペラ=コミック座)
5月13日 - ブラジルで摂政イザベル皇女が奴隷制廃止法案(アウレア法)に署名 (米大陸の奴隷制終焉)
6月4日 - 東京天文台設置(麻布)(東京大学天象台・海軍観象台・内務省地理局が統合)
6月5日 - ラプラタ川流域で中地震(Rio de la Plata Earthquake 1888)
6月15日 - 独帝フリードリヒ3世死去,ヴィルヘルム2世即位,年に二回皇帝が代わったことから「三皇帝年」と言われる
6月23日 - フレデリック・ダグラスが黒人として初めて米国大統領候補に指名される
7月4日 - 初の公式ロデオが米国アリゾナ州プレスコットで開催
7月10日 - 東京朝日新聞創刊(めさまし新聞改題)
7月15日 - 磐梯山が千年ぶりに噴火し山体崩壊(発生した泥流などにより461名が犠牲)
8月1日 - 海軍兵学校が江田島へ移転
8月7日 - テオフィラス・カネル(Theophilus Van Kannel)が回転ドアの米国特許を取得
8月31日 - イギリスで「切り裂きジャック」による最初の殺人事件が発生。
9月3日 - イギリスのヴィクトリア女王が東アフリカ会社の勅許をウィリアム・マッキノン(Sir William Mackinnon)に与える
9月4日 - ジョージ・イーストマンがロールフィルム・カメラの特許を取得し、Kodakの商標を登録する。
9月11日 - 高等師範学校附属学校に尋常中学科(現・筑波大学附属中学校・高等学校)が設置される
9月30日 - 切り裂きジャックによる殺人が目撃される
10月1日
東京火災保険(後の安田火災)開業
小田原馬車鉄道(後の箱根登山鉄道)開業
米ナショナルジオグラフィック創刊
10月9日 - ワシントン記念塔一般開放
10月14日
皇城二重橋架替竣工
ルイ・ル・プランスが世界初の映画『ラウンドヘイの庭の場面』を撮影
10月27日 - 明治宮殿落成し皇城を宮城と改称
10月28日 - 伊予鉄道松山 - 三津間開業(四国初の鉄道)
10月29日 - スエズ運河の自由航行に関する条約締結
10月30日 - ジョン・ラウド(John J. Loud)がボールペンの米国特許を取得
10月31日 - ジョン・ボイド・ダンロップが空気入タイヤの英国特許を取得(後に取消)
11月2日 - 咸宜帝が仏官憲に引渡される
11月6日 - 米国大統領選挙でベンジャミン・ハリソンが勝利
11月14日 - パスツール研究所開所(設立1887年)
11月17日 - チャイコフスキー交響曲第5番初演(サンクトペテルブルク)(露暦11月6日)
11月20日 - 大阪毎日新聞創刊(大阪日報改題)
11月26日 - 海軍大学校開校(築地)
11月30日 - 日墨修好通商条約締結
12月3日 - 香川県が愛媛県より独立
12月11日 - 東京美術学校が上野へ移転
12月23日 - フィンセント・ファン・ゴッホが左耳たぶを切取る
12月28日 - 東京府高等女学校(後の東京府立第一高等女学校)設置
1月8日 - 米国でハーマン・ホレリスがタビュレーティングマシンの特許を取得。
1月10日 - 象牙海岸がフランスの保護国となる。
1月16日 - オーストラリアで最高気温記録(摂氏53度、クイーンズランド州クロンカリー)。
1月22日 - 徴兵令改正(戸主の徴兵猶予を廃止)
1月23日 - 三池炭鉱が三井組に払下げられる。
1月30日 - オーストリア=ハンガリー帝国でルドルフ皇太子が謎の情死(マイヤーリンク事件)。
### 明治22年、憲法発布の日
1889年2月11日。東京は冬の冷たい空気に包まれ、天皇の御前で日本国憲法が発布される日がやってきた。全国から集まった大臣や高官、各国の外交官が厳かに並び、会場は歴史的な瞬間を迎える緊張感に包まれていた。
