第10話 異国の風と新たな覚悟

 文久3年(1863年)には井上馨の薦めで海外渡航を決意し、5月12日に井上馨・遠藤謹助・山尾庸三・野村弥吉(のちの井上勝)らとともに長州五傑の一人としてイギリスに渡航する。伊藤の荷物は文久2年に発行された間違いだらけの『英和対訳袖珍辞書』1冊と寝巻きだけであったという。しかも途中に寄港した清の上海で別の船に乗せられた際、水兵同然の粗末な扱いをされ苦難の海上生活を強いられた。


 9月23日のロンドン到着後、ヒュー・マセソン (企業家)の世話を受け化学者アレキサンダー・ウィリアムソンの邸に滞在し、英語や礼儀作法の指導を受ける。ロンドンでは英語を学ぶとともに博物館・美術館に通い、海軍施設、工場などを見学して見聞を広めた。留学中にイギリスと日本との、あまりにも圧倒的な国力の差を目の当たりにして開国論に転じる。


 元治元年(1864年)3月、米英仏蘭4国連合艦隊による長州藩攻撃が近いことを知ると、井上馨とともに急ぎ帰国した。


**シーン1:英国への旅立ち**


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**背景:** 1863年、長州藩内での尊王攘夷運動が激しさを増している。幕府との対立は深まり、伊藤博文は英国留学の機会を掴み、異国への旅路につく。品川沖から黒船に乗り込み、波を越えて英国を目指す彼の姿が描かれる。


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**登場人物:**

- **伊藤博文**

- **山尾庸三**

- **船員たち**


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**ナレーション:**

「尊王攘夷の志士として過激な行動を繰り返してきた伊藤博文。しかし彼は、外国との対話が日本の未来に必要不可欠であることを悟り、ついに英国留学を決意する。彼の旅立ちは、長州藩の激しい動乱の中で、異国の知識を日本に持ち帰るための第一歩だった」


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**山尾庸三:**

(船に乗り込む伊藤に手を振りながら)「伊藤!お前が帰ってくる頃には、この国はどうなっているかわからないが、頼んだぞ。お前だけが俺たちの未来を握っているんだ」


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**伊藤博文:**

(静かにうなずき)「わかっている。僕はこの国のために、必ず大きなものを持ち帰るよ。異国の知識と技術で、新しい時代を作り出すんだ」


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**ナレーション:**

「波の音が彼の決意を強くしていく。異国の地で彼が何を学び、そしてどのようにそれを日本に生かすのか。その運命の旅が今、始まった」


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### **シーン2:英国の街並み**


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**背景:** ロンドンの街並み。馬車が行き交い、異国の雰囲気が漂う。伊藤博文は初めて目にする西洋の建築や人々の生活に感嘆しながらも、冷静にそれを観察している。


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**伊藤博文:**

(驚きながらも、自らに言い聞かせるように)「これが西洋の力か…。日本とは全く違う世界だ。しかし、ここから学べるものは多い」


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**ナレーション:**

「伊藤博文にとって、異国の地は全てが新鮮でありながら、同時に日本との大きな隔たりを痛感させる場所でもあった。だが彼は、日本の未来のためにこの隔たりを埋めようと、必死に学ぶことを決意する」


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**シーン3:英国での学び**


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**背景:** ロンドン大学の教室。教授が西洋の政治制度や技術について講義している。伊藤は真剣な表情でノートを取り、その内容を頭に刻みつけている。


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**教授:**

「民主主義は市民が自らの未来を選ぶ権利を持つ制度だ。これによって、我々は国を発展させることができる」


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**伊藤博文:**

(ノートを取りながら、自らに問いかける)「日本にも、このような制度を導入できるだろうか…。今の幕府のやり方では、国は進化しない。だが、この考え方が日本に受け入れられるかどうか…」


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**ナレーション:**

「西洋の政治制度や技術を学びながら、伊藤博文は自らの志を深めていった。日本の未来に必要なものは何か。その答えを求めて、彼は日々の学びに没頭していった」


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### **シーン4:ロンドンでの試練**


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**背景:** 英国の社交場。上流階級の人々が集まるパーティーに、伊藤博文は招待される。異国の文化に戸惑いながらも、彼は西洋の人々との交流を試みる。


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**上流階級の紳士:**

「おや、日本からの留学生か。君は我々の技術や制度を学びに来たそうだが、日本はまだまだ遅れているようだな」


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**伊藤博文:**

(冷静に、だが毅然と)「確かに日本はまだ西洋に追いついていない部分も多い。しかし、我々はその遅れを取り戻すために学びに来ています。いつか、日本も西洋と対等な国になるでしょう」


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**ナレーション:**

「西洋の文化や価値観に触れながら、伊藤博文は時に異国の人々からの偏見に晒されることもあった。しかし、彼の心は折れることはなく、逆にその試練が彼の覚悟をさらに強固なものにしていった」


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### **シーン5:決意の帰国**


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**背景:** 1864年、日本に帰国する船上。伊藤博文は異国で学んだ多くの知識と経験を胸に、日本の未来を見据えている。


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**ナレーション:**

「英国での学びを終えた伊藤博文は、新しい覚悟と共に日本へ帰国する。彼が持ち帰る知識と技術が、これからの日本にどのような影響を与えるのか。伊藤の新たな旅が今、始まろうとしていた」


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**伊藤博文:**

(波を見つめながら)「僕が学んだことを、この国に生かしてみせる。日本の未来を切り開くために、僕は何も恐れず進んでいく」


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**ナレーション:**

「彼の胸には、西洋の風と共に新たな決意が宿っていた。これからの時代を担う伊藤博文の姿は、もう誰にも止められない」


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### **エンディングナレーション:**

「異国の地で得た経験を胸に、日本の未来を変えるために戻ってきた伊藤博文。彼がどのように日本の歴史に名を刻んでいくのか、その運命の行方は、次回もまた見逃せない」


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### **次回予告:**

「次回、第11話では、伊藤博文が帰国後、長州藩で再び志士たちと共に活動を開始する姿が描かれます。幕末の動乱の中で、彼が新たな時代を切り開く瞬間が迫ります」

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