伊藤博文は、着物姿のまま、静かに自分の席に座っていた。彼の胸の中では、数年にわたる苦闘がようやく実を結ぶという感慨が湧き上がっていた。憲法草案の策定に関わった仲間たちの顔が次々と脳裏に浮かび、彼はその努力を心の中で称えた。
井上毅が彼にそっと近づき、声をかける。「伊藤さん、これでようやく我々の夢が実現しました。日本は新たな時代に突入します。」
伊藤は静かに頷きながら、「そうだな、井上。ここまで来るのは容易ではなかった。しかし、これからが本当の勝負だ。憲法が施行された後も、我々は国を導いていかねばならない。」と返す。
その時、フランシス・ピゴットもまた一歩前に出て、伊藤に声をかけた。「おめでとうございます、伊藤さん。これは歴史に残る偉業です。日本は西洋諸国に匹敵する国となるでしょう。」
伊藤は微笑み、ピゴットに感謝の意を表した。「君のおかげで、ここまで辿り着くことができた。日本の憲法には、君の知恵が多く詰まっている。我々は君に大いに感謝しているよ。」
ピゴットは謙虚に頭を下げた。「私にできることは微力でしたが、こうして歴史の一端に関われたことは誇りです。これから日本がどのように発展していくか、楽しみにしています。」
### 憲法発布の式典
式典が進行する中、天皇が憲法の発布を宣言すると、場内は静寂の中に重厚な雰囲気が漂った。歴史的瞬間が訪れ、日本の立憲体制が正式に始まることを告げた。伊藤は、天皇の宣言を聞きながら、その背負ってきた重責を噛みしめた。
周囲から拍手が湧き上がり、場内は熱気に包まれる。だが伊藤の心には、これからの困難が見えていた。憲法は制定されたものの、これが全ての終わりではない。むしろ、ここからが本当のスタートだった。
彼の胸中には、枢密院議長として、また国政の重要な柱として、日本を導いていくという使命感が再び燃え上がっていた。
### 数日後、枢密院での会議
式典から数日が経ち、枢密院の初会議が開催された。伊藤は、議長席に座り、新たな立場での最初の仕事に取り掛かっていた。集まった重鎮たちを見回し、彼は深く一礼してから話を始めた。
「皆さん、これから我々は、国の未来を左右する重大な責任を担うこととなります。憲法は発布されましたが、その運用を間違えれば、国の安定は崩れ去るでしょう。今日からの我々の仕事が、その礎となるのです。」
会議室に集まった者たちは、伊藤の言葉に静かに耳を傾けていた。彼らの目には、重圧とともに未来への期待が宿っていた。
井上毅が手を挙げ、発言を求めた。「伊藤さん、我々はその責任を果たすために、これからどのような改革を進めるべきでしょうか?」
伊藤は少し考え込んだ後、答えた。「まずは、地方の行政制度の整備が必要だ。新しい憲法に基づく地方自治の体制を確立し、国全体での均衡を保たなければならない。それが、我々の最初の仕事となるだろう。」
ピゴットもまた議論に加わった。「地方自治は、英国でも同じ課題を抱えています。日本が中央集権と地方分権のバランスを取ることができれば、国家全体が安定するでしょう。」
伊藤はピゴットの言葉に頷き、会議はさらに白熱していった。新たな時代に向けた挑戦が、ここから始まるのだという強い思いが、彼らの中に渦巻いていた。
### 最後の独白
その夜、伊藤は枢密院の会議が終わり、帰宅する途中、夜空を見上げた。星が瞬いている空の下で、彼は静かに立ち止まり、ふと昔を思い返した。
「この国をどこまで導いていけるだろうか…」
彼は小さく呟きながらも、再び歩を進めた。その背中には、これからの日本の未来を切り開く強い決意が宿っていた。どんな困難が待ち受けていようとも、彼は再び立ち上がり、未来を見据えて前進していく覚悟だった。
そして、彼のその歩みは、日本という国の礎を築くために、歴史に刻まれていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます